カーリングをブームで終わらせない! 今こそ問われる魅力の伝え方

竹田聡一郎

欲しいのはブームではなく、普及と強化

両角友佑はこの盛り上がりをカーリング界強化の好機ととらえる 【写真:エンリコ/アフロスポーツ】

 もうひとつ、総括として挙げるべきは報じられ方、特に女子のそれだろう。
 今回、「そだねー」や「もぐもぐタイム」などが大きな話題となり、カーリングが一躍、脚光を浴びた。
 もちろん、いいことではあるし、彼女らの魅力であってスタイルであって、それを否定するつもりは一切、ない。しかし「そだねー」や「もぐもぐタイム」はあくまでカーリングという競技を彩るトピックの1つでしかないはずだ。小ネタが、江陵のアイスの難しさや、彼女たちが積み上げてきた努力、攻防一体となったカーリングというゲームの醍醐味(だいごみ)より先にきてしまってはいないか。

 露出をしてもらい、世の中にカーリングという競技と現状を知ってもらうのは必須だ。しかし、欲しいのはブームではなく、普及と強化だ。

「面白かったね、カーリング。もぐもぐタイム。白い恋人じゃなくて、なんだっけあのお菓子」

「ああ、男子も頑張ってたよね。なんか難しい苗字の兄弟がいて」

 このまま、人気と話題を追うだけであれば、上のような会話が来年には聞こえる気がしてならない。
 例えば、男子カーリングで金メダルに輝いたチームをもう覚えていない、あるいは興味ない人も多いのではないだろうか。優勝したのは米国だ。セカンドにはマット・ハミルトンがいる。既に「誰だっけ?それ」となっていないだろうか。散々、「スーパーマリオ」としてイジったのに、金メダルおめでとうの声はほとんど聞こえなかった。友人であるSC軽井沢クラブのリード・両角公佑が一緒に撮った写真をSNSでアップしたくらいだ
 散々、むさぼって、飽きて、味がしなくなったら捨てる。これがカーリングの現場で、4年ごとに繰り返されてきた報道の悪癖だ。

 だからこそ、彼らは言う。両角友佑は断言する。

「『五輪で盛り上がってよかったですね』だといつもと変わらない」

 本橋麻里は「もぐもぐタイム」について聞かれたが、やんわりと警鐘を鳴らした。

「戦術等も練りに練ってやっているので、もぐもぐタイムをきっかけにそこにも注目してもらえるとありがたいです」

今こそカーリングの魅力を伝えるチャンス

本橋麻里も、「さらにのめり込んでほしい」と競技の発展を願う 【写真:エンリコ/アフロスポーツ】

 戦いを終えた日本代表チームのシーズンはまだまだ終わらない。男女共にツアー最高峰のグランドスラム出場の可能性が高く、それに向けてもう一度、チームを上向きのコンディションに整えないといけない。

 また、両角友、山口剛史、清水徹郎、藤沢五月、吉田知那美、吉田夕梨花の6選手は3月14日から青森で開催される「第11回全農日本ミックスダブルスカーリング選手権大会」に出場する、とされている。これは平昌五輪から正式種目として採用された、男女ペアによる2対2のゲームだ。今回、日本は出場できなかったこの種目をJCA(日本カーリング協会)としては強化していきたい意向だ。

 ただ、これはオリンピアンの、しかもメダリストの凱旋試合だというのに現在、JCAのホームページには同大会については日程と会場しか掲載されていない。

 ようやく2月28日の夜遅くに、「第11回全農日本ミックスダブルスカーリング選手権大会について」というタイトルで、有料開催が明言されたのみで、未だどの選手が出場するのか、チケットの入手方法、スケジュールや、テレビ放送の有無などについてはファンが一切、入手できないのが現状だ。周知と広報のスピード感も今度の課題に挙げられる。

 もぐもぐタイムだけのカーリングにしてはならない。カーリングをメジャースポーツにするために今、多くのことが問われている。

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