「暴れてこい!」と背中を押す――稲葉ジャパンの船出と新たな指針
日の丸の重圧をどう克服するのか
北京五輪、第1回、第2回WBCでは選手として、第3回WBCは打撃コーチを務めるなど日本代表の経験豊富な稲葉監督(写真は第3回WBCより) 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
「僕もそうでしたけど、国際大会では失敗しないよう、安全に安全に、無難に無難に、と思ってしまう。でもそれでは最後のところで勝ち切れない。日の丸の重圧に関しては選手たちも分かっていると思うし、そこに立ち向かって行ってもらいたい」
45歳の稲葉氏に対し、監督経験のなさを不安視する声もあるが、これまでの監督よりも選手たちと近い距離でコミュニケーションをとり、良き兄貴分として打席に向かう選手たちの背中を、「暴れてこい!」と押す。
「失敗してもいいから『思い切って行け!』と。そこは周りができることですし、まだ年齢的にも選手たちに近く監督である僕ができること、僕の役目であると思う。選手たちには『行ってこい!』と背中を押したい。それで失敗したら僕のせい。責任は僕が持つ。だからとにかく『暴れてこい!』と。そういうチームにしたい」
期待と不安を感じながらのスタート
24歳以下を中心に組まれた新生・侍ジャパン。稲葉監督は「暴れてこい!」と背中を押す 【花田裕次郎/ベースボールタイムズ】
その期待に応えるには、結果しかない。小久保前監督同様、指揮官としての手腕も今後、厳しい目で問われることになるだろう。そしてその厳しさの中でこそ、チームは強くなる。まずは初陣。若きサムライたちとともにアジア王者へ。侍ジャパンの誇りと、新たな力を見せてもらいたい。
「ワクワクした気持ちとプレッシャーが、今は半々ですね。今後、侍ジャパンのユニホームを着て、東京五輪が近づくにつれてプレッシャーの方が強くなって、徐々にワクワク感は減ってくるんでしょう。でも今は、3年後にはこんな感じにしたい、ああいう風になればと、いろいろと思い描いてワクワクしています」
期待と不安。3年後の2020年の東京五輪へ向けたスタートを前に、指揮官の心の中では、その両方の感情が入り混じっている。半信半疑なのは日本の、多くのファンも同じだろう。侍ジャパンが再び国民の注目を集め、大きな期待を背負って行くためには、船出は華々しい方がいい。
(三和直樹/ベースボール・タイムズ)