ソフトB世代交代の象徴・上林誠知 川崎と内川が認めた「モンスター」

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4年目の今季は2ケタ本塁打2ケタ盗塁をクリアするなど、レギュラーをつかんだ上林 【写真:BBM】

 内川聖一に続き、V決定後の9月20日に柳田悠岐も故障離脱。翌21日の北海道日本ハム戦でセンターの代役に指名されたのはこの男だった。期待に応えるように大谷翔平から本塁打を放った上林誠知が、CSファイナルステージでもカギを握る存在になる。

GWには「2日で10打点」の大暴れ

 福岡ソフトバンクの世代交代の象徴だった。上林が苦しみながらも、ライトのレギュラーを守り抜き、独走Vに貢献した。1軍でフルシーズンを戦うのは初めてである4年目の若手。終盤は「自分ではとらえたと思ってバットを振っても、思うように出てこない。ファウルで逃げようとしても空振りになってしまう」と、疲れから思いどおりに動かない体に悩みながらも、何とか結果を出し続けた。

「ゴールデンウイークのころが一番、打撃が良かったですね」

 4月29日から5月7日のゴールデンウイークは8試合で30打数12安打、打率4割、4本塁打、11打点と大暴れ。5月2日の埼玉西武戦では2本塁打を含む猛打賞で5打点、翌3日の西武戦でも満塁本塁打を含む2安打5打点。2日で10打点の8番打者に川崎宗則が、「ホークスはすごいモンスターを生み出しましたね」と驚いた。そのまま「モンスター」の異名がつけられた。

 侍ジャパンの稲葉篤紀監督のような構えから広角に安打を放つ。中距離打者だが、ツボにはまった打球は楽々とスタンドへ。昨年もレギュラー定着を期待されたが、キャンプから打撃フォームを崩し、14試合でわずか4安打に終わった。

「昨年の悔しさがあるから、今年がある」

 オフには知人を通して小さいころから憧れるメジャーリーガーのイチロー(マーリンズ)と練習する機会を得た。「ふくらはぎの筋肉がホントにすごかったんです」と、強烈な刺激を受けた。内川聖一との自主トレでは、1歳上で昨年ブレークした広島・鈴木誠也からも多くを学んだ。引きつけて後ろの軸足で回転する打撃を参考にすると、引っ張る打球の飛距離が大幅に伸びた。昨秋78キロだった体重を10キロ増の88キロまでにしてキャンプイン。連日、日が暮れるまでロングティーで遠くに白球を飛ばし続けた。

 外野の守りも成長した。オープン戦ではライナーの目測を誤りバンザイした守備も、村松有人外野守備走塁コーチの連日のノックで上達。シュート回転して正確性を欠くクセのある送球も矯正し、捕手のミットへストライク返球。パ・リーグでトップとなる10補殺(9月27日現在)をマークするまでになった。当初は試合終盤に守備固めを送っていた工藤公康監督も、「人間って1シーズンで変わるんだね。上林君は守りでも貢献してくれる」と驚くほどだ。

 ケガにも負けなかった。7月8日の日本ハム戦の7回、送りバントを試みた際に内角に食い込んで来た球を避けきれず、左手薬指をバットとボールで挟まれる形になった。「骨が折れたかと思いましたよ。今でもまだ完全には曲がり切らない」。しばらくはインパクト時に響き、痛みも大きかったが、ようやくつかんだレギュラーを手放すわけにはいかなかった。

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