ハリルジャパン、対戦相手の攻略法は? “本命不在”のグループHは白熱必至

清水英斗

キーポイントはラインの設定

ハメス・ロドリゲス(左)やファルカオ(右)のいるコロンビア戦では、高いラインとアグレッシブなデュエルを期待したい 【Getty Images】

 混沌のグループH。地味な組み合わせだが、味わい深いポイントは意外に多い。もっと詳しくシミュレーションしてみよう。

 守備から入るハリルジャパンのゲームプランを踏まえると、ハイプレス、ロープレス、ラインをどこに設定していくか。これらはキーポイントになる。

 第1戦のコロンビアは、パワフルにクロスに飛び込んでくるD・サパタとファルカオ、あるいはハメス・ロドリゲスのミドルシュートや意表を突いたスルーパスなど、ゴールに近づけさせると、危険な選手ばかりだ。11月のベルギー戦では、FWロメル・ルカクを「ゴールから遠ざけるようにした」(槙野智章)と、ラインを高く上げて守備をしたが、コロンビア戦でも同様の方針が求められるだろう。

 できるだけ前から、アグレッシブに――。11月には韓国がコロンビアと対戦し、2−1で破っている。ホームということもあり、韓国はアグレッシブに戦い、2トップがサイドへ流れる動きを中心に相手を押し込んだ。コロンビアはメンバーを入れ替えていたため、結果自体はともかく、韓国の戦い方は参考にできるものだった。

 ただし、ラインを高く保てば、脅威となるのは右サイドのMFクアドラードだ。縦を突くのが得意なプレーヤーで、裏にスペースが空く状況を最も好むのはこの選手だろう。しかし、日本にとって幸運なのは、対面するポジションに長友佑都がいること。ユベントスとインテルの対戦でマッチアップし、封じたこともある長友を“守り神”として、日本はアグレッシブに戦うことができるのではないか。コロンビア戦は、高いラインとアグレッシブなデュエルを期待したい。

 一方、第2戦のセネガルに対しては、あまり高い位置から行き過ぎると、より危険が増す。FWマネのスピードは本当に驚異的で、スペースを与えると誰も追いつけない。ラインを斜めに横切り、よりゴールに対してダイレクトに飛び出す動きを得意とする。オフサイドに何度かかっても、その際どいタイミングで動き続け、そのうち1回でも成功すればGKと1対1。実に恐ろしい選手だ。低めにラインを設定し、セネガルにボールを持たせ、背後のスペースを消すことが重要になるのではないか。

ポーランドは戦術的にはいちばん難しい?

短期大会でいちばん大事なのは“初戦”。ハリルホジッチはどのような準備を行うだろうか? 【写真は共同】

 3戦目のポーランドは、コロンビアやセネガルとは毛色の違うチームだ。何といってもパワーと繊細なテクニックを兼ね備えたFWロベルト・レバンドフスキ(バイエルン)は強力な選手だが、そのエースのポストプレーを軸に、中盤の小柄な選手たちは豊富な運動量でかき回してくる。

 レバンドフスキの特徴を考えれば、やはりコロンビア戦同様、ゴールから遠ざけて高いラインを保ちたいが、沸き出すように人数をかけてくるポーランドの組織的な攻撃は、エースストライカーを追い越し、背後のスペースを食おうとするだろう。ポーランドは、コロンビアやセネガルとは異種の脅威がある。特にハリルジャパンはマンツーマンで守るチームだけに、運動量でかき回されると、守備の混乱が大きい。実はポーランド、戦術的にはいちばん難しい相手かもしれない。

 この3戦目は別枠で考えたほうがいいだろう。元々ハリルホジッチは、本大会でターンオーバーを行う方針を示唆している。連続した3試合において、疲労を考慮し、選手を入れ替えて戦う。それはアルジェリア監督時代も同様だった。コロンビア戦からセネガル戦が中4日であるのに対し、セネガル戦からポーランド戦は中3日と休養が短い。しかも、ポーランド戦が行われるボルゴグラードは、やや暑い環境になる可能性もある。日程的にも気候的にも、さらにポーランドのスタイルを踏まえても、第3戦はコンディション重視で大胆にターンオーバーするのではないか。

 グループHは本命不在。日本が最下には違いないが、突破する2チームを読みづらいグループであることは間違いない。メディア的なキャッチは付けづらいが、サッカー的には白熱。そんなグループHだ。

 これから半年の間、おそらく100回は耳にするだろう。短期大会でいちばん大事なのは“初戦”だ。結果はもちろん、ここで腰の引けた戦い、統一感のない戦いをすると、2戦目、3戦目に尾を引く。ゆめゆめ、11月に行ったブラジル戦の前半のようにはならぬよう。コロンビアへのリベンジマッチに存分に燃えようではないか。せっかく、サッカーの神様がシンプルなモチベーションを与えてくれたのだから。

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著者プロフィール

1979年12月1日生まれ、岐阜県下呂市出身。プレーヤー目線で試合の深みを切り取るサッカーライター。著書は「欧州サッカー 名将の戦術事典」「サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術」「サッカー観戦力 プロでも見落とすワンランク上の視点」など。現在も週に1回はボールを蹴っており、海外取材では現地の人たちとサッカーを通じて触れ合うのが楽しみとなっている。

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