代表初得点も、危機感を募らせる杉本健勇 遅咲きの大型FWが口にした自らの課題
念願のAマッチデビューで得た収穫と課題
それでも「今回は外れましたけど、今はメンタル的にもいい状態なので、出してくれればという感じです」といち早く、次へ気持ちを切り替えた。このように前向きに切り替えられるのが、今の杉本の良さだろう。サウジアラビア戦は念願かなって後半22分から途中出場、待望のAマッチデビューを飾った。
そして6日のニュージーランド戦でも、後半15分から大迫に代わって登場。ペナルティーエリア左外から強烈シュートを放つ決定機も作ったが、得点には至らなかった。目に見える結果を残さなければ、大迫、岡崎、武藤らがひしめく最前線の一角に割って入ることはできない。日に日に危機感は強まっていった。
こうした中、ハイチ戦では前述の通り、自ら1ゴールを奪い、倉田の得点をお膳立てするポストプレーも披露した。こうした点は前向きに評価されていいはずだ。とはいえ、「今回は相手も相手。世界に行けば、もっと強いやつもいっぱいいるだろうし、チーム的にも、もっとレベルが高くなると思います。動き出しの部分だったり、裏で左右に動くところは、もっともっとできると思う。自分はどうしても、足元でもらいたがる傾向が強いので、そこは監督からも言われていますし、判断をもっとよくして、裏への動きも増やしたいと思っています」と自身も口にしたように、裏へ出ていく回数が少なかったことは今後の課題だ。
杉本に代わって後半19分からピッチに立った大迫は、相手守備陣がひしめく狭いエリアでも強引にキープしながら局面をこじ開けようとしたり、一瞬の動き出しで相手の背後を突くなど、1トップとしてのプレーに幅と余裕、質の高さが感じられた。そこがブンデスリーガで培った経験値なのだろう。
自身の武器を研ぎ澄ませ、まずはチームの大黒柱へ
こうした面々と比べると、杉本は代表経験が少なく、周囲のメンバーの特徴を把握し、合わせていく時間が極端に少ない。加えて、普段プレーしている環境も国内リーグであり、それはどうしても不利な要素と言える。
しかしながら、彼には日本人離れした高さと、屈強なフィジカル、前を向いて果敢にゴール前で勝負できる力がある。そこは指揮官としても捨てがたい部分だろう。11月に予定されているブラジル代表、ベルギー代表との親善試合に招集されるかどうかはまだ未知数だが、監督も「世界のトップとやらせてみたい」という興味は湧いたのではないだろうか。
杉本にしてみれば、自身の武器を研ぎ澄まし、前面に押し出しすことでしか、ロシアの最終登録のメンバー23名に入る道はない。その枠がいかに狭いものかを実感したハイチ戦は、杉本にとって大いに価値のあるものだったはずだ。
「代表で頑張りたいという思いは強まりました。でも監督も言ってますけれど、今のままではW杯に出るだけになってしまう。まずそこに行くためには、チームでやるべきことが多いですし、もっともっと自分のレベルを上げていかないといけない。チーム(C大阪)でのプレーが、ここ(代表)に呼ばれることにつながると思うので、チームに戻ってしっかり頑張りたいと思います」
遅咲きの大型FWが語気を強めたように、この1カ月はJ1リーグ戦、天皇杯準々決勝の大宮アルディージャ戦、ルヴァンカップ決勝の川崎戦と3つのトーナメントで全力を出し切ることが肝要だ。9月9日の第25節、FC東京戦から約1カ月の間、ゴールから遠ざかっているだけに、まずは結果を残すことが最優先だ。チームを勝利へ導く、点の取れる大黒柱へ――。