【UFC】明日なきカウボーイ、セラーニの哲学 “おいしくない”試合もやり尽くすだけ
“アドレナリンジャンキー”で多趣味なセラーニ
ノンランカーのティル(右)が相手でも打算なし。「いつでも、どこでも、誰とでも」戦うだけ 【Zuffa LLC】
そしてアクシデントにも事欠かない。若い頃にはモトクロスの事故であばら骨を全部折ったこともある。立ち上がった際に腹部から腸が出てきたため、手で受け止めたのだそうだ。ロッククライミングで12メートルの高さから落下して大ケガをしたこともある。13年にはコロラド州の湖でボートを運転中に、割り込みをされたことにカッとなって無謀運転を行い、警察のお世話になっている。昨年はハンティング中に自分の馬を誤射してしまい、興奮して大暴れした愛馬に顔面を蹴られ、目に裂傷を負った(本人は「メキシコで幹細胞移植をしたからもう治った」などと不気味なことを平然と話す)。今年は湖底に沈んでいる財宝探し(賞金は500ドル相当の銀だ)に参加したものの、空気タンクのレギュレーターがぶっ壊れて空気が漏れ、一歩間違えば溺死するところだった。つい先日も、セラーニの『Instagram(インスタグラム)』には、ガラガラヘビ(有毒)を素手で捕獲してドヤ顔を決めた写真が掲載されている。
ホワイトは「セラーニは才能があり、ものすごくたくさんのことができるが、試合前にもロッククライミングやウエイクボードをやめてくれないのには参っている」と語っている。
セラーニも「余計なことはしないで格闘技に専念すればチャンピオンになれるのかもしれない」と認めているが、「それではハッピーではないんだ。世の中にやりたいことは山ほどあるんだから」と語る。
「高校時代の友だちに会うと、みんなずっと同じメンツで同じことばかりをやっている。せっかく高校時代のガールフレンドと結婚したのに、だんだん不幸になってきて、今では女房の不満ばかりを言ってやがる。ミッドライフクライシス(中年期特有の心理的危機)だか何だか知らないが、オレはあんなふうにはなりたくない。いつでもやりたいことをやっていたいんだ」
“明日なきカウボーイ”から目が離せない
「試合ほどスリルのあることはない」と“アドレナリンジャンキー”な発言もセラーニの魅力 【Zuffa LLC】
そんなファンの心配をよそに、セラーニは軽快に言うのだ。「オレは試合の日の夜はパーティには行かないんだ。だって、さっさとメシを食って、早く寝ないと、翌日は朝6時からウエイクボードをやらないといけないからね」
(文:高橋テツヤ)