ポスティング制度成立もいよいよ大詰め 大谷の代理人が語る二刀流の可能性

丹羽政善

具体的に見えてきた今後の日程

大谷は16日、日本ハムの2軍施設で練習した 【写真は共同】

 肝心のポスティング制度だが、GM会議最終日となった15日の午後から大リーグ機構のダン・ハーレム法規部長が会見すると、「まだ、合意には達していないが、12月初旬には正式決定となるのでは」という見通しを示した。

「大リーグ機構と日本プロ野球機構の間では、大筋合意している。あとは選手会の承認待ちだが、それもこの1週間程度ではっきりするのではないか。その後、オーナーの承認が必要だが、それは電話で行う」

 16日朝、選手会は合意期限を20日の月曜日に設定したと報じられ、承認されれば、23日から感謝祭の休みに入るので、その前か、直後にオーナーが承認する――という流れが想定できる。

 となると、新制度は27日の週から発効となる可能性も出てきた。すぐさま大谷のポスティング手続きが取られるとすれば、30日間が交渉期間となるので、大谷の移籍先が決まるのは、早くて年内、遅くとも年明けすぐということになる。

 ちなみに今回に関しては、前回の制度が1年間限定で延長され、上限2000万ドル(約23億円)で北海道日本ハムがポスティングフィーを設定。その規定額を出す意思を示した球団が、交渉に参加できる。

 チームが出そろった段階で大谷が渡米し、各球団の施設を見学するのか、あるいは代理人の事務所などで、各球団のプレゼンを受けるのかは未定だが、いずれにしても交渉が本格化するのは、大谷が渡米してからということになるではないか。

 もちろん、2013年のように土壇場で仕切り直しがあるかもしれないが、今回のGM会議ではひとまず、ポスティング制度成立、移籍先確定に向けて、具体的なタイムフレームが見えてきた。

獲得希望球団は二刀流前提で交渉へ

 大谷獲得を希望する球団に関しても、遅かれ早かれ、絞られるはずだ。

 バレロ氏は会見で、明確に大谷が二刀流を大リーグでも続ける意思を持っていることを明かした。ということは、現時点で、「難しい」(ナショナルズ/マイク・リゾGM)、
「けがが怖い」(メッツ/サンディ・アルダーソンGM)などと話しているチームは、消えていくはず。大谷獲得を真剣に考えているツインズのサド・レバインGMは、こう言っていた。

「多くのチームは、大谷が二刀流をやりたいというのなら、やらせるという形でリクルートすると思う。われわれも両方やりたいうというのなら、それに対して柔軟な考えを持っている。彼が投手をやりながら、指名打者として打席に立ちたいというのなら、それでもかまわない」

 もちろん、実際に二刀流をやるとなると、起用において工夫も必要。やはり獲得に積極的なロッキーズのジェフ・ブリディッチGMは、「先発を6人で回すのか、あるいは中4日で投げたい投手もいるから、休みの日を使ってローテーションを調整し、大谷の登板間隔を開けるのか。いずれにても、臨機応変に考えたい」と話し、続けている。

「前例がないわけじゃない。日本ハムがどう起用したのか。それも参考にしたい」

 もはや、メジャーの各球団が大谷に二刀流を挑戦させることは確実だ。当初は、懐疑的な見方も少なくなかったが、アストロズのジェフ・ルーノウGMも、「そういう時代は、遅かれ早かれ来る」と話し、二刀流の到来を予感。獲得にもっとも熱心なレンジャーズのジョン・ダニエルズGMも「可能」とし、「ブレンダン・マッケイの例もある」などと話した。

 マッケイとは、今年のドラフトでレイズから1巡目(全体4位)で指名された選手だが、7月にデビューすると二刀流をこなし、来季も開幕から二刀流に挑戦することになっている。メジャー昇格は先だが、仮に大谷が成功すれば、彼の存在も改めてクローズアップされるだろう。無論レイズは、マッケイの起用パターンを“実績”として大谷にアピールするのではないか。

 彼らはドラフト前に二刀流の実現に向けた分析を多角的に行っており、その情報は貴重なものともなりそうだ。
 
 さて、会見を終えたバレロ氏は、部屋のドアのところまで見送りに来た。

「また、聞きたいことがあれば連絡をくれ。答えられることは答える」

 前出のプライス氏も、「何かあれば連絡を」と全員に自分のメールアドレスを伝えていた。

「答えられることは答える」

 その日がいつやってくるのか。ポスティング制度の決着が見えたことで、彼らは今後、さらに忙しくなる。「あのときは、こうだったんだ」。そんな舞台裏を明かすとしたら、かなり先のことになりそうだ。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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