Wシリーズは1勝1敗で注目の第3戦へ “世界一”へ鍵握るダルビッシュの先発

杉浦大介

名勝負となった第2戦

第2戦の10回に本塁打を放ったコレア(右)とよろこぶアルトゥーベ 【写真は共同】

 第2戦の逆転劇は、今シリーズの流れを大きく変えることになるのだろうか。

 10月25日(現地時間)、ドジャー・スタジアムで行われた第2戦の終盤まで、2017年のワールドシリーズはドジャース投手陣の素晴らしさばかりが目立っていた。第1戦ではクレイトン・カーショーがわずか83球で7回を1失点に抑え、ドジャースが3対1で先勝。続く第2戦もリッチ・ヒル、前田健太らの投手を細かくつなぎ、7回終了時で3対1とリードを奪っていた。

 一般的に“打力のアストロズ対投手力のドジャース”と称された最終決戦。このままドジャースが2連勝を飾っていれば、“秋は投手力”という格言が証明され、ホームフィールド・アドバンテージを持つ西海岸の名門が完全に主導権を握っていただろう。ところが――。

 8回表にカルロス・コレアの適時打で1点差に詰め寄ったアストロズは、9回にマーウィン・ゴンサレスの左中間への本塁打で3対3に追いつく。絶対的な存在だった守護神ケンリー・ジャンセンを打ち崩したという意味でも、この同点劇はアストロズには値千金で、ドジャースには痛恨だった。

 その後、アストロズが延長10回にホセ・アルテューベ、コレアの連続本塁打で2点を挙げれば、ドジャースもその裏2死から同点にする粘りを見せる。しかし、29年ぶりの頂点を目指すドジャースの頑張りもここまでだった。

 11回にジョージ・スプリンガーの2点本塁打でアストロズがまたも勝ち越し。その裏のドジャースの反撃をなんとか1点に抑え、テキサスのタレント集団が壮絶な打撃戦を7対6で打ち勝った。4時間19分の死闘を制したアストロズは、これでシリーズを1勝1敗に戻したのだった。

ドジャースのシナリオが崩壊

「これまでプレーした中で最もクレイジーなゲームの1つだ。この場所にいられることに感謝しているよ。リードして、追いつかれ、リードして、追いつかれ、さらにリードして、またほとんど追いつかれそうになってしまった(笑)」

 試合を終えて、テレビ中継したFOXの『ポストゲームショー』に出演したアルテューベはまくしたてるようにそう語っていた。今季ア・リーグMVP最有力候補と目される“小さな巨人”の興奮も理解できるところではある。

 終盤のドラマというと、レンジャーズに王手をかけられたカージナルスが9、10回に2イニング連続で2死から追いつき、延長11回にサヨナラ勝ちを飾った11年のワールドシリーズ第6戦が思い浮かぶ。舞台背景的にはその試合には及ばないとしても、ワールドシリーズ記録の8本塁打が飛び交ったドジャース対アストロズ戦の第2戦も十分にドラマチックだった。

 今季、8回までリードしたゲームでのドジャースは、シーズン、プレーオフを通じて98勝0敗だった。そんな“勝利のシナリオ”が崩れたという点でも、この日の勝利はアストロズには莫大な価値がある。

「僕たちは最後まで決してあきらめない。(ジャンセンは)今季すごい仕事をしてきたけど、マーウィンの同点弾は僕たちにとって本当に大きかった。おかげで自信を与えてもらえたよ」

 アルテューベと同じくFOXの生中継に登場したスプリンガーがそう述べた通り、アストロズは逆転劇で自信を取り戻せたのではないか。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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