【超花火】宮本裕向が先輩・田中将斗を破り爆破王に 長与千種は高橋奈七永を退け爆女王V3

高木裕美

長与は勝利で“次世代”選手も勧誘

最後のWWWA王者・高橋奈七永(左)が電流爆破のリングに。大先輩・長与(右)に挑んだ 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 ノーロープ有刺鉄線&有刺鉄線ボードダブルヘル電流爆破デスマッチで争われた爆女王選手権試合では、初代王者・長与千種が「最後の赤いベルト保持者」であった高橋奈七永を退け、V3に成功した。

 長与は80年に全日本女子プロレスでデビュー。84年にライオネス飛鳥とクラッシュギャルズを結成し、レコード「炎の聖書」が大ヒットするなど絶大な人気を得るが、89年に突然の引退。だが、93年に現役復帰し、96年には新団体GAEA JAPANを設立。00年には飛鳥と「クラッシュ2000」を再結成した。その後、再び引退や限定復帰を繰り返しながら、新たにマーベラスを設立。15年5.23大田区総合体育館で開催された「大江戸超花火」で、同郷の長崎県出身の大仁田とコンビを組み、ダンプ松本&TARU組との史上初の男女混合電流爆破デスマッチでリングに本格復帰。同年9.12新潟で行われた再戦で大仁田と共に初代爆破王タッグ王者組に輝いた。旧川崎市体育館は、飛鳥とのクラッシュギャルズ対決でWWWA王座を争うなどした、思い出の地だ。

 対する高橋は、本名の高橋奈苗として96年に全女でデビュー。00年にはつんくのプロデュースにより4人組アイドルユニット「キッスの世界」としてCDデビューもした。04年12月には、この旧川崎市体育館でWWWA世界シングル王座を初戴冠。06年3.26後楽園大会では、第60代王者として同王座を返上、封印した。全女崩壊後はプロレスリングSUN、スターダムを経て、15年にはSEAdLINNNGを設立。リングネームを高橋奈七永に改名した。電流爆破マッチへの挑戦は今回が初となる。

 リングは、すべてのロープがはずされ、2面に電流が流れる有刺鉄線が張られ、場外には有刺鉄線ボードが設置された状態でスタート。長与は、入場するなり高橋に頭から水をかけると、場外にも水をまき、大仁田が乗り移ったかのような邪道ムーブで登場。

 開始から間もなく、長与は「奈七永、いらっしゃい」と声をかけ、抱きかかえるようにして有刺鉄線に同体被爆すると、2メートル以上の高さの火花に場内も騒然。電流爆破の洗礼を開始3分で浴びせられた高橋だが、ひるむことなく長与を蹴り落とすと、長与も高橋を場外へひきずり下ろして有刺鉄線ボードにたたきつけ、さらにボードで殴打。高橋も長与を有刺鉄線ボードにもたれかからせてマシンガンチョップを打ち込むなど、ラフファイトを見せ、口に水を含んで長与に吹きかけてみせる。リングに戻った高橋が、有刺鉄線ボード上へのブレーンバスター、ストンピング。しかし、長与のキックで高橋が被爆すると、さらに大外刈り、サソリ固め。すると高橋も有刺鉄線ボード2枚で長与をサンドイッチし、ラダー上からの冷蔵庫爆弾を敢行。だが、長与はこれをカウント2ではね返すと、正拳突きからデスバレーボム、パワーボム。さらにはお返しとばかりに今度は高橋を有刺鉄線ボードでサンドイッチ状態にしてセントーン。長与は観客に「奈七永」コールをあおると、高橋を抱え起こして再び同体で被爆し、そのままもつれ合うようにしてカバー。まだ爆音と白煙が収まらない中、カウントが3つたたかれた。

 試合後、かつての大仁田劇場のように、興奮した観客がリングを取り囲む中、長与は、電流爆破のリングを「またいだ」高橋に対し、「かわいいな」と微笑みかけると、「いいか、忘れるな。ガチガチにプロレスで試合をするのもあり。でも、これも試合だ。おまえに継承する。オレは、道標(みちしるべ)だから」と、未来の爆女王への道を託すと、高橋は「今、言いたい事はひとつだけです。私は今、ここに生きている。すごい、生きているんだって感じてます」と、初体験の電流爆破で、生の実感が湧いたことを認めた上で、「また、長与千種、あなたのそのでっかい笑顔の前に必ず立ちたい。そして、次は、次こそは逆になっていますよ。私が勝つんです」と再挑戦を訴えた。

 さらに長与は、高橋のセコンドに着いていた世志琥に対しても「いつかは、そのうち、いつかはやってくれ。お願いします」とデスマッチへスカウト。また、「もし、私がやられたら、うちのムスメが敵を取る」と、自身のセコンドの彩羽匠に語りかけるなど、早くも“次世代爆女王”たちにも目を向けた。

 10代でデビューし、かつてはクラッシュ・“ギャル”ズだった長与も、すでに56歳。自身と同じく、引退と復帰を繰り返してきた大仁田が60歳で引退したのを目の当たりにしたからか、「爆女王はドラマ。ドラマがないとプロレスじゃない。魂を受け継ぎ、伝えていくのが私の役割。伝えていくのがドラマです」と、まだまだ爆女王として君臨し、高い壁となりながらも、若い世代に未来を託すという道を示した。

風林火山タッグトーナメント1回戦は日高&菅原組などが勝利

ZERO1の冬の風物詩「風林火山タッグトーナメント2017」1回戦が行われ菅原&日高組(左)が突破した 【写真:SHUHEI YOKOTA】

 この日は、ZERO1の冬の風物詩「風林火山タッグトーナメント2017」1回戦2試合も行われ、現NWAインターナショナルライトタッグ王者組の日高郁人&菅原拓也組は、ショーン・ギネス&SUGI組に快勝。ギネス&SUGI組の息の合った連係や華麗な空中殺法に日高が苦しめられる場面もあったものの、アイルビーバックで流れを変えると、菅原の延髄斬りのアシストを受け、ジャパニーズオーシャンサイクロンスープレックスでSUGIに勝利。同郷の島根県益田市出身であり、この日、横浜・大さん橋ホールで行われる30周年記念興行を最後に引退する豊田真奈美の得意技で、まもなく最後の花道を飾る“飛翔天女”に敬意を表した。

 将軍岡本&吉江豊組は、大谷晋二郎&スーパー・タイガー組に勝利し2回戦進出を決めた。岡本&吉江組は10.26後楽園で行われたNWAインターコンチネンタルタッグ選手権試合で、王者組の佐藤耕平&鈴木秀樹組に沈み、屈辱の2連敗。だが、この日は優勝に向け巻き返しをはかるべく、得意のパワー殺法で押しまくると、大谷の顔面ウォッシュ、ドラゴンスープレックス、タイガーのキックなどの猛攻をはねのけ、大谷にド迫力のサンドイッチプレス。さらに連係のセントーンから吉江がボディープレス、フライングソーセージで圧殺し、気勢を上げた。

2/2ページ

著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント