現在進行形のトッププレーヤー・中澤佑二 日本代表にこの選手を呼べ!<横浜FM編>

二宮寿朗

連続フルタイム出場記録は「157」

連続フルタイム出場を続ける「堅守マリノス」の象徴・中澤佑二を試さない手はない 【(C)J.LEAGUE】

 2月末に不惑(40歳)を迎える中澤佑二は、旬を過ぎた人ではない。今なおJ1リーグの最前線で活躍する、現在進行形のトッププレーヤーである。

 2017年シーズンも全34試合のフルタイム出場を果たした。13年7月の大分トリニータ戦から4年半にわたり、連続フルタイム出場記録を「157」に伸ばしている。言うまでもなくフィールドプレーヤーでは歴代トップの数字だ。

 昨季のパフォーマンス自体「◎」をつけていい。チーム総失点数は「36」で、上から5番目に少ない数字。彼は「堅守マリノス」の象徴であり続けていて、昨年のJリーグ優秀選手賞にも選出されている。

 ワールドカップ(W杯)ロシア大会を6月に控えるハリルジャパンにおいて、駒不足が否めないのはセンターバック(CB)である。

 吉田麻也の相棒をここ最近は槙野智章が務めているものの、昌子源、森重真人を含めてまだまだ固められていない。この状況下に置いて、10年のW杯南アフリカ大会で田中マルクス闘莉王とのツインタワーでゴール前の制空権を握った中澤の名が浮上してきても、何ら不思議ではない。年齢を見るのか、ピッチ上のパフォーマンスを見るのか。後者であれば、一度試さない手はないように筆者は感じている。

“ハマの堅守”を支える精いっぱいの「無理」

中澤の最後の最後まで抵抗を試みる精いっぱいの「無理」が、“ハマの堅守”を支える 【(C)J.LEAGUE】

 話を4年半にも及ぶフルタイム出場記録に戻そう。

 何故、この記録が偉大なのか。けがをしたり、コンディションを崩したら試合に出ることはできない。パフォーマンスが悪かったら、誰かと交代させられるに違いない。良いコンディションの継続と、パフォーマンスに対する監督の信頼がそこにはある。

 そしてもう1つ、累積警告や一発レッドで出場停止になっても、この記録は途切れてしまう。昨季の警告数はゼロ。13年シーズンまでさかのぼってみても、この4年間、警告の数は多くて「1」しかない。このクリーンファイトこそが、中澤のすご味である。

「経験値」と90分間持続する「集中力」と。無駄なファウル、無茶なプレーはやらない。その見極めは、まさに達人の域に達している。

 しかしながら、「無理」だけは精いっぱいやる。

 自陣が危険にさらされたら素早くポジションに戻り、抜かれてもシュートコースを限定させるように体を寄せて必死に粘る。最後の最後まで抵抗を試みるのが、中澤佑二のポリシーだと感じる。

 彼はこう語っていた。

「危ないと思って全力でポジションに戻れば、ワンプレー、ツープレー(の時間)を稼げるじゃないですか。その時間を作ったら、味方が戻ってくることができる。瞬時の半歩でいいから(シュート)コースの切れるところを切っておけば、それだけでも違ってくる」

 手を抜かないプレー。これが周囲の集中力を呼び込み、“ハマの堅守”が成立している。大ベテランがピッチで精いっぱいの「無理」をやっているのだから、周りが手を抜けるわけがない。

心に刻む岡田武史の教え

中澤は、岡田武史(左)にたたき込まれた精神で守備に臨む 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 中澤には、心に刻む教えがある。

「岡田さんに言われたんです。まあ大丈夫だろうと思うことをするな。パスが来なくたって守るんだよ。シュートが来なくたって守るんだよって」

 03、04年と横浜FMがリーグ2連覇を果たした岡田武史監督のもと、たたき込まれた精神だ。のちに日本代表でも、岡田のもとで守備の中心を担っており、中澤に影響を与えた指導者の1人だと言っていい。

「大丈夫だろうと思う」プレーが中澤にはない。細部まで妥協なくやり切る鉄の守備は、鉄の意志あってのものである。

 彼のプレー自体そのものが最高の教材。特にクロスに対する対応は、まさに天下一品だ。瞬発力が衰えているのでは、という声もあるだろう。だが、そこは読みとポジショニング、周りを動かす力でカバーできている。代表に復帰すれば、周りのメンバーも中澤から学べる、ヒントを得ることだってある。その波及効果も期待できる。

 18年シーズン、中澤は横浜FMのキャプテンに就任した。クラブを通じて、ユーモアたっぷりに決意を示している。

 気炎万丈
 やるしかない
 プロ生活20周年
 天下獲ります
 ンフフフフ

 心身共に充実一途。計算できる経験豊富なCBに、今一度目を向けてみるべきではないだろうか。
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著者プロフィール

1972年、愛媛県生まれ。日本大学卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社し、格闘技 、ラグビー、ボクシング、サッカーなどを担当。退社後、文藝春秋「Number」の編集者を経て独立。 様々な現場取材で培った観察眼と対象に迫る確かな筆致には定評がある。著書に「 松田直樹を忘れない」(三栄書房)、「中村俊輔 サッカー覚書」(文藝春秋、共著)「 鉄人の思考法〜1980年生まれ、戦い続けるアスリート」(集英社)など。スポーツサイト「SPOAL(スポール)」編集長。

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