「サッカーを続けたい」それぞれの想い トライアウトで感じた現役へのこだわり
トライアウトで実現した元日本代表のCBコンビ
川崎との契約を終えた井川(53)と大分で出番がなかった坂井がCBコンビを組む 【宇都宮徹壱】
井川も坂井も、キャリアとしては「元日本代表」の肩書を持っている。井川は岡田武史監督時代の08年に初招集されるも出番なし。一方の坂井は「左利きのCB」という希少性を買われ、14年にハビエル・アギーレ監督の初陣で代表デビューを果たすも、その後は招集されることはなかった。そんな自身のキャリアについて、「悪目立ちするかもしれないですね」と苦笑する坂井。次の移籍先については「地元が九州なので、サッカーで地域貢献できるのであれば地域リーグでも」と、カテゴリーよりも地域へのこだわりを感じさせるコメントを残している。
一方、「(自分は)アウォーズとトライアウトに出た唯一の選手じゃないですかね」と語るのは井川だ。確かに、悲願の優勝を果たした3日後にはアウォーズでJFA会長杯を受け取り、さらにその2日後にはトライアウトに参加しているのは彼くらいだろう。Jリーグの光と影を体感するかのような、あまりにも振幅の激しい日々については「優勝は悲願だったのでうれしかったですが、自分は来年がないことを知っていたので」と複雑な思いだったことを告白。それでも「まだサッカーを続けたいし、サッカー人として貢献できるという想いにブレはありませんでした」ときっぱりした口調で語った。
トライアウト参加者のコメントに耳を傾けると、「今日は楽しかったです」とか「やっぱりサッカーが好きなので続けたい」といった共通するフレーズに気づく。多くの参加者が、所属チームでの出番が限られていただけに、思い切りプレーできる場を与えられて意気が上がるのは当然だろう。だが、おそらく今年も参加者の4分の1ほどは、そのまま引退を決断せざるを得なくなるはずだ。いみじくも木島が「引退試合だと思って」と語っていたように、このトライアウトをセカンドキャリアに踏み出すきっかけと捉えている参加者も少なくない。次のプレーの場が与えられる者、そしてスパイクを脱ぐ者。いずれも平坦な道ではないだろうが、その場に立ち会った者として心からのエールを送りたい。