「第四の男」原大智がこじ開けた扉 モーグル日本男子、史上初の銅メダル

Bravoski(ブラボースキー)

W杯で表彰台もなかった男が決勝の舞台へ

男子モーグルで3位となり、日の丸を掲げる原大智=平昌 【共同】

 2月12日、フェニックススノーパークで開催された平昌五輪フリースタイルスキー男子モーグル決勝。最後まで残った6名の中に、日本人選手がいた。それは、世界選手権覇者でも、今季絶好調のエースでも、五輪での戦い方を熟知するベテランでもなかった。

 原大智(日大)。これまワールドカップ(W杯)で表彰台の経験はなく、日本チーム内では四番手と目されていた20歳がメダルまであと一歩の地点に立っていた。

 日本の男子モーグル勢の中で、11日の第1予選で準々決勝進出を決めたのは、昨季世界選手権で2冠王(モーグル、デュアルモーグル)堀島行真(中京大)、そして原だった。
 続いて、12日の第2予選で、今季で引退を表明しているエース・遠藤尚(忍建設)、32歳のベテラン・西伸幸(マンマーノフーズ)がともに10位以内に入り、準々決勝に駒を進めた。

準々決勝、実力者たちを苦しめた平昌の魔のバーン

準々決勝で有力選手が苦しむ中、遠藤尚はほぼノーミスで1位に立った 【写真は共同】

 ソチ五輪以来導入されている予選2段階方式は、実力のある選手を確実に決勝に残す意味合いがある。だが、今回の大会バーンはコブが固くミスを誘発しやすいのか、W杯上位の常連でも準々決勝に進めなかった選手が何人かいた。
 何が起こるか分からない。その“魔のバーン”は、番狂わせ的なサプライズを予感させた。

 20名が出場する準々決勝。2番スタートの西は攻めた。高速で板をタテに落とし込んでいく。しかし、その速さが災いした。ミドルセクションの後半でスピードに対応し切れず、コブに跳ね返されるようにコースアウト……。

 1人を挟んで遠藤が登場。第一エアでフルツイストを決めると、ミドルセクションをブレることのないターンで攻めていく。
 これぞ遠藤の滑りだ。第二エアでコーク720も成功。ほぼノーミスでゴールした。得点は82.72。ジャッジは遠藤の滑りを高く評価した。

 15番スタートの原は会心の滑りを見せた。第一エアで、コーク720に右手で左の板の先端をグラブするオプションを付ける。“ダイチグラブ”だ。さらに、固いコブを難なくクリアしていく。得点は81.29。この時点で3位に躍り出た。

 続いて堀島が登場。エアの高さ、完成度はさすがだった。しかし、ターンに乱れが出た。それでも79.64。その時点で5位。準決勝進出はセーフだろう。堀島はスコアボードを見ながらペロリと舌を出した。

 準々決勝で最後に滑るのは、金メダルの大本命、W杯総合6連覇中の“絶対王者”ミカエル・キングスベリー(カナダ)だ。常に精密機械のような正確無比なターンを見せるキングスベリーだが、ミドルセクションの序盤で一瞬バランスを崩した。得点は81.27と決して低くないが、順位的には4位となった。

 平昌の“魔のバーン”は、王者の敗退もあり得るという可能性を示唆した。
 準々決勝の結果は、1位=遠藤、2位=マット・グラハム(オーストラリア)、3位=原、4位=キングスベリーで、堀島は7位だった。
 西はここで脱落。ほかにも世界選手権2位のブラッドリー・ウィルソン(米国)、ソチ五輪銅メダリストのアレキサンドル・シュミシュリヤエフ(個人資格(ロシア))、W杯表彰台の常連であるフィリップ・マーキー(カナダ)ら有力選手が次々と姿を消した。

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著者プロフィール

今年で創刊37周年を迎えた双葉社発刊のスキー専門誌。90年代中盤からフリースタイルスキーに着目し、98年長野五輪・モーグル種目で里谷多英、上村愛子らが活躍してモーグルが一大ブームとなる。現在ではフリースタイルスキー(パウダー、パーク、モーグル)の専門誌として年間3冊発刊

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