前進か、後退か―― 緒方広島の敗因と3連覇への課題

ベースボール・タイムズ

1位で地元の星・中村の指名成功も…

ドラフトでは中村奨成の交渉権を引き当てた。打てる捕手として期待がかかる 【写真は共同】

 だが、CS敗退で広島全体が意気消沈した中、来季以降に向けて明るい話題もあった。敗退決定の2日後に行われたドラフトで、地元広島出身で今夏の甲子園で新記録となる大会6本塁打を放った中村奨成(広陵高)の交渉権を獲得。「打てる捕手」として、今季、高卒1年目で1軍デビューを果たした坂倉将吾との切磋琢磨で「カープ史上最強捕手」の誕生の夢が見られそうだ。

 ただ、このドラフトでは不満も残った。現状のチームで最大の補強ポイントだった左投手を1人も指名しなかったことだ。育成を含めて計9人の指名選手中7人が投手だったが、すべて右投手で、即戦力どころか、将来性を見込んだ高校生の指名もなかった。実力重視の指名であったのだろうが、この偏った指名には首をかしげる部分もあった。おそらく球団の方針では、今季1軍でも先発した高橋樹也や、1年目はファームで力を蓄えた高橋昂也など、現有戦力の成長を期待していると見られるが、先発、リリーフでの慢性的な左腕不足は、来季もチームの弱点となっている。

不安材料を跳ねのけて3連覇なるか

 埋められなかった左腕の他にも、2連覇の原動力となったコーチ2人の退団も、来季への不安材料となっている。打撃担当の石井琢朗コーチと外野守備走塁担当の河田雄祐コーチは、連覇の陰の立役者と言える存在だった。6日に発表されたコーチ人事では、河田コーチの後釜にチーム生え抜きの廣瀬純氏が入ったが、石井コーチに代わる新任の打撃コーチの名前はなかった。来季からは石井コーチとともに3人体制を敷いていた東出輝裕、迎祐一郎の両コーチが中心となるが、スタメンや代打起用などで、実質的な決定権を持っていた石井コーチの退団が、チームにどのような影響をもたらすのか。残された両コーチにとっては来季が試金石のシーズンとなる。

 来季に向けて、現時点では不安材料も多い。悲願の日本シリーズ制覇へ、来季を「三度目の正直」とすることができるのか。FAが解禁となり、首脳陣でも石井、河田の両コーチの東京ヤクルト移籍が有力になるなど、各チームとも、オフの補強を着々と進めている。それでも主力選手の多くが最盛期を迎えつつあり、シーズンの戦いで選手層の厚さも見せつけた広島が、来季も優勝候補の一角であることは間違いない。リーグ3連覇となれば、セ・リーグでは巨人を除けば初の快挙となる。3連覇への挑戦権は、連覇を果たしたチームのみに与えられる特権だ。こんな千載一遇とも言えるチャンスを逃すわけにはいかない。

(大久保泰伸/ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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