青森山田が紡ぐ「ナンバー10」の系譜 郷家友太が見せた有言実行ゴール

安藤隆人

決意を新たに臨んだ高校ラストイヤー

青森山田の選手権オープニングゴールを決めた郷家(右から2人目)。写真は2得点目の時のもの 【写真は共同】

 前回王者の選手権オープニングゴールはやっぱりこの男だった。

 1月2日に行われた第96回全国高校サッカー選手権大会2回戦・青森山田vs.草津東。共に初戦となったこの一戦で、ヴィッセル神戸に加入が内定している青森山田MF郷家友太は、0−0で迎えた前半37分、カウンターからMF檀崎竜孔の左クロスに飛び込み、ドンピシャヘッドを突き刺した。

 郷家は昨年7番を背負い、10番を背負った高橋壱晟(ジェフ千葉)と強力2シャドーを組んで、チームの快進撃を支えた。今年は高橋から10番を引き継ぎ、「壱晟さんのようにチームを勝利に導くゴールを決める選手になりたい」と新たな決意で高校ラストイヤーを迎えていた。

 今年は彼にとって「有言実行の1年」だった。決意を形にすべく、より積極的にゴールを狙うようになった。ボックス・トゥ・ボックス(自陣と敵陣)のアップダウンにも磨きがかかり、多少強引でもこじ開けていく姿勢は昨年にはなかったものだった。

 プレミアリーグEASTではゴールを量産し、終わってみれば得点王となる9ゴールをマーク。そして迎えた今大会、草津東戦でも有言実行を守ってみせた。

ハットトリックは惜しくもお預け

 前半37分、GK坪歩夢のロングキックの跳ね返りから左サイドのMF檀崎にボールが展開されると、郷家は瞬時に相手DFの状況を確認してゴール前のどこに飛び込むかの判断を下した。

「ニアサイドに(中村)駿太が入っていくのが見えたので、その動きに相手が絶対に付いていくと思った。なので、僕はファーに自然と流れてボールが来るのを待つようにした」

 ファーサイドへ駆け上がると、そこに檀崎からライナーのボールが届いた。

「正直、ボールがうまく見えなかった。相手の頭を越える瞬間しか見えなかった」。だが、持ち前の身体能力の高さを生かし、「絶対に決めるという気持ちが強かった」と、すぐに反応。185センチの身長を目いっぱい伸ばして頭に当てると、ボールはすさまじい加速力でゴールに突き刺さった。

「初戦だったし、入りは難しかったけれど、自分のゴールで流れが良くなったと思う」

 初戦の堅さを解きほぐす一撃でチームに勢いをもたらすと、後半8分にはゴール前の混戦から、浮き球のボールを巧みにコントロールしてシュート。ミートは弱かったが、コースが良かったことでボールはゴールに吸い込まれた。

 初戦でのハットトリックに期待が集まる中、3−0で迎えた後半20分に流れるようなパスワークで左サイドを崩すと、中村の落としに反応してシュート……。しかし、郷家が触れた直後に中村も反転して左足を振り抜いており、ツインシュート気味になったボールがネットを揺らした。このゴールは中村のゴールとなり、ハットトリックはお預けとなったが、5−0の大勝に導いたのは、間違いなく背番号10のプレーだった。

人を大きく成長させるナンバー10

「去年はある程度、先輩に頼っていたけれど、今年はチームを勝たせるという責任が出てきた」

 試合後、郷家はエースとしての自覚を口にした。これまで柴崎岳(ヘタフェ/スペイン)、神谷優太(2018シーズンより愛媛FC)、そして高橋と、そうそうたるメンバーが背負ってきたナンバー10には、人を大きく成長させる力がある。

「偉大な先輩が付けてきた番号なので、しっかりと結果を残したい。今日のように頭と足で点が取れることを見てもらいたい。連覇はかなり難しいことだけれど、目の前の1試合1試合を確実にやっていきたい」

 春からずっと自覚と信念を持って積み重ねてきた。だからこそ、今がある。すべてはゴールを奪って、チームを勝利に導ける選手になるため。

「試合前に『自分が点を取って試合を決める』と言っていたので、それができて良かった」

 一見、おとなしそうに見られるが、とても意志が固く、しっかりと自己主張できる人間だ。もちろん彼の主張はこれだけでは終わらないし、終わらせるつもりは一切ない。

 次なる相手はU−18日本代表のチームメートであり、今大会ナンバーワンストライカーの安藤瑞季(セレッソ大阪加入内定)を擁する長崎総合科学大附属(長崎)。間違いなく、最初の山場となるこの一戦で力を発揮できなければ、10番の意味とこの1年間の成長を示し切ったとは言えなくなる。

「次も絶対に決めます」

 さらに深まった自覚と責任感を持って。郷家友太は3回戦に臨む。
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著者プロフィール

1978年2月9日生まれ、岐阜県出身。5年半勤めていた銀行を辞め単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は35を超える。2013年5月から2014年5月まで週刊少年ジャンプで『蹴ジャン!』を1年連載。2015年12月からNumberWebで『ユース教授のサッカージャーナル』を連載中。他多数媒体に寄稿し、全国の高校、大学で年10回近くの講演活動も行っている。本の著作・共同制作は12作、代表作は『走り続ける才能たち』(実業之日本社)、『15歳』、『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、『ムサシと武蔵』、『ドーハの歓喜』(4作とも徳間書店)。東海学生サッカーリーグ2部の名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター

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