ハリル「自らA代表に名乗り出てほしい」 EAFF E-1サッカー選手権 メンバー発表

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最終的なリストを作成するには不確定な要素が多い

W杯に向けての最終選考の面では「不確定な要素が多い」とハリルホジッチ監督 【スポーツナビ】

――金崎に関して、以前、所属チームで監督と衝突することがあり、ハリルホジッチ監督も厳しい評価をしていたと思う。最近の金崎の評価はどう変わったのか。選出するに至った経緯を教えてほしい。

 金崎の場合はクラブでの不適切な行動が過去にはあった。代表監督としてもそこはあまり評価できない。しかしそれは過去のことであり、私も忘れている。今現在、文句のつけようのないパフォーマンスを見せているので招集した。以前、招集しなかったのも、クラブで監督との衝突があったからという理由ではない。杉本、興梠(慎三)、小林などと彼はポジション争いをしているわけだが、他の選手たちの方がより多くの得点を取っている。

 もちろんそういった行動がよくないということは、本人とも話をしている。そういったところも許しながら、前進し続けていかなくてはいけないと思っている。優勝する可能性のあるチームでいいパフォーマンスを見せているというところで招集している。先ほども話したが、相手とのデュエルでアグレッシブにいける珍しいタイプの選手。私は杉本も興梠も小林も、夢生のようなアグレッシブさを身に付けてもらいたいと思っている。

――先ほどの発言の中の「代表として何が必要で何が足りないかを考えた」という部分について、もう少し具体的に教えてほしい。

 代表に何が足りないのかというところでは、前線でも中盤でもディフェンスでもある。例えば、ディフェンスに足りないもの、中盤に足りないもの、前線で足りないものは、ブラジル戦、ベルギー戦という2つのテストではっきり見られたと思う。分析すればたくさんのものが見られる。すべての面で、そしてすべてのポジションで改善、成長が必要だと思う。来年のW杯に向けての6カ月間は非常に重要な期間だ。精神面でもこの2試合でたくさんのフィードバックを得ることができた。

 W杯で戦うとき、弱点があればそれが試合で出てしまう。だからわれわれも改善しなくてはいけない。例えば、アグレッシブさが足りない場面があったりする。それは前線でも、最終ラインでも同じだ。あとはコミュニケーションの部分も改善しなくてはいけないし、メンタル面ではより自信を持ってやらなくてはいけない。例えば、ブラジル戦でも、立ち上がりの20分間と後半ではまったく選手たちの姿が違った。立ち上がりはひどいとは言わないまでも、少し相手に圧倒されていた。もちろんブラジルに勝つことは非常に難しいことだが、後半の戦いであと2点取っていてもおかしくなかった。(オフサイドの判定により)取り消された2点目はゴールだったのではないかと思う。このようなチームと対戦するときも「今日は負ける」と言ってはいけないし、勝ちにいかなければいけない。

 そしてベルギー戦はまったく違う姿があった。非常に冷静にプレーできていたと思う。ただ、決定力に問題があると思った。たくさんの決定機があったけれど、そこでの決意、自信が欠けていたからなのか、最終的に相手にとって危険な場面にならなかった。W杯ではあのように5〜6回も決定機が訪れるわけではない。2〜3回のチャンスで点を取らなければならない。だからこそ、攻撃の場面で決定力のある選手が必要なのだ。ストライカーというのはどのチームにとっても不可欠だ。格上と言えるチームと対戦する場合は特にだ。(W杯予選の)シンガポール戦やカンボジア戦のように20回もチャンスを作れるわけではない。それよりもずっと少ないチャンスを生かさなければならない。

 そして先ほどこの23人のリストを作る際にいろいろと考えたという話をしたが、そういった点を見たいと思った。例えば、長谷部(誠)はけがをしていて、その影響でW杯に出られないという最悪な事態も想定して準備しなければならない。長谷部はサッカー面だけではなく、人間としてもこのチームにとって重要な人間だ。誰が長谷部の代わりができるのかということも考えていかなければならない。このようにリストを作成する際、われわれはたくさんのことを考えている。そして今、海外でゲームに出続けている選手が少ない状態だ。つまり、(W杯に向けた)最終的なリストを作成するには、いまだ不確定な要素が多いと思う。

いくつかのゲームプランやシステムを考えている

ハリルホジッチ監督は「ある程度は試合ごとに選手が代わる」と流動的なメンバーで臨むことを示唆 【スポーツナビ】

――優勝するためには選手を固定したいだろうし、テストをするためには多くの選手を起用したいと思う。そのあたりをどう考えているのか。毎試合、大きくメンバーが変わることはあるのか?

