得点と言葉で振り返る羽生結弦の進化 尽きぬ向上心「何度でも壁を越える」

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「絶対王者だぞ」と言い聞かせながら演技

15−16シーズンのNHK杯では、史上初めてFSの200点超え、合計得点の300点超えを記録した 【坂本清】

 15−16シーズンのNHK杯はまさに羽生のための大会だった。SPで106.33点、FSで216.07点の合計322.40点をマークし、いずれも歴代最高得点を更新。FSの200点超え、合計得点の300点超えは史上初のことだった。続くGPファイナルでもSP、FS、合計得点のすべてで最高得点を更新した。特に合計得点の330.43点は今も破られていない記録だ。羽生は「現五輪王者として、連覇するためには圧倒的に強くならないといけない」というプライドのもと、「『絶対王者だぞ』と言い聞かせながらやっていた」と、そのときの演技を振り返る。

 しかし、それからしばらくの間、羽生はこの得点記録に苦しむことになった。どの試合でも記録の更新が期待される。いつしか自らも数字を意識するようになっていた。その苦しみから解放されたのが16−17シーズンの世界選手権だった。SP5位発進となった羽生は、FSで自身が持つ歴代最高得点を更新する223.20点をマーク。見事に逆転優勝を飾ってみせたのだ。試合後、羽生はこう語り、これまでの苦しみを吐露した。

「220(FS)、330(合計)、110(SP)という数字にとらわれて、すごく怖かった。何とか1点でも、0.1点でも超えてくれと思っていました」

 今シーズンは初戦のオータムクラシックで、いきなりSPの歴代最高得点を更新する112.72点を出すなど好発進を切った。新たに4回転ルッツを組み込んだ構成でプログラムを磨き込んでいくつもりだったが、NHK杯直前の公式練習で右足の靱帯(じんたい)を損傷。その後は試合にすら出場しておらず、平昌五輪が復帰戦となる。負傷の影響が懸念されるものの、これまでも試練のたびに強くなって戻ってきた羽生のこと。五輪の大舞台で再び進化した姿を見せてくれるはずだ。

(文:大橋護良/スポーツナビ)

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