F1参戦決定のガスリーや山下ら、スーパーフォーミュラで活躍する新人たち

吉田知弘

トップを0.5ポイント差で追うガスリーはマレーシアGPでF1デビューが決まった 【写真:吉田成信】

 白熱した戦いが繰り広げられている全日本スーパーフォーミュラ選手権。2017シーズンは早くも最終戦の鈴鹿(10月21、22日)を残すのみとなった。

 26日にF1デビューが正式決定したピエール・ガスリー(TEAM MUGEN)をはじめ、今年は5人のルーキードライバーが参戦。このカテゴリーは参戦経験の豊富なドライバーが多く、マシンやコースを熟知し切った強者たちが、0.001秒単位でのシビアな争いをすることで有名だ。それゆえ、経験が少ないルーキードライバーにとっては、なかなか結果が出ない1年目を過ごすことが多かった。

 しかし、今年は6大会7レースを終え、ルーキー勢の活躍が目覚ましく、ほぼ毎戦のように誰かが表彰台に上がり、予選ポールポジション(PP)も勝ち取っている。最終戦の鈴鹿でも、上位を脅かす存在になることは間違いなさそうだ。今回は、そんなルーキードライバー5人を紹介していく。

F1参戦が決定したガスリー

 まずは、開幕前から注目を集めていたガスリー。シーズン前のテストでは軒並み好タイムを記録し、開幕戦から優勝候補と注目を集めていたが、ミスやトラブルが重なり入賞ならず。出だしは苦戦を強いられる展開になった。

 しかし、第2戦岡山のRace2で初入賞を果たすと、そこから徐々に順位を上げていき、第4戦もてぎでは待望の初優勝。続く第5戦オートポリスでも連勝を飾り、一気に年間ランキング2位に浮上した。同時にシーズン途中からF1にステップアップするのでは? という話題も出て、国内のみならず海外からも注目を集め始めた。

 9月23、24日に行われた第6戦SUGOでは、シリーズ屈指の難コースと言われるスポーツランドSUGOを初めて走ったにも関わらず予選3番手に食い込むと、決勝でも安定した走りで2位表彰台を獲得。ランキングトップの石浦宏明(P.MU/CERUMO・INGING)に0.5ポイント差に迫っている。

「正直、こうしてチャンピオン争いができる位置につけられるのは予想外だったよ。シーズン序盤はタイヤに慣れていない部分もあったり、開幕戦ではトラブルもあったりと苦戦したけど、チームと一緒にいろいろと改善して一生懸命やってきた」とガスリーは語る。

「開幕戦から比べるとクルマのパフォーマンスはかなり良くなったし、タイヤに関しても理解度が深まった。間違いなくシーズン序盤より力強い走りができると思うよ。もちろん、これからやらなければいけないこともたくさんあるけど、エキサイティングなレースウィークになると信じているよ。いつも通り全開でいくだけだよ」とチャンピオン決定が懸かる最終戦を楽しみにしていた。

 そんなガスリーだが、今週末に行われるF1マレーシアGPにトロ・ロッソから参戦することが発表された。2週間ほど前からうわさに上がっていたが、それが実現する形となった。気になるのは、その都合で最終戦の鈴鹿は欠場ではないかという話も聞こえているが、今のところ日程が重複するアメリカGPに関しては、スーパーフォーミュラ参戦を優先させる模様。本人も鈴鹿に参戦するつもりで準備を進めており、来季からのF1フル参戦を確実なものにするためにも、スーパーフォーミュラでのシリーズチャンピオン獲得に大きな期待がかかる。

対応力に定評があるローゼンクヴィスト

 ただ、今シーズン目覚ましい活躍をしているのはガスリーだけではない。彼と同じく最終戦でチャンピオン獲得の可能性を残しているフェリックス・ローゼンクヴィスト(SUNOCO TEAM LEMANS)の走りからも目が離せない。

 かつてF1の登竜門と言われた伝統レース「マカオF3グランプリ」で2連勝を飾ったほか、今年はフォーミュラEでも大活躍している実力派ドライバーだ。シーズン前はフォーミュラEのスケジュールの影響で、テストを欠席することもあり、開幕戦は苦戦したが、第2戦以降は毎レースでポイントを獲得。第3戦からは3戦連続で表彰台に立った。決勝レースでクレバーな走りを見せるのが特徴で、第6戦SUGOでは、ピットストップを行わず、タイヤ無交換・無給油作戦を完璧に遂行。トップから5ポイント差のランキング3位につけている。

 シーズン中からランキング上位につけていたものの「チャンピオンに関してはそこまで意識していない。目の前の課題をこなしていくだけ」とコメントしていたローゼンクヴィストだが、王座が懸かる最終決戦は楽しみにしている様子。「この時点で、チャンピオン争いに残れたのは本当にうれしいね。でも、まだ少しだけ改善しなきゃいけない部分はあるよ。全体的に純粋なペースが十分とは言えない状況。最終戦ではそこを補わないといけないね。最後までベストを尽くして一生懸命頑張るよ」と笑顔で語っていた。

 リザルトだけ見ればガスリーに劣る部分があるが、レース中の戦略への対応や走りの“引き出し”という部分ではローゼンクヴィストの方が多く持ち合わせている印象がある。これに彼自身が一番の課題と言っている“予選での速さ”が加われば、逆転チャンピオンも十分ありえそうだ。

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著者プロフィール

1984年生まれ。幼少の頃から父の影響でF1に興味を持ち、モータースポーツの魅力を1人でも多くの人に伝えるべく、大学卒業後から本格的に取材・執筆を開始。現在では国内のSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に年間20戦以上を現地で取材し、主にWebメディアにニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載。日本モータースポーツ記者会会員

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