DeNA公式ドキュメンタリーを見た! ともに戦うファンもまた物語の登場人物
クライマックスシリーズで広島を破り、日本シリーズ進出を決めて抱き合うラミレス監督と主将の筒香 【写真は共同】
試写会に足を運ぶ際の気持ちを率直に言うと「どきどき」も「わくわく」もない。なぜなら、この映画の“結末”は誰もが知っているからである。そこにあるのは「よし、見るぞ」というベイスターズファンとしての燃える使命感のようなものだ。
キャプテン筒香嘉智の物語
だが、普段の筒香はガキ大将そのもの。例えば脇腹を負傷してテーピングも痛々しい柴田竜拓に、あれやこれやとちょっかい出す。その姿はまさに“ジャイアン”で、いじられキャラの柴田に至っては“しば太”と呼びたくなるほどの怯えっぷりを見せる。しかし、そんな柴田を裏でこっそり呼び出し、苦境での心構えを説き、励ますキャプテン。ふたりの絆は、柴田の部屋のドアに貼られた“3枚の紙”、そして「すごい先輩です」と笑顔で語る彼の様子からしっかりと伝わる。
これはこれで劇場版が見てみたい 【イラスト:カネシゲタカシ】
「プロも和で勝つ」、これでいいのだ
投手陣は「小さな大魔神」こと山崎康晃のストーリーを中心に語られるが、クローザーの座から陥落した彼の涙は、あの普段のはち切れんばかりの笑顔を知る人間ほど心が揺さぶられるだろう。かと思えば、クールな顔でボケ倒す今永昇太を見て「そういえばドラフト指名後の会見で『ゲッツ』をやりまくった男だった」と思い出したり、そんな今永が勝っても負けても涙する様子を見て「なんて熱いやつだ」と心つかまれたり。
そして、不振にあえぐ桑原将志を「あいつが暗くなると大変」と笑いながら励ます小川博文コーチの気遣いや、2軍落ちするセットアッパーを「また10日後」と、さり気なく見送るロッカールームの友情にも心打たれる。さらに宮崎敏郎&梶谷隆幸の同級生凸凹コンビの友情、正捕手の座を争いながらも深い絆で結ばれた捕手3人組(戸柱恭孝、嶺井博希、高城俊人)の友情を見ては「ああ、ベイスターズっていいチームだな」と心底思わせてくれる。
かつて西鉄(現・埼玉西武)を率いた名将・三原脩は「アマは和で勝ち、プロは勝って和となす」という言葉を残した。しかし、時代は変わった。「プロも和で勝つ」。これでいいのだ。