最高峰のスター選手8名を厳選紹介 MLB入門編<その3>

菊田康彦

完成度が高い左腕カーショー

現役最高左腕の呼び声高いカーショー。特筆すべきは通算防御率2.36という安定感!また黒田博樹氏がドジャーズに所属していたときはキャッチボールパートナーを務めていたことでも有名 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 新たに海を渡った大谷翔平(エンゼルス)を中心に、今シーズンのメジャーリーグ(MLB)も、ここ日本ではやはり日本人選手に注目が集まりそうだ。だが、仮に日本人メジャーリーガー目当てであっても、せっかくMLBを見るならば日本人以外の選手にも注目してほしい。そこで今回は現在のMLBにおけるスーパースターを、8人に厳選して紹介する。

 今や平均年俸400万ドル(約4億3000万円)超のMLBにあって、最高峰に位置する選手。それが今年で7年総額2億1500万ドル(約230億円)の大型契約の5年目、メジャートップの年俸3300万ドル(約35億円)を誇るドジャースのクレイトン・カーショー(29歳)だ。この年俸は昨年も同額だったが、開幕戦で対戦したパドレスのベンチ入りメンバー25人の年俸総額を、1人で上回るということで話題になった。

 カーショーのスゴさを物語るのが、昨年までの通算防御率2.36だ。これは1920年以降の、いわゆる「飛ぶボールの時代」では歴代ナンバーワン(通算1500投球回以上)。最優秀防御率は昨年で5度目で、最多勝と最多奪三振は各3度。投手にとって最高の栄誉であるサイ・ヤング賞も既に3度受賞している。2014年にはノーヒットノーランを達成し、この年はナ・リーグの投手では46年ぶりのMVPにも輝いた。

 とにかく投手としての完成度が高く、191センチの長身から投げ下ろす平均93マイル(約150キロ)の速球とキレのいいスライダーはコントロールも抜群。そこに大きくタテに割れるカーブを投げられると、打者は手も足も出ない。エンゼルスとのオープン戦で、大谷からその“伝家の宝刀”で見逃し三振を奪った場面をご覧になった方も多いのではないだろうか。

シャーザーは現役最高右腕の評価

5年連続200投球回、4年連続250奪三振と鉄腕ぶりを発揮するシャーザー。カーショーが現役最高左腕なら、シャーザーは現役最高右腕と評される 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 現役最高の左投手がカーショーなら、右では2年連続でナ・リーグのサイ・ヤング賞に輝いたナショナルズのマックス・シャーザー(33歳)ということになるだろう。大学出のシャーザーは、高卒のカーショーとは年齢差こそあれ、06年にともにドラフト1巡目でプロ入りして以来、同じようにキャリアを重ねてきた。08年のメジャーデビューが一緒なら、10年から8年連続2ケタ勝利、うち3度の最多勝とサイ・ヤング賞も同じ。シャーザーは最多奪三振は2回だが、ここ4年連続で250以上の三振を奪うなど、通算奪三振はカーショーを上回る。また、15年にノーヒットノーランを2度達成し、16年には9イニングで20奪三振のMLBタイ記録も樹立している。

 真上から投げ下ろすようなカーショーに対し、シャーザーはサイドスローに近いスリークォーター。右打者には厄介な腕の振りから繰り出される平均94マイル(約151キロ)の速球と、メジャーでも屈指と言われるスライダーに、カーブ、チェンジアップを交えて三振を奪う。ここまで大きな故障もなく、13年以降は毎年200イニング以上投げているタフさも売りだ。

独特のカーブで三振奪うクルバー

ツーシームとカーブを武器に2度のサイ・ヤング賞と2度の最多勝を獲得しているクルバー 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 一方、ア・リーグでサイ・ヤング賞に輝いたのがインディアンスの右腕コリー・クルバー(31歳)。昨年は2度目の最多勝、初の最優秀防御率を獲得し、奪三振は2位で惜しくも投手三冠は逃したものの、サイ・ヤング賞は14年に次いで自身2度目となる。

 このクルバーはキレイな回転のストレートよりも、打者の手元で微妙に動く「ツーシーム」と呼ばれる速球を多投するが、三振を奪う上で大きな武器になっているのが、スライダーに近い変化のカーブだ。全投球の3割近くを占めるこのボールは、MLBのデータ分析システムによると昨年の被打率はわずか1割0分5厘だったという。

昨年は失敗1度の名クローザー

昨年は42セーブ機会で失敗はわずかに1度というドジャーズの絶対的守護神ジャンセン 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 ここまで紹介してきたのはいずれも先発投手だが、抑えの投手、いわゆるクローザーも取り上げておこう。ナ・リーグの最優秀救援投手に与えられる「トレバー・ホフマン賞」を、ここ2年連続で受賞しているドジャースの守護神、ケンリー・ジャンセン(30歳)である。

 東京ヤクルトのウラディミール・バレンティンの故郷として知られるキュラソー島で生まれ育ったジャンセンはもともとは捕手であり、09年のワールド・ベースボール・クラシックでもオランダ代表として強肩ぶりを発揮していたが、いかんせん打撃がパッとしなかった。そこでその年の途中で投手に転向すると、翌年には初めてメジャーの舞台に立ち、12年から抑えに定着した。

 昨年は42回のセーブ機会で失敗は1度だけという抜群の安定感で初の最多セーブに輝き、2年連続でホフマン賞を受賞。その投球の9割近くを占めるのは平均94マイル(151キロ)に迫る高速カッター(カットボール)だが、バッターはわかっていてもこれが打てない。まさに“魔球”だ。

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著者プロフィール

静岡県出身。地方公務員、英会話講師などを経てライターに。メジャーリーグに精通し、2004〜08年はスカパー!MLB中継、16〜17年はスポナビライブMLBに出演。30年を超えるスワローズ・ウォッチャーでもある。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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