「ノアの聖地」ディファ有明の歴史に幕 記憶と記録に残る思い出を振り返る

高木裕美

三沢さんのお別れ会は2万5000人が参列

約2万5000人が参列した三沢さんのお別れ会は、ディファ有明の歴史に刻まれている 【t.SAKUMA】

 そして、第1位は、09年7月4日の「三沢光晴お別れ会 DEPARTURE」。ノアを設立した初代社長であり、初代GHCヘビー級王者でもあった三沢さんは、同年6月13日、広島県内での試合中のアクシデントで帰らぬ人となった。
 かつて、三沢さんの師匠・ジャイアント馬場さんが99年1月31日に亡くなった際には、同年4月17日に全日本の“ホームグラウンド”であった東京・日本武道館で「お別れの会」が行われ、約2万6000人が参列。献花に並ぶ列は、武道館の横の北の丸公園まで伸びていた。三沢さんのお別れ会には、約2万5000人が参列。ディファ有明のキャパは武道館の10分の1程度のため、会場に入りきれないファンの行列が、ゆりかもめの線路に沿うように2キロ先の豊洲駅周辺まで伸び、当初の終了予定時間を大幅に過ぎるまで、列が途切れることはなかった。
 90年代の全日本の四天王プロレスにバリバリに影響を受けた筆者にとって、三沢さんは尊敬すべきトップレスラーであり、そして、人柄的にも面倒見が良く気さくな、本当に愛すべき人間であった。三沢さんの名勝負は数多くあるが、「迷勝負」ナンバーワンともいえる、伝説の“天狗面プレイ”も、亡くなる直前の同年5月17日に同所で行われたKENTAプロデュース興行で誕生しており、三沢さんの振り幅の広さと、おちゃめで下ネタ好きな一面が、この「ノアの聖地」の1ページに刻み込まれたのは感慨深い。

 こうして振り返ってみると、ノアという団体は、旗揚げ戦のテーマ通り「自由…そして信念」に満ち溢れた団体であったことが分かる。熱狂の旗揚げから17年。いまや、旗揚げ戦出場メンバーで所属選手は丸藤正道、小川良成の2人のみ(杉浦貴は当時まだ練習生)となり、三沢社長に続き、三沢社長の参謀役であった「ノアを創った男」仲田龍氏も14年2月に死去。そして、来年、ノアの聖地も無くなってしまうと思うと、寂しさは否めない。すでに道場と事務所はディファ有明から移転。現在発表されているスケジュールでは、今後、ノアの大会は組まれていない。ディファ有明はもうすぐなくなってしまうが、かつての田園コロシアム、蔵前国技館、宮城県スポーツセンター、札幌市中島体育センター、札幌テイセンホールなどのように、今後も「ディファ有明」という名前は、プロレスファンの記憶と記録の中で生き続けるだろう。

最後の「ディファカップ」で伝説が生まれるか

 とはいえ、閉鎖されるのはまだ来年。今月28日には、約10年ぶりに「ディファカップ」が復活。「ディファカップ・メモリアル2017」として、一夜限りの夢の競演が実現する。

「ディファカップ」はノア、ZERO1を中心に、複数の団体が参加して行われるタッグトーナメントの大会名で、第1回大会は03年2月8日&9日の2日間に渡って開催され、闘龍門JAPANのウルティモ・ドラゴン&YOSSINO(現・吉野正人)の師弟コンビが優勝。第2回大会は05年5月7日&8日に開催され、ノアの丸藤正道&KENTA組が優勝。第3回大会は07年5月5日&6日に開催され、KAIENTAI−DOJOの真霜拳號&円華組が優勝。なお、準優勝はDDTのHARASHIMA&飯伏幸太組となっている。

 4チーム参加の「ディファカップトーナメント 2017」1回戦は、竹下幸之介&上野勇希組(DDTプロレスリング)vs.葛西純&平田智也組(プロレスリング FREEDOMS)、中嶋勝彦&熊野準組(ノア)vs.高岩竜一&ショーン・ギネス組(ZERO1)という顔合わせ。そのほか、石森太二(ノア)vs.マイク・ベイリー(DDT)によるX−Division選手権試合や、丸藤正道&HARASHIMA&河童小僧組vs.浜亮太&田中稔&日高郁人組による異色6人タッグ、さらには男色ディーノがノアのイケメン潮崎豪、そして、学生プロレス時代に「潮吹豪」のリングネームであった三富政行と合体。河上隆一&マサ北宮&KAZMA SAKAMOTO組と激突する。

 数々の歴史と思い出が詰まったディファ有明で、最後に伝説が生まれるのか。ぜひ、名物ディファカレーを頬張りながら、時代の目撃者となってほしい。

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著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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