【新日本プロレス】年末恒例のワールドタッグリーグが開幕 ジュース&サミがロス・インゴ破る金星

高木裕美

SANADA&EVILがまさかの黒星発進

ジュースのパルプフリクションでEVILをしとめ、ロス・インゴを破る金星を奪った 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 この日はAブロックの公式戦2試合が行われ、メインイベントでは、ジュース・ロビンソン&サミ・キャラハン組が、優勝候補の一角であるロス・インゴベルナブレス・デ・ハポンのSANADA&EVIL組を破る大波乱を起こした。

 SANADA、EVILは、BUSHIとのトリオでNEVER無差別級王座を保持しており、タッグチームとしての経歴に申し分なし。一方、ジュース組は、キャラハンは今試合が新日本マット初登場。過去にはCZWなどに在籍し、大日本プロレスで来日経験はあるものの、その実力はほぼ未知数となっていた。

 キャラハンが序盤戦でEVILにツバを吐きかけると、EVILもラリアットで場外へ落とし、鉄柵攻撃、EVILホームランでお返し。SANADAはパラダイスロック、低空ドロップキックを決めると、なんと、キャラハンはまさかのキス攻撃。これにはSANADAも度肝を抜かれる。さらにキャハランは15分過ぎ、味方のジュースに対しても接吻。ゲキを飛ばすはずが、これでペースを乱されたジュースは、合体のマジックキラー、EVILのダークネスフォールズのエジキに。しかし、キャラハンがかみ付き攻撃でEVILの必殺技EVILを阻止し、すかさずジュースがEVIL、SANADAに強烈なナックルパートを連打。キャラハンがEVILをダブルアーム式に落としたところを、ジュースがパルプフリクションに繋げ、勝利をもぎ取った。

 試合後、ジュースがマイクを握り、日本語で「優勝しまーす」と宣言。パートナーのキャラハンに対しては「ちょっとキモイ。ドント・キス・ミー」と、二度と自分にはキスしないようクギをさしたものの、「優勝して東京ドームでオレたちがベルトを獲る」と、夢舞台への進出を宣言した。

後藤がみのるから3カウント リーグ制覇へ好発進

後藤はGTRでみのるから3カウント。好発進となった 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 セミファイナルでは、CHAOSの後藤洋央紀&YOSHI−HASHI組が、鈴木軍の鈴木みのる&飯塚高史組に勝利。NEVER無差別級王座をめぐり、みのるに苦杯をなめさせられてきたCHAOSコンビが一矢報いた。

 後藤は4.27広島でみのるにNEVER王座を奪われ、6.11大阪城ホールでのランバージャックデスマッチでも敗北。また、YOSHI−HASHIも6.26後楽園でベルトに挑戦したものの敗れている。後藤は11.5大阪で行われたみのるvs.矢野通のブルロープデスマッチでも、矢野のセコンドとしてみのるとやり合っており、今回のタッグリーグ戦でのみのるとの直接対決を、「タイトル再挑戦への絶好のチャンス」と位置づけていた。

 奇襲攻撃を仕掛けた鈴木軍だが、リベンジに燃えるCHAOSはみのるに合体ブレーンバスター。だが、みのるも後藤に怒りのイス攻撃を食らわせ、開始早々、後藤がリングアウトの危機に陥る。さらに、リングに戻ったところへ、みのるのリストロック&飯塚のかみ付きのダブル攻撃。だが、後藤は試合中盤、みのるに村正、ダイビングエルボードロップ、バックドロップとたたみかけると、飯塚のアイアンフィンガーフロムヘルが不発に終わった機に乗じて、飯塚に合体のかわず落とし&ヘッドハンターをさく裂。みのるは後藤をフロントネックロックでとらえるが、YOSHI−HASHIがカットに入り、すかさず後藤が牛殺し、GTRとたたみかけて3カウントを奪った。

 後藤はこれまで、12年にカール・アンダーソン、14年に柴田勝頼とのコンビで2度タッグリーグを制しており、大会との相性は抜群。このままリーグ戦で優勝しても、みのるへの挑戦権を獲得できても、どちらもオイシイ状況には変わりない。一方、YOSHI−HASHIは、12年から昨年まで5年間、“レインメーカー”オカダ・カズチカのパートナーを務めていながら、結果を残せず。シングル戦線でも、みのるのNEVER無差別級、ケニー・オメガのUSヘビー級に挑戦しながら、いずれも完敗。来年の1.4ドーム、さらにその先の活躍を占う意味でも、まずはこのタッグリーグ戦で、しっかりと爪痕を残したいところだ。

ドームのメインに向けオカダと内藤が心理戦

オカダ(左)と内藤はドームのメインに向けて心理戦が始まる 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 1.4東京ドーム大会のメインイベントでIWGPヘビー級王座を争うオカダ・カズチカと内藤哲也、IWGPジュニアヘビー級王座を賭けた4WAY戦に臨むウィル・オスプレイと高橋ヒロムが6人タッグで対戦。ドーム決戦を前に、早くも心理戦が繰り広げられた。

 オスプレイが空間を自由に操り、ハンドスプリングキック、サイドバスターを繰り出せば、ヒロムもコークスクリューキックをかわし、突進を切り返してコーナーに叩きつけていく。オカダは内藤にエルボー、フラップジャック。内藤がスイング式DDTを繰り出せば、オカダもドロップキックで反撃。試合自体は、BUSHIが外道をMXで仕留めたものの、試合終了のゴングが鳴っても両軍収まらず。内藤は本部席から権利証の入ったアタッシュケースを持ち出し、オカダをメッタ打ちにした上で顔面を踏みつけると、「オカダ、東京ドーム大会まで、トランキーロ……」と、観客と共に決め台詞を吐こうとするも、オカダがマイクを奪い取って、「あっせんなよ」は言わせず。観客を完全に味方につけた内藤に対し、ブーイングをモノともせず、自分のペースを貫いた。

 見せ場を奪われた仕返しか、内藤はヒロムが入場時に着ていたジャケットを客席に投げると、ヒロムが慌てて取り返しに行く事態に。ヒロムもお返しとばかりに内藤がかぶっていたキャップを奪うが、これは客席に投げずに返還。このイチャつきぶりに、プ女子からは黄色い歓声が起きた。

 オカダvs.内藤のIWGP戦は、4年前の1.4東京ドームでも実現しているが、この時は「ファン投票」の結果、棚橋弘至vs.中邑真輔のIWGPインターコンチネンタル王座戦がメインとなり、IWGP戦は実質、「ダブルメインイベント」という名のセミファイナル扱いとなった。この屈辱に対し、両者は30分58秒にも及ぶ熱戦を展開。投票したファンに、試合内容で反論してみせた。あれから4年。内藤にとっては、夢にまで見たドームのメインの舞台。今年で4年連続のメイン出場となるオカダにとっても、それまで「トラウマ」の対象であったドームのジンクスを払拭(ふっしょく)し、連勝記録を続けているだけに、決戦まで、まだまだ両者による舌戦&心理戦が続きそうだ。

2/2ページ

著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント