大好きな愛媛にゴルフで恩返しを 黄金世代生まれ河本結、五輪への覚悟

寺下友徳

体操の白井、柔道の阿部……日体大での“日常”

昨年の高校ゴルフ王者に輝いた1歳下の弟・力(右)と河本。姉弟での東京五輪出場を目指している 【寺下友徳】

 当然ながら、高校卒業後の進路に注目が集まった河本。しかし17年春、プロ入りへと歩を進めた同世代メンバーと異なり、彼女が選んだのは日本体育大体育学部体育学科への進学。
「大学生としていろいろなことを学んで、もしゴルフを終えても社会に貢献できるようになろうと思ったんです」

 それから1年近く、志したことはさまざまな形で奏功している。
「キャンパスのどこにでも五輪選手、パラリンピック選手がいるんです。食堂で後ろに座っているのが白井(健三。3年・16年リオデジャネイロ五輪体操団体金メダリスト)くんだったり、キャンパスでは柔道の(阿部)一二三くん(2年・17年世界選手権66キロ級優勝)がいたり、水泳の授業をパラリンピック選手と一緒に受けたり。レベルの高い選手が周りにいる中で『一緒にいても恥ずかしくない選手になりたい』と毎日感じています。白井くんをはじめ、オーラがある選手になりたいです」

 水泳、柔道、陸上競技、バドミントン、ダンス、卓球、サッカー、ラグビー、レスリングなど多種多様な競技に取り組む実技授業や、ストレッチの授業も新たな知識として刷り込まれる日々。そして大学の「スポーツ推薦枠」で入学した河本は前回、リオ五輪から正式競技として復活した「ゴルフ」での東京五輪出場をあらためて強く意識するようになった。「ゴルフは素晴らしいスポーツである」ということを万人に知ってもらうために。

「ゴルフの世界では五輪を意識している選手は少ないと思います。でも、世間ではオリンピックは世界一を決める大会。だから私は日本代表として東京五輪に出たい。
 ゴルフを知らない人でも『ゴルフってこういう競技で、こういう選手がいるんだ』と思ってもらって、小さい子にゴルフをしたいと思えるように。若い人たちにもっとゴルフを知ってもらうためには、私が代表になって五輪で金メダルを取ることが必要だと思います」

 その時、ずっと熱を込めていた想いが沸点を超え、一気に口からあふれ出した。

単年プロ登録で臨む今季「この1〜2年が勝負」

17年8月のmeijiカップでベストアマチュアを獲得した河本。今季はプロ選手として、さらなるステップアップを目指す 【写真は共同】

 そして迎えた2018年。東京五輪まで残り2年余り。その場所に到達する可能性を高めるべく、彼女は昨年夏以降大きな決断を下している。プロテストの受験。そしてサードQT(クオリファイングトーナメント=予選会)進出で権利を得たTPD単年登録(単年のプロ選手登録)を申請した。
 新たなシーズンは日本体育大に籍を置く「大学生女子プロゴルファー」として、夢実現への第一歩を刻む。

「今年はステップアップツアーの全試合とレギュラーツアー8試合に出場できますし、前半のレギュラーツアーの成績次第では後半戦の全試合出場。また、レギュラーツアーで優勝できればLPGA正会員を得られるので、目の前の一打一打に集中したい」

 もちろん、その先に見据えるのは「2020TOKYO」。霞ヶ関カンツリー倶楽部を会場に戦う大舞台である。

「霞ヶ関は日本ジュニアでも毎年プレーしていた場所。この1〜2年が勝負なので死ぬ気で五輪に出られるように頑張ります。世界の1位を決める大会に出て、活躍して、愛媛県や松山市のみんなに喜んでもらいたいです」

 2020年には大学4年となる河本。愛媛が大好き、ゴルフが大好きな少女はさまざまな人たちの協力を自らのパワーに変え、金メダルへの階段を駆け上る。

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著者プロフィール

1971年、福井県生まれの東京都東村山市育ち。國學院久我山高→亜細亜大と進学した学生時代は「応援道」に没頭し、就職後は種々雑多な職歴を経験。2004年からは本格的に執筆活動を開始し、07年2月からは関東から愛媛県松山市に居を移し四国のスポーツを追及する。高校野球関連では「野球太郎」、「ホームラン」を中心に寄稿。

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