「暴れてこい!」と背中を押す――稲葉ジャパンの船出と新たな指針

ベースボール・タイムズ

日の丸の重圧をどう克服するのか

北京五輪、第1回、第2回WBCでは選手として、第3回WBCは打撃コーチを務めるなど日本代表の経験豊富な稲葉監督(写真は第3回WBCより) 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 もちろん前任者を真似るだけでは発展しないことは知っている。過去2大会のWBC、15年のプレミア12、そして苦杯を舐め続けた五輪野球において、日の丸を背負った選手たちの動きを固くした重圧を、どう乗り越えるのか。本番での勝負弱さを、どう克服するのか。

「僕もそうでしたけど、国際大会では失敗しないよう、安全に安全に、無難に無難に、と思ってしまう。でもそれでは最後のところで勝ち切れない。日の丸の重圧に関しては選手たちも分かっていると思うし、そこに立ち向かって行ってもらいたい」

 45歳の稲葉氏に対し、監督経験のなさを不安視する声もあるが、これまでの監督よりも選手たちと近い距離でコミュニケーションをとり、良き兄貴分として打席に向かう選手たちの背中を、「暴れてこい!」と押す。

「失敗してもいいから『思い切って行け!』と。そこは周りができることですし、まだ年齢的にも選手たちに近く監督である僕ができること、僕の役目であると思う。選手たちには『行ってこい!』と背中を押したい。それで失敗したら僕のせい。責任は僕が持つ。だからとにかく『暴れてこい!』と。そういうチームにしたい」

期待と不安を感じながらのスタート

24歳以下を中心に組まれた新生・侍ジャパン。稲葉監督は「暴れてこい!」と背中を押す 【花田裕次郎/ベースボールタイムズ】

 就任会見から3カ月が過ぎ、「試合の見方も非常に変わった。今まで以上に選手の特徴を把握しようという目で見るようになった」と稲葉監督は話す。そして、これまで以上に忙しくなった日々の中で、「みなさんからの反響、『東京オリンピック頑張って!』と声をかけられるようなことも増えました」と周囲からの期待を肌で感じている。

 その期待に応えるには、結果しかない。小久保前監督同様、指揮官としての手腕も今後、厳しい目で問われることになるだろう。そしてその厳しさの中でこそ、チームは強くなる。まずは初陣。若きサムライたちとともにアジア王者へ。侍ジャパンの誇りと、新たな力を見せてもらいたい。

「ワクワクした気持ちとプレッシャーが、今は半々ですね。今後、侍ジャパンのユニホームを着て、東京五輪が近づくにつれてプレッシャーの方が強くなって、徐々にワクワク感は減ってくるんでしょう。でも今は、3年後にはこんな感じにしたい、ああいう風になればと、いろいろと思い描いてワクワクしています」

 期待と不安。3年後の2020年の東京五輪へ向けたスタートを前に、指揮官の心の中では、その両方の感情が入り混じっている。半信半疑なのは日本の、多くのファンも同じだろう。侍ジャパンが再び国民の注目を集め、大きな期待を背負って行くためには、船出は華々しい方がいい。

(三和直樹/ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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