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酒井宏樹が得た連動した守備への手応え
ライバル・高徳も認める「別格」の存在感

ベルギー戦の連係した守りで得た自信

ベルギー戦では浅野(右)らとのコミュニケーションを大事にした
ベルギー戦では浅野(右)らとのコミュニケーションを大事にした【Getty Images】

 彼が対峙した2シャドー左のアタッカーはエデン・アザールではなく、ドリース・メルテンス。その背後にはナセル・シャドリもいて、前にいる浅野拓磨との意思統一が非常に大切になる。「練習の中でもいろいろなはめ方を試しましたけれど、僕と宏樹さんの中で常に声を掛け合いながらどっちがウイングの選手(メルテンス)を見て、中に落ちてくる選手のコースを切りながら守るかを確認した。そのイメージを共有させることを考えた」と浅野も言うように、とにかくコミュニケーションを大事にしながら戦った。


 その効果が序盤から出て、日本の右サイドは相手に対して主導権を握った。開始早々の2分には浅野がゴール前に侵入し、最初のゴールチャンスを迎える。酒井宏樹も守備に重心を置きつつ、機を見て攻め上がり、攻めに厚みを加えた。最たるシーンが前半26分の大迫勇也の決定機。吉田のフィードを右サイドの高い位置で受けた彼は迷うことなくクロスを入れる。その瞬間、フリーになった大迫は絶妙のタイミングで頭を合わせたが、惜しくもシュートは枠を超えていった。守備面でもメルテンスやトルガン・アザールの突破を止めようと体を張り、吉田や槙野智章、山口らと連係した守りを見せる。前半を0−0で抑えたことで、彼らは少なからず自信を得た。


「ハーフタイムもあんな感じでよかったかという確認はしました。いけない時間帯、きつい時間帯、体力をためる時間帯、いく時間帯があったので、そこをみんなですり合わせる作業をして、後半に入りました」と酒井宏樹は述懐する。


 このペースが後半25分すぎまで続き、途中出場の森岡亮太のシュートなどで点の取れそうな雰囲気も漂い始めたが、日本は1つのミスで失点してしまう。浅野と代わった久保の前に位置したシャドリがスルスルとドリブルで中に切れ込み、森岡、山口、吉田をかわしてクロス。ファーサイドにロメル・ルカクに飛び込まれたのだ。「中盤も後ろも一瞬気を抜いてしまった」と吉田は悔やんだが、酒井宏樹も思い切って寄せてもよかったのかもしれない。そこは本人にも検証してほしいところだ。

酒井高徳「(酒井宏樹は)右では別格」

フランスに渡ってからの急成長ぶりに、酒井高徳も「右では別格」と語る
フランスに渡ってからの急成長ぶりに、酒井高徳も「右では別格」と語る【写真:ロイター/アフロ】

 結局、日本は0−1で敗れ、欧州遠征2連敗。W杯本番であれば、開幕2連敗で1次リーグ敗退の憂き目に遭っているところだ。厳しい現実を踏まえたうえで、酒井宏樹は「ベルギー戦は可能性を示せたと思います。みんなトップレベルのスピードに慣れていたのでいい入りができたし、守備面でベルギーに通用するところはあった。精度を上げていけば、本大会で『いく、いかない』のスイッチはチームとしてより出来上がる。初めて手応えを感じました」と前向きに話した。


 彼自身もチーム内での存在感を高めることができた。ネイマール、メルテンスといった世界の強豪と対峙しても物怖じすることなく冷静に対処できる力が実証されたのは大きな収穫と言っていい。フランスメディアに対してジャッキー・ボヌベーコーチが「日本代表の右SBに彼のライバルはいない」と語ったという報道もあり、ハリルホジッチ監督からも絶大な信頼を勝ち得ているのは確かだ。


 同じ右SBを争っている酒井高徳も「ネイマールを抑えた宏樹が成長しているのが目に見えて分かるというか、あらためてすごいなと思う。リーグで上位につけてレギュラーを張っているのもよく分かったし、もう右では別格じゃないですか」と最大級の賛辞を贈ったほど、ここ最近の急成長ぶりは目を見張るものがある。


 柏レイソル時代の11年にJ1初制覇の原動力となり、12年ロンドン五輪後には欧州に渡ったが、内田篤人の厚い壁に阻まれ、14年のW杯ブラジル大会は出場なしに終わった。ハビエル・アギーレ前監督時代は初陣だったウルグアイ戦(札幌)でのミスが引き金になり、代表から遠ざかる屈辱も味わった。ハリル体制発足後は右のファーストチョイスとなったが、特に躍進したのは、高徳が言うようにフランスに渡ってからだ。


 ここから先はチームをけん引する統率力を身に付けることが肝要だ。初代表から5年が経過し、40試合を超えた酒井宏樹は今のチームでは経験豊富な選手の1人。その自覚を強く持つべきだ。いまだ代表無得点という攻撃面の改善にも意欲的に取り組む必要がある。


「3月まで代表が空きますし、クラブでモチベーションを高く持ってやらないといけない」と本人も語気を強める。その言葉通り、まずはマルセイユで高みを目指し、自身の課題を改善し続けてもらいたい。

元川悦子
元川悦子

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

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