マイケル中村が送る第2の野球人生 豪州代表投手コーチとしての使命

阿佐智

東京五輪へ本腰を入れる豪州

日本では日本ハム、巨人、西武と8年間プレー。右横手からの速球とスライダーを武器に、クローザーとして活躍した 【写真は共同】

 08年まで日本ハムのクローザーを務めたマイケルだが、その後4シーズンを巨人、西武で送ると、36歳で引退を決意し、オーストラリアへ帰った。

「もっとできたとは思うけど、もう疲れてしまったしね」

 オーストラリアには、ABLというウィンターリーグがある。シーズンの短いこのリーグには、かつて北半球のトップリーグでプレーした選手が、「現役」の延長戦を送ることが多いが、マイケルはこれにも一切興味を示すことはなかった。

「いろいろな考えがあるんだろうけど。あのリーグは、若い選手が高みに到達するための場所。僕は06年に登り詰めてしまったからね。日本でのプレーでもう終わり。ABLでプレーするなら、日本で現役を続けたよ。もう家族とゆっくり暮らしたかったんだ。メルボルンにもチームはあるけど、僕の家からは球場も遠いしね。遠征で家を離れる生活ももうしたくはなかったしね」

 余生をのんびり過ごしたいと考えていたマイケルだったが、オーストラリア球界が彼を放ってはおかなかった。昨年から、ジュニアレベルのナショナルチームの指導を任されたマイケルは、この春、ついにトップチーム、「サザン・サンダー」のコーチに就任することになった。

 東京五輪を前にして、ナショナルチームの強化に本腰を入れているのは日本だけではない。04年にアテネ五輪で銀メダルを取った“アテネの奇跡”再びとばかりに、オーストラリアも冬季プロリーグのオールスター戦をナショナルチームvs.外国人選抜の対戦とするなど、チーム強化に努め、WBSC(世界野球ソフトボール連盟)ランキングを8位まで上げている。前回大会は出場できなかったプレミア12にも来年の第2回大会には出場してくることだろう。 

「日本野球を変える必要はない」

3月3日、4日の「侍ジャパンシリーズ2018」では日本ハム時代の同僚である建山コーチ(写真左)らと再会したマイケル中村。これからの野球オーストラリア代表の強化へ第2の野球人生を送る 【写真は共同】

 最後に、日豪の野球のこれからについて聞いてみた。そのレベルの高さをたたえていた日本野球については、「まだまだメジャー未満」だとシビアな評価。その差はどこにあるのかと尋ねると、即答で「パワー」という言葉が返ってきた。来年以降、19年にプレミア12、20年に東京五輪、そして21年にWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)と主要な国際大会が毎年開催される。前回プレミア12では、メジャーリーガーたちが出場せず優勝候補筆頭と言われながらの3位、WBCでも過去2大会覇権から遠ざかっている。

 それでも自国開催の五輪では、金メダルは至上課題だ。世界の頂点に立つことを考えると、やはり彼が指摘したように、パワー不足は絶対に克服すべき課題であると思われるのだが、マイケルは、「このままでいい」と言い切る。それは、決して現状維持を意味するのではなく、長年日本野球が培ってきた「匠の技」は武器にパワーベースボールに十分対抗できるという意味である。

「堅実なディフェンス、バントの技術、アグレッシブなベースランニング、この部分はメジャーより上だよ。久しぶりに見た日本野球は、僕がプレーしていた頃のままだった。変える必要はない」

 インタビュー後に行われた第2戦も、侍ジャパンはオーストラリア相手にそつのない攻撃で得点を重ねて6点を奪い、投手陣は前日に続いて完封リレーで完勝した。パワー主体のオージーベースボールとの差が際立った2連戦に、オーストラリアの選手も脱帽だった。ただし、第1戦では、東北楽天でもプレー経験のある元メジャーリーガー、トラビス・ブラックリーをはじめとする投手陣が侍打線を2点に抑え込んでいる。パワーでは日本を上回るだけに、投手陣が踏ん張ってロースコア戦に持ち込めば、ワンチャンスを生かして「アテネの再来」も夢ではない。

「オーストラリアの野球も確実に進歩しているよ。ジュニアレベルからの強化が実り始めているからね」

 日本生まれのオージー、マイケル中村の第2の野球人生は今スタートを切ったばかりだ。

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著者プロフィール

世界180カ国を巡ったライター。野球も世界15カ国で取材。その豊富な経験を生かして『ベースボールマガジン』、『週刊ベースボール』(以上ベースボールマガジン社)、『読む野球』(主婦の友社)などに寄稿している。

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