JFLから這い上がってきた小池龍太 日本代表にこの選手を呼べ!<柏編>

鈴木潤

伊東と右サイドでコンビを組む右SB

柏から日本代表へ推薦したいのは伊東(右)と右サイドでコンビを組む右SB、小池龍太だ 【(C)J.LEAGUE】

 2018年1月30日。柏レイソルはどこよりも早い公式戦を戦った。AFCチャンピオンズリーグ(ACL)のプレーオフである。

 シーズンの初戦がアジアへの出場権を懸けた大一番ということもあり、前半は思いのほか硬さが目立っていた。その重苦しい空気を打破する先制点が生まれたのは後半6分。背後へ抜け出した伊東純也がスピードを生かしてゴール前へ侵入、DF2人とGKを引きつけると、横パスを受けたフリーのクリスティアーノが難なくゴールへ流し込んだ。柏は3−0でタイのムアントン・ユナイテッドを下し、無事ACL本戦出場を決めた。伊東は全得点に絡む大活躍を見せた。

 伊東は間違いなくハリルジャパンに推挙したい選手の1人である。彼は昨年12月のEAFF E−1サッカー選手権で輝きを放ち、6月のワールドカップ(W杯)ロシア大会に向けた“秘密兵器”として招集が期待されている。とはいえ、伊東が代表メンバー23名に食い込んだなら、おそらくそれは“サプライズ”ということになるだろう。

 ならばその“サプライズ”を前提に、もう1人推薦したい選手がいる。伊東と右サイドでコンビを組む新進気鋭の右サイドバック(SB)、小池龍太だ。

Jリーガーの中でも人一倍強いハングリー精神

JFLから1年ごとに“昇格”を果たしてきた小池。ハングリー精神は人一倍強い 【(C)J.LEAGUE】

 Jリーグの歴史の中でも、これほどのサクセスストーリーを描く選手はそうそういないだろう。小池は14年、当時JFLのレノファ山口でプロキャリアをスタートさせると、チームの昇格とともにJ3、J2と1年ごとにカテゴリーを上げていった。昨年の柏への完全移籍に伴いJ1の舞台へたどり着き、そして今年のACLプレーオフを制したことによって、とうとうアジアのステージまで上り詰めたのだ。

 90分間に渡って上下動を繰り返すエネルギッシュなプレーと迫力あるオーバーラップ。山口時代から披露していた攻撃的なプレーは、J1でも変わらず鋭い切れ味を見せた。伊東と小池の存在によって、柏の右サイドアタックは二枚刃となり、数多くの決定機を演出した。冒頭で述べたプレーオフの先制点も、伊東へスルーパスを通したのは小池だ。もし、伊東がW杯本大会の秘密兵器や切り札になり得るのであれば、抜群のコンビネーションと意気の合った連係によって、この“スピードスター”を効果的に使いこなせる小池を右SBに置き、コンビを組ませたい。

 もちろん、小池を推薦する理由は伊東との連係だけではない。JFLから這い上がってきたとあって、Jリーガーの中でも人一倍ハングリー精神は強く、それでいてJ1にたどり着いたことに満足せず、ことあるごとに日本代表や海外への意欲を口にする上昇志向を抱き続ける姿勢からは、一気に前線へと駆け上がるプレースタイルばりの勢いを感じさせる。

従兄・中島翔哉の活躍も大きな刺激に

ポルティモネンセで活躍する中島翔哉は従兄にあたる。その活躍も小池に大きな影響を与えている 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 1つ年上の従兄・中島翔哉が、リオデジャネイロ五輪で日本代表の10番を背負い、現在はポルティモネンセでプレーしている事実も、小池に多大な刺激を与えているに違いない。さらには、オリンピック・マルセイユに所属する酒井宏樹が、シーズンオフに自主トレを兼ねて古巣の柏の練習に参加した際には、小池との邂逅(かいこう)があった。日本代表の右SBとともにプレーした小池は、日の丸と海外でのプレーを、より明確に自らの目標として描いていった。

 昨季、初のJ1でメキメキと力をつけ、今や飛ぶ鳥を落とす勢いがある。それだけにW杯の舞台に立てば、体内に秘められたポテンシャルが爆発し、想像以上のブレークを果たすのではないか。そんな期待すら抱いてしまう。なおかつ、W杯ブラジル大会開催時にはJFLでプレーしていた選手が、4年後には日の丸を背負い、代表選手の1人としてロシアのピッチに立つという背景は、話題性にもこと欠かない。

 それが実現すれば、素晴らしいサクセスストーリーの完成だ。
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著者プロフィール

1972年生まれ、千葉県出身。会社員を経て02年にフリーランスへ転身。03年から柏レイソルの取材を始め、現在はクラブ公式の刊行物を執筆する傍ら、各サッカー媒体にも寄稿中。また、14年から自身の責任編集によるウェブマガジン『柏フットボールジャーナル』を立ち上げ、日々の取材で得た情報を発信している。

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