DeNA公式ドキュメンタリーを見た! ともに戦うファンもまた物語の登場人物

カネシゲタカシ

歓喜と苦悩、そこにあるのは徹底したリアル

ビールかけでは多くの選手が筒香にビールを浴びせた 【写真は共同】

 ベイスターズという球団には奇跡がよく似合う。そして今年ほどさまざまな奇跡が巻き起こったシーズンも珍しい。8月22日の広島戦、プロ野球史上初となる3者連続ホームランによるサヨナラ勝ちのシーンでは、選手自らの口から「奇跡」「伝説」という言葉が突いて出た。

 また、CS出場を決めた10月1日の広島戦では、5回7失点の先発・ウィーランドがホームランを含む3安打4打点の活躍でCS出場を決めるというデタラメな奇跡。そしてこの日、同じくホームランを放った筒香のバットにも、ちょっとした“奇跡”が舞い降りていた。これはぜひ作品のなかで見てほしい。

 CSファーストステージ、泥だらけの甲子園で勝ったのも奇跡。ファイナルステージで史上初となる2敗からの逆転勝利を決めたのも奇跡。そうそう、日本シリーズ第6戦の指名打者・白崎浩之のホームランもまた奇跡だった。グラウンドを一周したあと、ベンチ裏で“ある言葉”を連呼する白崎。苦しんだシーズンに一矢報いた安堵(あんど)とともに、「ベイスターズ、日本シリーズ3連敗からの奇跡の逆転優勝」を確信したがゆえの、あの言葉だったのではないか。

 しかし、この映画の“結末”は誰もが知っている。最後に奇跡は起こらなかった。いきなり突きつけられる「敗退」というリアル。去年と同じように、また戻るべき場所ができた。

球団との絆を深める“儀式”である

 3位からの日本シリーズ進出、そして敗退――。ただただリアル。今年のベイスターズを夢中で追いかけた者ほど、手に汗握ることはないだろう。しかし、夢中で追いかけた者ほど、手にする果実の多い作品だ。この映画を見ることは、長いシーズンを「ああ、そうだった」と再確認しながら、舞台裏をのぞき見ることで体験を立体的にしていく、ある種“儀式”のような行為である。

 そしてこの“儀式”が、見るものとベイスターズの絆を一層強くする。ベイスターズが、野球が、もっと好きになる。ベイスターズに夢を乗せ、ともに戦ってきた自分は間違っていなかったと思わせてくれる。そして「また来季も応援しよう」と心に誓わせてくれる。その声援を受けた選手が奮い立ち、もっとベイスターズは強くなる――。

 エンドロールに流れる全選手、監督、コーチ、スタッフの名前の最後に、心のなかで「AND ME」を付け加えた。われわれファンもまた『FOR REAL』という物語の登場人物なのだ。

 張りめぐらされた伏線を回収する旅はまだまだ続く。来年はより楽しい航海になりそうだ。エンドロールのあとのワンショット、ラミレス監督のあの優しい微笑みを見てそう確信した。

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著者プロフィール

1975年生まれの漫画家・コラムニスト。大阪府出身。『週刊少年ジャンプ』(集英社)にてデビュー。現在は『週刊アサヒ芸能』(徳間書店)等に連載を持つほか、テレビ・ラジオ・トークイベントに出演するなど活動範囲を拡大中。元よしもと芸人。著書・共著は『みんなの あるあるプロ野球』(講談社)、『野球大喜利 ザ・グレート』(徳間書店)、『ベイスたん』(KADOKAWA)など。

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