 8日間で3試合を戦う大会だ。選手たちが代表に集合した際には疲労のテストなどを行う。彼らの健康状態や疲労の状態を確認したいからだ。また初めて代表に招集された選手もいる。ある程度は試合ごとに選手が代わることは想定される。しかし、何人を入れ替えるかはまだ決まっていない。

 また、いくつかのゲームプランやシステムを考えている。それがすべてこの大会中に見られるかというと、もしかしたらそれは難しいかもしれない。選手たちにはもちろんベストのプレーを要求し、どの試合も勝ちにいくことを求めたい。そして自らA代表候補に名乗り出ることを期待したい。もちろん常にチームのためにという精神を持ち続けながら、チームとして力を付けていく作業が行われなければならない。個人で状況を打開するという選手はいないので、組織として、チームとして発展しなければならない。そのために、選手たちには「チームのアイデンティティー」という資料を渡す。守備のとき、攻撃のときにどうしなければいけないのかということがそこには書かれている。セットプレーではどういうことをするのか。そういったメッセージを選手たちに伝え、説明してわれわれが見たいサッカーを彼らには身に付けてもらいたいと思う。

 また、フィジカルコンディションが現時点では分からない選手たちもいる。いろいろとテストしながら私としては改善していくところがあると思うし、この3試合からもたくさんの情報を得ることができると思う。

――セットプレーについて、今回は良質なキッカーがたくさん選ばれている。彼らをどう見極めていきたいのか。また、今後の選考にどう影響するか?(河治良幸/フリーランス)

 日本代表が直接FKでゴールを決めたのが最後はいつだかお分かりだろうか。もう数年経っている。また、ペナルティーエリア付近でどれだけFKを得ることができているか。われわれが来てから30試合は試合をしているが、3本だ(ハリルホジッチ独自の集計)。どのチームも1試合で少なくとも3回はペナルティーエリア付近でのFKを得ている。ブラジル戦ではそういったところでFKを得ることができ、(吉田)麻也がクロスバーに当たるシュートを蹴った。そういった惜しいキックもあったので、いいキッカーはいるのかもしれないが、FKを得ることができていない。

 そしてPKもだ。ブラジルはあの1試合で2回もPKを得た。われわれはこの30試合で3回か4回ぐらい。ブラジルは同じ期間で15回、20回と蹴ることができている。そういったデータを変えるためにも、彼らとしっかりとトレーニングして、進化してもらいたいと思っている。

(2010年)南アフリカのW杯でも日本がグループリーグを突破できたのはFKでの得点が2点あったからだと思う。そして、ブラジル戦でも1得点チャンスがあった。ただ、PKやFKはもっとたくさんゲットしなければならない。30試合でエリア付近でのFKが3、4回しかないというのは少なすぎると思う。もちろん、そういったトレーニングをする時間もほしいと思っている。選手たちと過ごす8〜9日間で、私はたくさんのメッセージをピッチ外でも伝えている。

 私は(現役時代は)FWだったので、どうすればPKやFKを得ることができるかは分かっている。そのスペシャリストだったと言っても過言はないと思うが、そういう経験を選手たちには伝えたいと思う。もちろん、W杯直前の準備期間ではより長い期間、そういったトレーニングができる。ただ、FKの機会を得なければ、FKを蹴ることはできない。試合前のミーティングでも、毎回ペナルティーエリア付近でFKをゲットしようと選手たちには話している。ただ、私が希望するところまではそういった機会を得ることができていない。細かいところも分析し、改善にトライしたい。

――新しいキッカーの可能性は?(河治)

 例えば初瀬は右足でも左足でも蹴ることができる。清武もキッカーになれる選手だが、現在はクラブでも蹴っていない。井手口も蹴ることができる。そのようなスペシャリストもいるが、そこは個人でトレーニングしてもらわないといけない部分でもある。井手口の場合は1本目のキックが低すぎるものになり、2〜3本目でいいキックを見せるようになる。そういった細かいところも見ながら、われわれは考えている。キッカーになれる選手たちには、居残りで練習後に蹴ってもらってもいいと思う。

――新しい選手が多い中、リーダーシップを期待する選手は?

 リーダーシップを取る選手は基本的に経験のある選手になる。このチームに弱点があるとすれば、コミュニケーションの部分かもしれない。特に中央の選手たちにそれを期待している。長谷部がいれば、彼が中心となって声を出している。長谷部がいないときにそういった問題が出ているので、私は毎日そういった部分を要求しているしウォーミングアップの中でも、そういったものを取り入れている。しかし、ゲームの中では選手たちの声が聞こえてこない。さけぶ選手、呼ぶ選手があまりいない。

 このリストの中でも、経験がある選手たちにはそういったところを要求したい。でも年齢はそれほど重要ではない。ポジションがコミュニケーションを要求することがある。声を出さなければいけないポジションであれば、そういったところもしっかりと改善していかなければならない。もちろん、まだキャプテンも決まっていない。キャプテンに値する選手を見極めたいと思うが、値する選手というのもまたいろいろな要素がある。たくさん試合に出ていながら声が出ていない選手もいれば、より声がでる若い選手もいる。チームには声を出す選手が必要だ。練習の中で誰がキャプテンになるべきか、誰が中心となってコミュニケーションを取るべきかを見ながらやっていきたい。

※質問者に関しては、掲載許諾の確認が取れた方のみ明記しています。記名のない方は確認が取れていない方ですので、拒否されている訳ではありません。

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