“チャラい”では世界で残れない――東京五輪へ、模索続くサーフィン界の今

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サーフィンが東京五輪へ本格始動

東京五輪で新採用されるサーフィン。本番まで2年半となった現状に迫る 【スポーツナビ】

 この冬を沸かせた平昌五輪の熱狂が冷めやらぬなか、マリンスポーツの代表格、サーフィンが東京五輪に向けて動き始めた。3月10日、11日に行われた日本サーフィン連盟(NSA)による国内強化合宿。会場となった千葉県・鴨川市の東条海岸には、海外で活躍する大原洋人や川合美乃里ら含めた強化指定選手57名が集結した。取材に訪れた11日午前は、緊張した雰囲気の中で実戦トレーニングを、午後にはアンチドーピング講座などの座学でアスリートとしての基礎知識を学んだ。

 東京五輪まであと2年半、されど2年半。選手や関係者は、2020年に向けて急ピッチで準備を進めながら、未来のサーフィンの在り方を模索し続けている。

サーフィンは「見に来てもらうのが一番」とNSAの酒井厚志理事長。東京五輪へ急ピッチで準備を進めている 【スポーツナビ】

 話を進める前に、まず基礎知識を簡単に押さえておきたい。東京五輪で新採用されたサーフィン。複数の種目があるが、今回採用されたのは2メートル弱のボードで争うショートボードだ。会場には、“サーフィンの町”千葉県・一宮町が選ばれた。

 試合では、数名で構成される「ヒート」ごとに演技する。制限時間内に行ったライディングで獲得したのポイント(10点満点)のうち、高い2つの合計点が得点となる。ジャッジはマニューバ(ライディング中の動き)の難易度、革新性、組み合わせなどの項目を基準に採点する。技ごとの基礎点は設定されていない。NSAの酒井厚志理事長によれば、一本一本波の状態が異なるため、同じ演技・技でも価値が変わるからだという。機械的に評価できる要素が少なく、公平な採点システムを構築するのが難しい。一般の人には分かりづらく感じ部分ではあるが、自然を相手にするスポーツならではの奥深さでもあるだろう。

サーフィン界が一致団結 整いつつある体制

 16年8月に追加競技に決まって以来、NSAは加速度的に体制を整えてきた。昨年4月に初めて年間を通じて強化を行う「強化本部」を設置。強豪のコスタリカや南アフリカでナショナルチームを指導してきたウェイド・シャープ氏をヘッドコーチ(HC)に招へいし、強化に本腰を入れ始めた。また、世界プロツアーを運営するワールド・サーフ・リーグ(WSL)、国内のプロサーフィンを統括する日本プロサーフィン連盟(JPSA)とは協力関係にあり、それぞれのフィールドで活躍する強化指定選手をバックアップ。今回の合宿も3団体で共催するなど、サーフィン界全体が一丸となり体制が整いつつある。

 日本代表の選考プロセスについては、これから本格的に決定される。その大前提となるサーフィン種目の出場枠は、国際オリンピック委員会(IOC)の承認団体である国際サーフィン連盟(ISA)が、16日に発表したばかりで、男女各20名、各国・地域で最大各2名に決まった。

東京五輪では、最高峰ツアーCTの上位選手にまず出場権が与えられる。写真は3月の第1戦で優勝したレーキー・ピーターソン(左)とジュリアン・ウィルソン 【Getty Images】

 19年、20年の世界選手権に2大会とも出場することを条件に、まず18名(男子は上位10名、女子が上位8名)をWSLが主催する最高峰のチャンピオンシップツアー(CT)の選手から選出。続いて20名を先の世界選手権2大会と19年のパン・アメリカン選手権からそれぞれ選び、残り2枠は開催国枠として日本の男女各1名に与えられる(ただし、上記大会で日本の代表枠が全て埋まった場合、開催国枠は再配分される)。
 国内では、東京五輪への第一関門となる19年世界選手権については、国内代表選考会を行う方針で調整を進めている。しかし、その試金石となる今年9月の世界選手権については、開催半年を切った現在も白紙のままだ。強化本部長の吉永修氏は「3月(中)に決めて、アナウンスできれば」と話す。選手の今後の予定にも関わるだけに、早急な対応が必要となるだろう。

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