「第四の男」原大智がこじ開けた扉 モーグル日本男子、史上初の銅メダル
W杯で表彰台もなかった男が決勝の舞台へ
男子モーグルで3位となり、日の丸を掲げる原大智=平昌 【共同】
原大智(日大)。これまワールドカップ(W杯)で表彰台の経験はなく、日本チーム内では四番手と目されていた20歳がメダルまであと一歩の地点に立っていた。
日本の男子モーグル勢の中で、11日の第1予選で準々決勝進出を決めたのは、昨季世界選手権で2冠王(モーグル、デュアルモーグル)堀島行真(中京大)、そして原だった。
続いて、12日の第2予選で、今季で引退を表明しているエース・遠藤尚(忍建設)、32歳のベテラン・西伸幸(マンマーノフーズ)がともに10位以内に入り、準々決勝に駒を進めた。
準々決勝、実力者たちを苦しめた平昌の魔のバーン
準々決勝で有力選手が苦しむ中、遠藤尚はほぼノーミスで1位に立った 【写真は共同】
何が起こるか分からない。その“魔のバーン”は、番狂わせ的なサプライズを予感させた。
20名が出場する準々決勝。2番スタートの西は攻めた。高速で板をタテに落とし込んでいく。しかし、その速さが災いした。ミドルセクションの後半でスピードに対応し切れず、コブに跳ね返されるようにコースアウト……。
1人を挟んで遠藤が登場。第一エアでフルツイストを決めると、ミドルセクションをブレることのないターンで攻めていく。
これぞ遠藤の滑りだ。第二エアでコーク720も成功。ほぼノーミスでゴールした。得点は82.72。ジャッジは遠藤の滑りを高く評価した。
15番スタートの原は会心の滑りを見せた。第一エアで、コーク720に右手で左の板の先端をグラブするオプションを付ける。“ダイチグラブ”だ。さらに、固いコブを難なくクリアしていく。得点は81.29。この時点で3位に躍り出た。
続いて堀島が登場。エアの高さ、完成度はさすがだった。しかし、ターンに乱れが出た。それでも79.64。その時点で5位。準決勝進出はセーフだろう。堀島はスコアボードを見ながらペロリと舌を出した。
準々決勝で最後に滑るのは、金メダルの大本命、W杯総合6連覇中の“絶対王者”ミカエル・キングスベリー(カナダ)だ。常に精密機械のような正確無比なターンを見せるキングスベリーだが、ミドルセクションの序盤で一瞬バランスを崩した。得点は81.27と決して低くないが、順位的には4位となった。
平昌の“魔のバーン”は、王者の敗退もあり得るという可能性を示唆した。
準々決勝の結果は、1位=遠藤、2位=マット・グラハム(オーストラリア)、3位=原、4位=キングスベリーで、堀島は7位だった。
西はここで脱落。ほかにも世界選手権2位のブラッドリー・ウィルソン(米国)、ソチ五輪銅メダリストのアレキサンドル・シュミシュリヤエフ(個人資格(ロシア))、W杯表彰台の常連であるフィリップ・マーキー(カナダ)ら有力選手が次々と姿を消した。