青木亮太のドリブルスキルは一級品 日本代表にこの選手を呼べ!<名古屋編>

今井雄一朗

青木といえばドリブル

名古屋から日本代表に推薦するのはドリブルが武器の青木亮太だ 【(C)J.LEAGUE】

 まだまだ粗削りな才能だが、だからこそ大化けする期待値も高い選手として、名古屋グランパスからは青木亮太をハリルジャパンに推薦したいと思う。昨季のJ2リーグでは26試合で11得点とまずまずの成績を残した。だが、それは彼の持つ潜在能力のほんの一部にすぎない。

 特徴を一言でいえばドリブル、パス、シュートなど攻撃的なセンスに優れた選手ということになる。中でもドリブルスキルに関してはすでに一級品のレベルにある。GK楢崎正剛をして「宇宙人みたいなボールタッチをする」と言わしめた柔らかいテクニックに加え、身長(174センチ)に対して脚が、とりわけ膝下のリーチが長く、ドリブルの際のボールの動きが日本人離れしている。スピードもかなりあり、ラン・ウィズ・ザ・ボールでフェイントを繰り出す様はまるでブラジル人選手のようだ。ボールキープについてもかなりの自信があり、強靭(じん)な体幹機能を利して崩れた態勢からでも器用にボールを動かし、J2では2、3人くらいのマークなら軽々と手玉に取っていた。青木といえばドリブル。これは幼少期から変わらぬ彼の最大の武器である。

 ポジションはアタッカーだ。サイドに置けばドリブル突破でチャンスメークを担い、中央に置いても違う魅力を発揮する。前述したボールキープ力に加え、非凡なパスセンスも兼備しており、ドリブルでマークをかわした後の虚を突くスルーパスも実は得意としている。ノールックパスなどの遊び心も豊富で、それは意外性のあるシュートという持ち味にもつながる青木の本質だ。1対1などストライカーなら難なく決めるチャンスよりも、「これを決めるか」という難易度の高い場面でゴールを決めることが多い。だから青木はFWではなく、あくまで攻撃性の強いMFとして認識する方が正しい。

ハイレベルなプレー環境による意識改革に期待

 課題はプレーにまだ雑味が多いこと。前述の得点パターンについても、決定率はそれほど高くないという反面もある。素晴らしいプレーをしたかと思えば、何でもないプレーをミスして相手にボールを譲ってしまうことも少なくない。集中力だけの問題ではないだろうが、その点がもっと高いレベルにあれば、青木は昨季のJ2で倍の得点を稼いでいたと思う。何でそんな選手を薦めるのかと言われれば、ハイレベルなプレー環境が彼の意識そのものを変えてくれるのではという期待があるからだ。日本代表クラスの練習や試合についていくためには、桁違いの精度が要求される。気を抜いている暇はない。それが常識になれば、青木の才能はもっと花開くはずだ。

 年齢は3月6日で22歳。今年の大卒新人と同じだが、プロキャリアとしては5年目になる。昨季までの過去2年間は負傷との戦いで、実は2017年シーズンが実質的なプロ2年目というところでもあった。ヒョロヒョロだった体はその間にしっかりと厚みを増し、けが予防を含めたコンディショニングに対する気遣いは名古屋でも随一だ。現在のチームはホームゲーム当日に一度クラブハウスに集合し、バスで会場へと移動するのだが、ナイトゲームの日でも青木は昼頃にはクラブハウスに現われ、入念なケアをしてから試合に臨むようにしている。普段は超マイペースで知られる天然系だが、ことサッカーに対する意識は高い。そういった点も、「日本代表がこの上ない刺激になるのでは」と思えてしまう彼の特質である。

J1で“疑似ブラジル人トリオ”を形成

青木(23番)は名古屋躍進のキーマンの1人に数えられる 【(C)J.LEAGUE】

 昨年は右サイドからのドリブル突破でシュートに持ち込むパターンを確立し、今季もトレーニングから豪快なシュートを連発している。

 2年ぶりのJ1の舞台を戦うチームの中では、新加入のジョーや司令塔ガブリエル・シャビエルと3トップを組み、さながら“疑似ブラジル人トリオ”を形成。間違いなく名古屋躍進のキーマンの1人として数えられる逸材は、J1の新シーズンを騒がせる可能性を十分に秘めている。

 そうなれば、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の「追跡」対象になれるのではないか。青木亮太にはそんな期待を密かに抱いている。
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著者プロフィール

1979年生まれ。雑誌社勤務ののち、2015年よりフリーランスに。以来、有料ウェブマガジン『赤鯱新報』はじめ、名古屋グランパスの取材と愛知を中心とした東海地方のサッカー取材をライフワークとする日々。

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