新時代到来を予感させるマンCの躍進 グアルディオラ体制で生じた3つの進化

田嶋コウスケ

解説者も絶賛するグアルディオラの指導効果

サッカーIQの低さが課題とされてきたスターリングだが、グアルディオラの指導により目を見張る成長を見せる 【Getty Images】

 2つ目の理由は、選手の成長にある。

 筆頭格は全盛期のスティーブン・ジェラードを彷彿(ほうふつ)とさせるダイナミックなプレーで、ゴールとアシストの決定的な仕事をこなしているデ・ブライネ。覚醒した感のあるベルギー代表MFを「プレミア前半戦のMVP」に推す声は少なくない。

 その他にも、中盤の底を支えるフェルナンジーニョ、テンポ良いパス回しで攻撃のリズムを生むD・シルバ、ゴールに直結する動きが増加中のサネなど、昨シーズンを上回る好パフォーマンスを見せている選手を挙げていけば、枚挙に暇(いとま)がない。

 また、ウィンガーのスターリングの成長も見逃せない。開幕前の夏キャンプでは、22歳のイングランド代表MFに身振り手振りを交えて熱心に指導するグアルディオラの姿があった。サッカーIQの低さが課題とされてきた彼だが、ボールを見る角度や体の向き、スペースに飛び込むタイミングなどをこと細かく教える指導が功を奏し、より危険度の高い選手へ進化した。元アーセナルで現在は解説者を務めるマーティン・キーオンも「グアルディオラの指導を通して、選手たちは日々鍛錬している。選手はトレーニングが楽しくて仕方ないはず」と、元選手の視点からその指導効果を指摘している。

 最終ラインに目を向けても、近年は慢性的なけがに苦しむバンサン・コンパニのコンディションが万全でなく、シーズン開幕前は「ディフェンスが不安」との声が多かった。しかしふたを開けてみると、23歳のDFジョン・ストーンズが急成長。昨シーズンまで散見された軽率なミスが激減し、盤石の守備で最終ラインを支えている。加えて、センターバック(CB)でコンビを組むニコラス・オタメンディも安定感が上昇。例年通りコンパニは医務室とピッチを行き来しているものの、彼らの台頭で最終ラインに不足感は見えない。

 実際、吉田も「オタメンディやフェルナンジーニョはもともと能力が高かったけれど、今シーズンはさらに良い選手になっている。グアルディオラ監督のすごさが出ている」と、シティの選手たちの急成長に舌を巻いていた。

“マンチェスター・ダービー”は今後を占う大一番に

シティの勢いはいつまで続くのか、“マンチェスター・ダービー”は今後を占う大一番となる 【Getty Images】

 3つ目の理由として挙げられるのは、新戦力の活躍だろう。代表的なのがブラジル代表GKのエデルソン。DFラインを高い位置に設定するシティでは、GKに最後尾のフィールドプレーヤーとして振る舞うことが求められる。そんな中、足元の技術に長けるエデルソンは、質の高いボールフィードでチームの屋台骨を支えている。

 前述のサウサンプトン戦でも、バックパスに反応した敵のプレスを、MFのような柔らかいボールタッチでかわし、攻撃の起点として正確にパスを出していた。シュートストップ率も高く、対峙(たいじ)した吉田は「GKのエデルソンは非常にうまい。GKとしてのスキルはもちろん、落ち着き払っていて、プラスアルファの能力を感じた」と驚いた様子で褒めちぎっていた。昨シーズンは正GKのクラウディオ・ブラボが不用意なミスを繰り返しただけに、エデルソンの加入はウイークポイントを払拭する理想的な補強になった。

 そんな充実感を漂わせながら連勝街道を突っ走るシティにとって、10日に行われるユナイテッドとの“マンチェスター・ダービー”は文字通り大一番となる。この試合で2位のユナイテッドに勝利すれば、両者の勝ち点差は11ポイントまで広がる。勝ち点差をこれ以上広げないためにも、ユナイテッドは守備重視の戦術を採用すると見られるが、シティはこの壁をどう打ち破っていくか。

 対戦時にレスターの岡崎慎司が「昨シーズンよりチームとして成熟している。デ・ブライネがすごかった」と絶賛すれば、吉田も「(プレミアで)ちょっと抜けている存在」と素直に強さを認めていたシティ。ユナイテッドを撃破すれば、ペップ体制の強さは間違いなく本物だろう。

 果たして、彼らの快進撃はどこまで続くのか。そして、今シーズンの行方とプレミアリーグの今後を占う意味でも、今回のマンチェスター・ダービーは要注目である。

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著者プロフィール

1976年生まれ。埼玉県さいたま市出身。2001年より英国ロンドン在住。サッカー誌を中心に執筆と翻訳に精を出す。遅ればせながら、インスタグラムを開始

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