セリーナの涙、シャラポワのファイト 大坂なおみが胸に刻む女王たちの姿

内田暁

大声援に後押しされた初V 次大会での対戦相手は――

表彰式で笑顔の大坂。次のマイアミ・オープン1回戦では、セリーナと対戦する 【写真:Shutterstock/アフロ】

 準々決勝で世界5位のカロリナ・プリスコバ(チェコ)を、そして準決勝では世界1位のシモナ・ハレプ(ルーマニア)をも快勝で退けた大坂は、勝ち上がるたびにファンを獲得しながら、決勝のステージへと駆け上がる。そこはかつてセリーナが、詰めかけた大観衆から冷たい視線と、ブーイングを浴びせ掛けられた場所。だが、同期のダリア・カサトキナ(ロシア)と戦う大坂に向けられたのは、未来の女王を見守るかのような温かい視線と、熱を帯びた大声援だ。

「とても緊張していた」心の内を表には見せず、冷静かつ我慢強い試合運びで相手のミスを誘った大坂は、試合が進むにつれ本能を解き放つように、サービスエースやウイナーも決めていく。マッチポイントでバックのボレーを放った時、大坂よりも先に新女王の誕生を確信したのは、1万6千人の観客たち。6−3、6−2での勝利を告げる主審の声を聞き、我に返ったかのような大坂は、小さくガッツポーズを握りしめ、ファミリーボックスへと笑顔を向ける。かつて、あこがれの人がつらい涙を流した地で、大坂は飛び交う紙テープのなか、優勝トロフィーを抱きキャリア最高の瞬間を迎えていた。

 毎週のように、世界のどこかで大会を戦うテニス選手には、優勝してもその余韻に浸る時間はなく、新たな町へと旅立たなければならない。大坂も優勝したわずか数時間後には、プライベートジェットに乗り込み、次の戦地であるマイアミへと向かった。

 その飛行機が、離陸するかしないかの頃に、マイアミ・オープンのドローが確定した。

 ドロー表に記された大坂の1回戦の対戦相手――それは、初めてコート上で向き合うことになる、セリーナ・ウィリアムズだった。

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著者プロフィール

テニス雑誌『スマッシュ』などのメディアに執筆するフリーライター。2006年頃からグランドスラム等の主要大会の取材を始め、08年デルレイビーチ国際選手権での錦織圭ツアー初優勝にも立ち合う。近著に、錦織圭の幼少期からの足跡を綴ったノンフィクション『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)や、アスリートの肉体及び精神の動きを神経科学(脳科学)の知見から解説する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。京都在住。

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