横浜DeNAランニングアカデミーの役割 国近監督「『走り』を学べる学校に」

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横浜DeNAランニングクラブが開校したアカデミーの役割について、トップチームの国近友昭監督に話を聞いた 【スポーツナビ】

 どんなスポーツにおいても「走る」という行為は、競技力向上に重要な要素を含む。しかし、学校生活における体育の授業などでは、「走る」方法やメカニズムを学ぶことは非常に少ないのが現状だろう。

 そんななか、陸上長距離の実業団チームである「横浜DeNAランニングクラブ」が2016年4月に開校したのが「横浜DeNAランニングクラブアカデミー」だ。小中学生を対象としたランニングクラブで、走ることや体の動かし方を専門のコーチから学び、スポーツが好きな子どもの育成を目指している。また特に長距離種目に関しては、専門的に学んで競技力を向上させるプログラムを行っている。

 今回は「横浜DeNAランニングクラブ」のトップチームを預かる国近友昭監督に、アカデミーへの感想や、今後の活動に期待することを聞いた。

陸上に興味がある子が集まっている

アカデミーに参加する子どもたちは親も含め、陸上への熱い思いが見られる 【写真提供:横浜DeNA Running Club】

――横浜DeNAランニングクラブでは昨年から小中学生を対象にしたアカデミーを開校していますが、トップチームの監督としてどのように関わっていますか?

 指導などを直接することはないのですが、トップチームの合宿の際、アカデミーの活動とタイミングが合った時にはご一緒させていただき、話をさせていただく機会などがありました。

――アカデミーの印象というのはいかがでしたか?

 わざわざ練習場まで足を運んで来ているので、子どもたちもそうですが、ご両親の陸上に対する思いが大きいですね。
 年に1度、クラブ全体として懇親会があります。アカデミーの子供は小中学生のため、最初は恥ずかしがってなかなかコミュニケーションをしてきませんが、なじんで話す機会が増えると、陸上のことをいろいろ知っていて、このスポーツが好きなんだなと感じます。トップ選手の出身大学や箱根駅伝で何区を走ったかとか、そのような情報にも詳しいので、本当に陸上競技に興味がある子たちなんだなと感心しました。

アカデミーにおける成功体験とは?

合宿の際には子どもたちの前で現役時代の経験を話す機会もあった 【写真提供:横浜DeNA Running Club】

――国近監督から見て、子どもたちにはアカデミーでどんな点に触れて欲しいですか?

 小中学生なので、まずは技術的なものより、競技の楽しみや喜びに触れて欲しいですね。普通に生活をしているとなかなか味わえないのですが、練習で達成することはうれしいと思うし、小さくてもいいので、いろいろな成功体験を得られることがすごく重要かと思います。

――夏合宿の際にはアカデミー生徒の前でお話をされたとのことですが、どんな話をしたのでしょうか?

 そこではより具体的といいますか、自分自身が競技をやってきた中で、オリンピックに出場するまでの話をしました。また今後のチームのあり方だったり、方向性を伝えました。

――アカデミーの生徒たちと横浜DeNAのトップチームの選手との交流もあると聞きましたが、選手たちはそのような場面でどんな面を見せていましたか?

 トップチームの選手にとっては、陸上競技を続ける中で、ある意味、初心に帰れるといいますか、自分を介して子どもたちに教えたり、話したりすることで、自分を振り返る機会になっているようです。当然ながら普段は競争ばかりしていますが、子どもたちに話すことで競技をやり始めたきっかけ、なぜ続けてきたのか、競技を続けることの根本を思い出し、それがすごくいい経験になっています。まだまだ純粋な子どもたちに話をすることで、それぞれが勉強し、競技を客観的にとらえられることで、選手たち自身が気づきを得ていると思います。

――国近監督は04年アテネ五輪にも出場されていますが、その話に対する生徒達の興味の示し方はどうでしたか?

 オリンピックに関しては、まだ遠すぎて自分には重ならないというところでしょうか。僕らが少年野球をやっていた頃、プロ野球の選手を見て、「おっ」と思うのと同じぐらいの感覚だと思います。もちろん早く意識付けさせたほうがよい子もいますが、そういう子の方が少ないですね。

――そうなるとアカデミーにおける成功体験というのは、大きな大会に出ることというよりも、レースの楽しみ方やタイムを縮めるなどといった部分になるのですね。

 そうですね。そういう部分と今までできなかった練習ができるようになるとか、記録会で自己ベストが出たとか。それがすごくうれしいことでしょうし、彼らにとってはそれが一番の喜びだと思います。

将来的には「走り」を学べる学校に

どんなスポーツをするに関わらず、「走ること」をこのアカデミーで学んで欲しいと話す 【スポーツナビ】

――学校教育の中では「走り」について教えてもらう機会はなかなかありませんが、アカデミーで基礎を学べる重要性はどんな部分でしょうか?

「走る」ことには動きの技術があります。また小学生、中学生の方が神経的な発達の部分で習得しやすかったりします。ですから、その部分を教えてあげるのはすごく重要な点です。また競技中のケガに関しても、本人ももちろんそうですが、ご両親でもスポーツをやっていない人にはその原因が分からないと思います。それを経験のあるスタッフが教えられます。長い目で見た時、陸上競技に進むにしても、ほかのスポーツに進むにしても、ランニングはどんなスポーツにおいても基本ですし、そこを経由するのは大事だと思います。

――アカデミーに関しては今年で2年目となりますが、国近監督としては今後どうなって欲しいと思っていますか?

 私自身は、アカデミーを経由して、子どもたちにいろいろなスポーツで活躍して欲しいと思っています。走ることはどんなスポーツにおいても基本です。野球でも、サッカーでも、いろいろなスポーツをやりつつも「走ること」はここで学びたいというアカデミーになってほしいです。そして将来、プロ野球やJリーグなどほかのスポーツで活躍してくれたらいいなと思いますね。もちろん陸上のトップチームに来てくれてもうれしいです。
 この世代はどのスポーツでも、1つの核となる、これから道が開けていく時期です。これからどうなるかまだ分からない時期なので、ここで走ることを学び、その先にスポーツを専門的にやってくれればいいなと思います。

――「走りの学校」のような形になればということですね。

 そうなるといいですね。その中で、高校でも陸上をやる子もいるけど、ほかの競技の子もいる。さまざまなスポーツに取り組む子どもたちにとって大事な中核を担うようなアカデミーになれれば、より価値は高まると思っています。それには専門性やスタッフも必要だと思いますし、アカデミーでやるべきことはたくさんあると思います。その存在価値はあると思いますので、行ってみようと思う子供が増え、ここからいろいろ発信できればと思います。
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