ここまで把握できる投球データ ダルビッシュを科学する<第1回>
時代は「Statcast」へ
その「Statcast」のデータだが、『Baseball Savant』というサイト(baseballsavant.mlb.com)で各選手の詳細なデータを条件別にはじき出せる。
例えば、ダルビッシュの回転数(1分当たり)も試合ごとに調べられる。下の表が16年と17年(8月4日まで)の球種別の回転数だが、昨年のリーグ平均(4シーム:2253、2シーム:2159、カッター:2275、スライダー:2264)と比較すると、いずれも高い数値をたたき出していることが分かる。
以下にマーリンズ戦(現地7月26日)と、ドジャースへ移籍したあとのブリュワーズ戦(8月27日)のリリースポイントを紹介する。
「Statacast」で分かるさまざまなこと
データは何を意味するのか?
例えば、リリースポイントからは、こんなことが分かる。
16年8月、ダルビッシュは調子そのものは悪くないのに、「スライダーが曲がらない」という言葉を度々、口にした。
9月に入って、「PITCH f/x」の数値をまとめる『brooksbaseball.net』でスライダーリリースポイントを確認すると、故障前の14年と比較して、0.15フィート(5センチ)ほど高くなり、さらに三塁側に0.41フィート(12センチ)ほどずれていた。
「だから、スライダーが曲がらない」
さらに身振り手振りで、こう説明している。
「この高い位置からカーブを投げる分にはいいんですが、スライダーは確かに曲げにくいんですよ」
そして、三塁側にずれていることも、スライダーが曲がらないことと無関係ではなかった。
「インステップになっているんでしょう。インステップでスライダーを投げようとすると、(体の回転が)窮屈になるんです」
リリースポイントを修正して臨んだ16年9月9日のエンゼルス戦は、7回途中まで3安打1失点と好投。ダルビッシュは、本来のスライダーの切れを取り戻していた。
もちろん、この限りではないので、次回以降で改めてリリースポイントについては触れる。