「痛いタイミング」だった吉田の負傷離脱 レギュラー奪還ならず、降格の危機も迫る

田嶋コウスケ

左ひざを痛め、約5週間の離脱

吉田麻也が左ひざを負傷。チーム、代表、そして本人にとっても痛い離脱となった 【写真:ロイター/アフロ】

 サウサンプトンのDF吉田麻也が左ひざ内側側副靱帯を痛め、5週間ほど離脱することになった。 

 ウェスト・ブロムウィッチとのFAカップ5回戦(現地時間2月17日)の前日トレーニングで、アルゼンチン人FWのギド・カリージョと激しく接触。吉田は左ひざをひねって痛め、試合メンバーから外れた。精密検査後、2月22日に行われた定例会見でマウリシオ・ペジェグリーノ監督が「5週間ほど離脱する」と明らかにした。

 今後の日程から考えると、戦列復帰は3月31日に行われるウエストハム戦の可能性が高く、日本代表が行う3月23日のマリ戦、同27日のウクライナ戦を欠場することになりそうだ。プレミアリーグで降格圏付近に沈むサウサンプトン、6月のワールドカップ(W杯)本大会の前に最終強化を図りたい日本代表、そして、吉田にとっても痛い負傷離脱となった。

チームは12月から急降下、降格圏が近づく

 今シーズンの吉田を語る上で避けて通れないのが、サウサンプトンの不振である。28節終了時で、降格圏の18位スウォンジーと同ポイントの16位につけている(勝ち点27で並び、得失点差でサウサンプトンが16位。19位のストークとも勝ち点1差しかない)。とくに、昨年12月からは呪われたように勝てなくなり、リーグ戦14試合で1勝8分け5敗と低迷して順位表を急降下していった。昇格組のブライトンに引き分けた25節終了時には、ついに降格圏の危険水域へ突入。過去4年は8位(2013−14シーズン)、7位(14−15シーズン)、6位(15−16シーズン)、8位(16−17シーズン)と、中堅クラブとして安定飛行を続けてきたが、このままいけば今シーズンは残留争いに巻き込まれそうだ。

 不振の引き金になったのは、極度の得点力不足である。ボールをつなげど、ゴールにつながらない。あるいは、チャンスを作っても、シュートが枠に飛ばない。FW陣がそろって不振で、イタリア代表FWのマノロ・ガッビアディーニは自信を失い、ゴール前でまったく怖さを見せられなくなった。しかも、イングランド人FWのチャーリー・オースティンも慢性的なけがに苦しみ、医務室が定位置という体たらく。1月の移籍市場で加わったFWカリージョも6試合に出場して無得点で、救世主にはなっていない。

 吉田は、先制しながら逆転負け(1−2)を喫した第22節のクリスタルパレス戦後、チームの現状を次のように嘆いていた。

「(チームとして)2点目が取れないというのが一番の問題。もちろん、敗戦を攻撃陣のせいにしているわけではないけれど、そういう状況が続いている。そして、点を取れない時間帯が長く続き、何となく流れを相手に持っていかれてしまう」

吉田が失点に関与するシーンも目立つ

年末にかけて吉田が失点に関与するシーンが目立った 【写真:アフロ】

 追い打ちをかけるように、守備もバランスを欠くようになった。チームは攻撃に人数をかけることで得点力不足を補おうとしているが、前傾姿勢が強すぎるゆえにカウンターを受けて失点を重ねるという悪循環に陥っているのだ。

 象徴的だったのが、0−2で敗れた第27節のリバプール戦(2月11日)。先制ゴールを許した場面で、フィールドプレーヤー6人が敵陣のペナルティーエリア付近まで侵入するというリスクの高い攻撃を仕掛けた。しかし、リバプールのカウンターの餌食となり、やすやすと失点。昨シーズンは堅守速攻を武器にリーグカップ決勝まで勝ち進んだサウサンプトンだが、ペジェグリーノ監督が指揮を執る今シーズンは、攻守のバランスが著しく悪化している。

 こうしたチームの不振に引きずられるように、吉田が失点に関与するシーンが特に年末にかけて目立った。

 第19節のハダースフィールド戦(12月23日)では、マークしていたFWローラン・ドゥポワトルを完全に離してしまい、フリーでヘディングシュートを許して失点。英メディア『スカイスポーツ』にチーム最低点となる5点(10点満点)をつけられると、2−5で大敗した次節トッテナム戦(12月26日)も、イングランド代表FWのハリー・ケインの対応に苦しんだ。この試合でも、英紙『タイムズ』が4点という厳しい評価を吉田につけている。

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著者プロフィール

1976年生まれ。埼玉県さいたま市出身。2001年より英国ロンドン在住。サッカー誌を中心に執筆と翻訳に精を出す。遅ればせながら、インスタグラムを開始

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