貫禄Vのタカマツ、成長した「見る力」 伝説的プレーヤーたちの背中を追いかけて

平野貴也

レベルアップを呼んだ「見る力」

レベルアップを実感する2人。得意のパターン以外でも、自信をつけている 【平野貴也】

 伝説を追うことで、より高い次元のモチベーションを生みだした2人は、レベルアップに余念がない。
 高橋が特に成長を感じているのは、相手の動きを見ることだ。

「(決勝の相手ペアのうち経験豊富な)キム・ハナ選手は、ミックスダブルスもしている選手なので(男子の強打にも慣れているため)スマッシュも打ち分けないといけなかったけど、今日は相手のレシーブの位置がよく見えた。立ち位置を見てから打つことが最近はできている」

 普段は瞬発力のある松友が前衛に入ってチャンスを作り、後衛の高橋が強打を打ち込むのが必勝パターンだが、決勝では球の強さに頼らず、相手の反応が遅れる場所、危険な返球をできない場所を見極めた配球で、相手を追い込んでいった。ほかにも、松友がサーブを打つ際に後方で構えているタイミングや、後衛で相手の強打をレシーブするときにも、相手の表情を見て、精神的に相手が引いているか、強気なのかを見ていたという。

 松友も、相手を見た中でのラリーの組み立てに手応えを得ている。
「自分と相手との間合いとか、相手同士の距離を寄せてスペースを作ることとかが、前よりも(どうすれば上手くいくか)明確になってきている」

 リオ五輪後、本来とは逆に高橋が前、松友が後ろになった場面でも「焦らずに、ゆっくりと自分たちの形に戻れるようになっている。以前なら早く得意な形にしないといけないと思って焦っていた」(高橋)。相手を見て判断する能力の向上が、2人をさらに強くしている。

「金メダルじゃないとダメなんだ」

世界選手権は銅メダル。さらなる高みを目指して、2人は成長し続ける 【平野貴也】

 飽くなきプレーの追求で、すでに引退した偉大な中国ペアの影を追いかける。そして、その先に、難度の高い結果も求めていく。高橋は、世界選手権の銅メダルについて、こんなことを言っていた。

「やっと世界選手権で取れたメダルだったから、金じゃなかったけど、すごくうれしかった。2人で『やっと取れたね。一つずつ行こう』と言っていた。でも帰国すると(チームの)スタッフとかには『おめでとうと言いたいけど、何と声を掛けていいか分からない』と言われた。五輪の金メダリストとしては満足できないだろう結果に対して『おめでとう』ではないよねという感じで。じゃあ、自分たちは、どの結果だったら『おめでとう』って言ってもらえるのかなと思った(笑)。でも、それで、やっぱり金メダルを取ったら、金じゃないとダメなんだ、じゃあ、また頑張ろうと思った」

 世界一の後に、また世界一を目指すのは、心理的にタフだ。しかし、プレーを続ける以上、ほかの目標は存在しない。周囲からは、2020年東京五輪での連覇も期待される。困難な道のりを進む2人は今、かつて最強とうたわれたレジェンドの領域に踏み込もうとしている。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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