【UFC】明日なきカウボーイ、セラーニの哲学 “おいしくない”試合もやり尽くすだけ
「UFCファイトナイト・ポーランド」のメインに立つドナルド・“カウボーイ”・セラーニ 【Zuffa LLC】
Anyone、Anywhere、Anytime(いつでも、どこでも、誰とでも)
かつて「年間6試合が理想」と語り、2014年1月から2015年1月までの13カ月間で本当に6試合6連勝をやってのけたセラーニ。2016年のウェルター級転向後も4連勝と好調だったが、2017年に入って急ブレーキがかかり、1月のホルヘ・マスビダル(米国)戦ではノックアウト負け、7月のロビー・ローラー(米国)戦では判定負けを喫している。
一般的に試合で負けた後の選手は、ケガを癒やし、ダメージを抜き、じっくり練習して弱点を克服するなど、次の試合の用意ができるまでに時間がかかることが普通だ。しかし、セラーニは勝とうが負けようが、早く次の試合を組んでくれと、UFC会長のデイナ・ホワイトをせっつく。
「(マスビダル戦の後)試合をしたくなったら電話していいか、と尋ねたら、デイナは『ダメだ。少し休め』と言うんだ。『そりゃないよ、頼むよデイナ』と食い下がったんだけど、やっぱり『ダメだ』と言って取り合ってくれない」
ローラー戦では目を負傷し、6カ月の出場停止が命じられたが、驚異の回復で医師のゴーサインを取り付けるや否や、次の試合を自ら持ちかけている。
「実は『UFC 216(日本時間10月8日)』で試合する予定だったんだ。でも、うまく調整がつかなかった。そこでオレの方から、じゃあポーランドではダメなのか、と持ちかけたんだ。UFCからは『ポーランド? 米国ではテレビ中継がないのですがいいんですか』と言うから、そんなこと構うものか、と答えたんだ」
「ティルのことはまったく何も知らない。試合も見たことがない。ディスってるんじゃないぞ。オレはそういうことはよく知らないんだ。何せ対戦相手が決まっていないうちから、オファーを受けてしまうからな。対戦相手を探してくるのはUFCの仕事だろ」
今回、ノンランカーのティルに勝ったからといって、セラーニの株が上がるわけではない。セラーニにとっては勝って当たり前、負ければ被害甚大の、いわば“おいしくない”試合のはずだ。しかしセラーニの念頭には、そんな小賢(こざか)しい計算はまったくない。あるのはただ、“Anyone、Anywhere、Anytime(いつでも、どこでも、誰とでも)”戦う哲学だけだ。
「こんなスポーツができるのも、ほんのわずかの時間だけなんだから、できる限りのことをやり尽くすのが当然だろう。おまえと金網で戦いたいと言ってくれる人がいるのに、喜び勇んで立ち向かっていかないヤツがいるのは、いったいどういうことなんだ? オレはいつでも、どこでも、誰とでも、自分の腕で勝負をする。これまでも、これからも、ずっとそんな風だ」