地域活性化のために「スポーツ」は必要か 事例から考えるエリア価値の高め方

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提供:(公財)日本ラグビーフットボール協会

ワンタイムイベントの成功例はロンドン五輪

松田氏はワンタイムイベントの成功例として、12年のロンドン五輪を例に挙げた(写真は閉会式のもの) 【写真:代表撮影/ロイター/アフロ】

 講演に続いて、来場者と松田氏の質疑応答が行われた。以下はその要旨。

――海外も含めて、W杯のようなワンタイムイベントの成功事例はどのくらいあるのか?

 1つの事例はロンドン五輪です。もともと工業地帯、開発されていない土地を活用してやっていましたので、五輪が終わった後はそこを住宅地にするということと、公園を作るということで、計画的に決めて実行していました。

(1964年の)東京五輪もうまくいった事例として挙げられます。“東洋の魔女”(金メダルを獲得した女子バレーボールチームの愛称)という形で、女性が頑張っているところを女子バレーボールを通して見せることで、バレーボールはこの後「ママさんバレー」というレガシーを残しました。

 また長野県にある野沢温泉村も、インタースキーという国際大会を誘致し海外とのネットワークを作りました。そこで関係性を構築し、継続メンテナンスをしたことが、現在のインバウンドの増加に非常に生きていると思います。

日本人は「物事を教育的に仕立て上げる能力」が高い

19年に行われるラグビーW杯。日本がそこですべきことは何だろうか 【写真:ロイター/アフロ】

――19年のラグビーW杯、または20年の東京五輪で日本がやるべきことは?

 僕の個人的な考えですが、やはり日本という国のことを考えると、キーワードは「教育」だと思っています。観光はもちろんですが、その中で教育でのインバウンドもあるのかなと思います。

 例えばの話ですが、僕は港区の学校は全部イングランドの学校と提携するくらいのことをしてしまってもいいのではないかと思います。ラグビーを使って交流したり、マナーや規律を学んだり、あるいはさらにマインドセットを高める。そのために体育の授業は必修でラグビーを導入する。けがの問題があれば、タグラグビーなどもあります。

 スキルを磨いていくプロセスや、交流を通してどんなマインドセットを身に付けていくのかというのが一番重要です。このように「スポーツを心の在り方を学ぶ場として深く考える」ということは日本人にしかできません。こんなに狭い国土に、「資格」が乱立していることからことからも分かるとおり、日本人というのは本当に自らを高めることに熱心で、「物事を教育的に仕立て上げる能力」も同時に非常に高い。(ラグビー発祥の地である)イングランドでは、ラグビーはマナーや規律を身に付ける場として発展してきましたが、日本ではそれをさらに超えた教育価値が提供できると思います。

 教育という意味で、ぜひ港区の皆さんに紹介したいものがあります。それはスポーツや芸術を教材の根幹に据えた「ボーディングスクール(全寮制学校)」です。僕が調査したのは米国ですが、現在国内に400校ほどあり、対象は日本で言えば、中学2年生から高校3年生まで。生徒は米国人だけでなく、世界各国から集まっており、全員で共同生活を送っています。この学校の目的は「社会奉仕のできる人材育成」であり、過去にはジョン・F・ケネディやビル・ゲイツ、新島襄などの著名人を輩出しています。

 現在、日本にもボーディングスクールが数校ありますが、残念ながらスポーツや芸術に重きが置かれていません。またそもそも実はこれは単体の存在だけでは目的を全うできません。リーグ制や3シーズン制を組み、いろいろな学校といろいろな種目で対抗戦を行い、交流を図ることでさまざまな「立場」を体験していくことに意味があるんです。もし港区でそういうものを作れたら、それを地方創生に使ってほしいと思っています。国内外のさまざまな市町村と実質的な姉妹都市提携などを結んで、世界と日常的に交流することができれば価値が高まると思います。

 そもそも、日本の場合は公教育が優れていますから、米国では完全プライベートであるボーディングスクールレベルのものを、もしパブリックにやることができれば、すごいことになるんじゃないでしょうか。そういった意味では今回、世界中の方々との関係を構築できるラグビーW杯は、世界の中で「こんな都市になっていきたい」というビジョン・構想を実現していくための千載一遇の機会であり、そのための手段となる最高の場であると思います。

あなたにとってラグビーとは?

ラグビーに関して「人材育成」のイメージが強いと語った松田氏 【スポーツナビ】

「人材育成」というイメージを強く持っています。僕自身がやっていたわけではないですが、やりたいと思うスポーツです。

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