「高梨は元のジャンプを取り戻せた」 船木和喜氏が女子ノーマルヒルを解説

構成:スポーツナビ

風の影響で当たりハズレが出てしまう

表彰台も期待された伊藤は、追い風の影響もあっての失速だった 【写真は共同】

――大会4日目を終え、スキージャンプは男子ノーマルヒルと女子ノーマルヒルの2種目を終えましたが、現地の環境はどうですか?

 始まる前までは、私のイメージとしては追い風が中心のジャンプ台で、非常にジャンプ選手にとっては不利な風で、技術がないと勝てないと思っていました。ただ、これだけ向かい風が強いと、やはり選手にとっては当たりハズレが出てきてしまいます。ですから、いかにハズレの風を引いた時に、技術を持っているかどうかなのですが、やはり技術があっても有利な風(=向かい風)だと勢いが全然変わってきます。それだと点数を縮めることがやはり難しいです。そういう試合の傾向になっていると思いますが、やはり男子の試合の方が、それがより顕著に出ましたね。

――風の影響で言いますと、女子では伊藤選手が2本とも追い風で、ほかの選手に比べて難しい条件だったように見えました。

 風がコロコロ変わりますので、空中に出てからの判断が重要になります。その判断が早くできて、早く対処ができるかどうかが勝つために必要なポイントなのですが、それが攻めのジャンプとマッチした時には、大ジャンプになります。

 ただ今回の伊藤選手は体とスキーのバランスが少し悪く、体が先行してしまい、スキーが後からついてくる形になってしまいました。一緒に飛ばないといけないものが、それだけのリスクを背負ってしまって、それは攻めている証拠でもあります。もしこれがスキーと一緒に前に攻めることができ、風をもらっていたらすごいジャンプができていたと思います。ただ、どうしても追い風だったので難しかったですね。

強化の考え方を変えてより良い日本チームに

次の4年間は全日本チームとして、男女一緒にレベルアップを目指していければ、金メダルも見えてくるだろう 【写真は共同】

――今回、日本女子チームとしては初の銅メダルを高梨選手が獲得しましたが、次のステップに向けて望むことはどんなことでしょうか?

 やはりノルウェーチームが成功したように、男女関係なく上を目指していければいいですね。成功したチームの例があるので、環境的には男女で一緒にトレーニングする機会があれば、女子も男子にけん引されてレベルが上がっていくと思います。

――やはり男女を別種目と考えるのではなく、一緒に強化していくことが大事なのですね。

 もちろん日本の場合は、企業チームが主体で、練習はそれぞれバラバラだったりします。またチームの考え方もありますので、すぐに変えるのは難しいかも知れません。ただ私のチームにいる勢藤も今回出場しましたが、彼女にとっても男子と同じ環境で、同じレベルのトレーニングメニューをこなせていければ、さらに高いレベルで戦えます。まずはそういう考え方に各チームが変わっていき、それが全日本の考えも変えるきっかけになれば、より良い全日本チームになると思います。

 今回の平昌五輪については、メダルも獲得しましたので、良く頑張ったと評価してもらえればと思います。

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