セリーナの涙、シャラポワのファイト 大坂なおみが胸に刻む女王たちの姿
大声援に後押しされた初V 次大会での対戦相手は――
表彰式で笑顔の大坂。次のマイアミ・オープン1回戦では、セリーナと対戦する 【写真:Shutterstock/アフロ】
「とても緊張していた」心の内を表には見せず、冷静かつ我慢強い試合運びで相手のミスを誘った大坂は、試合が進むにつれ本能を解き放つように、サービスエースやウイナーも決めていく。マッチポイントでバックのボレーを放った時、大坂よりも先に新女王の誕生を確信したのは、1万6千人の観客たち。6−3、6−2での勝利を告げる主審の声を聞き、我に返ったかのような大坂は、小さくガッツポーズを握りしめ、ファミリーボックスへと笑顔を向ける。かつて、あこがれの人がつらい涙を流した地で、大坂は飛び交う紙テープのなか、優勝トロフィーを抱きキャリア最高の瞬間を迎えていた。
毎週のように、世界のどこかで大会を戦うテニス選手には、優勝してもその余韻に浸る時間はなく、新たな町へと旅立たなければならない。大坂も優勝したわずか数時間後には、プライベートジェットに乗り込み、次の戦地であるマイアミへと向かった。
その飛行機が、離陸するかしないかの頃に、マイアミ・オープンのドローが確定した。
ドロー表に記された大坂の1回戦の対戦相手――それは、初めてコート上で向き合うことになる、セリーナ・ウィリアムズだった。