「東洋カラー」が青学大をねじ伏せた 駒大OB神屋氏が箱根駅伝往路を解説

構成:スポーツナビ

東海大から失われた自信

“黄金世代”2年生を擁し優勝候補にも挙げられた東海大は往路9位に沈んだ 【赤坂直人/スポーツナビ】

――優勝候補と目された東海大は下位に沈みました。東海大は“黄金世代”2年生エース格の關颯人選手が欠場した影響もあったのでしょうか。

 三上嵩斗選手(3年)もしっかりと準備をして出てきたとは思いますが、東海大の選手からは出雲駅伝のときのような自信、元気を感じませんでした。

 東海大は層も厚いのですが、絶対優勝できるという状態では臨めていなかったと思います。そうなると「らしさ」が出せないんですよね。同世代にすごいメンバーがそろって、すごい元気に暴れてくれるイメージなのですが、今大会はその元気がちょっと出せていないのかなと。

 ベストメンバーを組めない時というのは、不安が大きくなるんです。それが出たのではないでしょうか。

――同じく優勝候補だった神奈川大が15位に沈み、一方で城西大と拓殖大は健闘しました。

 上位の大学に取りこぼしがあったこともあるのですが、今回東洋大がものすごく速く突っ走った割には、タイム差はそこまでついていないんです。3位までが2分差で、4位からシード権争いの14位まで、(トップの東洋大と)5分弱〜8分差までにまとまって入る混戦模様です。

 調子が良かったり期待されていた選手が好走すると流れを掴んで上位にきて、反面、神奈川大の5区のトラブルのように、調子が良くなかったチームが一気に下位に沈んでいきました。

 過去と比べると、持ちタイムの上位〜下位チームの差は縮まりました。ビッグネームや過去の実績ですごく差があるように感じるかもしれませんが。

 箱根駅伝に調子を合わせる、というのはとても難しいことです。うまくいったチームが上位に、できなかったチームは苦しみ、大きな順位変動がうまれたのでしょうか。明日もシード権争いを含めて、すごく混戦が予想されます。

復路を左右する青山学院大・下田の配置区間

5区で36秒差に詰め寄った青山学院大の竹石。4年連続の総合優勝へ、復路で逆転を目指す 【赤坂直人/スポーツナビ】

――総合優勝の懸かった復路のポイントはどこでしょうか?

 東洋大が往路のようなレース運びを復路でもできるかどうか、青山学院大が下田選手をどこに投入するのかがカギになるでしょう。往路でしぶとく堅実に走ってきた早稲田大も、タイム差は約2分なのでチャンスはあります。早稲田大は3位キープを狙うか、より上位を狙うかで展開が変わるでしょうね。

――カギのひとつである青山学院大のエース、下田選手の投入区間をどう読みますか?

 山下りの実績がある小野田選手が6区に控えているので、堅実に考えれば9区に配置して優勝を決めにいきます。ただ8区に置いてきたらとんでもないですね。9区に入る前にレースが決まってしまうかもしれません。

 9区に置いた場合、東洋大が往路のようなレース運びをして2位に2分差などをつける展開になると、もしかしたら追いつけないままゴールしてしまうかもしれません。青山学院大としては早いうちに前に立ちたいのだとすれば、下田選手を8区に置いてくるのかなという感じがします。

 他校にしてみると下田選手が復路のどこに配置されるか分からないのは恐怖だと思うのですが、東洋大は気にせずオーダーを組んでくるかもしれません。指揮官の読み合いですね。

 往路では青山学院大のエース田村選手に対して、実力者の山本選手がいい走りをしたことで、田村選手の快走を呼び込みませんでした。復路では、下田選手に対抗できるだけの選手が東洋大に残されているか、という点が大きい分かれ目になるでしょうね。

――シード権争いの見どころは?

 混戦模様で難しいですが、11位の中央学院大は「復路にメンバーを残している」という川崎(勇二)監督のお話もあり、注目です。
 また箱根ファンとしては、監督同士の世代間対決も楽しみです。13位駒澤大を率いる大八木(弘明)監督、15位神奈川大の大後(栄治)監督、16位山梨学院大の上田(誠仁)監督は、90年代後半に「YKK」と箱根路を沸かせた頃からチームを率いています。その「YKK」の頃に選手だった若手監督が率いるのが、長門(俊介)監督の順天堂大(8位)と、藤原(正和)監督の中央大(10位)、前田(康弘)監督の国学院大(14位)です。

 新旧交代か、それともベテランの意地で「YKK」がシード圏内に浮上するのか、そういった視点でも楽しんでいただければと思います。

――最後に、今大会エントリーから外れてしまった関東学生連合チームの近藤秀一(東京大3年)、相馬崇史(筑波大1年)両選手について、メッセージはありますか?

 とても残念なのですが、その代わりに矢澤健太選手(芝浦工業大4年)が起用され、芝浦工大としても初めての箱根ランナーが誕生しました。3区の田部幹也選手(桜美林大3年)も同大学初の箱根ランナーです。チームの結果としては良くなかったかもしれないですが、関東学生連合チームの趣旨である「多くの大学、選手に出場機会を与える」を考えればよくやったのではないでしょうか。

 近藤選手はここまでいろいろと話題にもなり、今回欠場となりましたが、彼の功績はこれからも関東学生連合チームに伝わって今後に生かされていくと思います。これで気落ちせずに、もう1回頑張って来年チャンスがあれば活躍してほしいですね。

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