“世界一の連係”が導いた劇的勝利 タカマツペア、バド史上初の金メダル
タカマツペアが、日本バドミントン界悲願の金メダルをもたらした 【写真:Enrico Calderoni/アフロスポーツ】
「世界1位の実力はないと思うけど、コンビネーションは世界一だと思っている。それだけは負けたくない」
高橋礼華は、そう言った。苦しくなっても壊れない、2人で1つの強固な力が劇的な逆転勝利を手繰り寄せた。
土壇場で生かされた経験
実力では優位と見られていた決勝戦だが、追われる立場の難しさに立たされた。流れが良くなったところで、ネットインショットを決められてしまうなど運も相手に味方した。大方の予想に反して第1ゲームを奪われ、ファイナルゲームもリードを許す時間が続いた。終盤は、16−16から3連続失点を喫して後がなくなった。
しかし、過去の経験が力に変わった。2014年に初めて世界ランク1位になったが、以降も世界選手権では16強止まり。勝たなければいけないプレッシャーにのまれ、自分たちらしさを見失っていた。だからこそ、今度は土壇場で戦えた。高橋は「あっちに流れが来ていると思ってしまったけど、やっぱり負けたくないという気持ちが強かったので、何をしてでも拾って打ってやろうと思っていた」と言い、松友も「正直、もう負けたかなと思ったけど、1球でも多く相手に『おおっ』と思わせてやろうと思ってやっていた」と負けん気の強さを見せた。
自分たちらしいプレーで引き寄せた勝利
高校時代から長年磨き続けた連係を武器に勝ち上がった 【写真:ロイター/アフロ】
しかし、高橋と松友には、聖ウルスラ学院英智高校時代で初めてペアを組んでから10年続けて築いた信頼関係がある。高橋は、大会前に「シングルスからダブルスに変えて良かった。違う物を持っている2人だから、一緒にできたときに、すごいことが起こるんじゃないかと思っている。私はシングルスをやっていて、自分がパワーのある方だと思っていなかったけど(パワーがあるタイプではない)松友と組んだことで引き出された。松友は私が打つ球を見て、それならこう(展開)すれば良いというプレーに気付いてくれた。同じタイプじゃない2人が組んだから(互いの長所に)気付けた」と話していた。
それぞれの特徴をよく知り、互いの長所を使い合って、2人で1つになる。いま、自分の武器を使うのか、パートナーの武器を使うのか。使うために、自分は何をするのか。10年間で醸成された絶妙の調整加減が、土壇場で輝いた。16−19から4連続得点で20−19。ラリーから高橋がスマッシュを打ち込み、相手がレシーブしたシャトルがネットに捕まった瞬間、金メダルが決まった。5連続得点の大逆転で、松友は「金メダルが、というより、あの場面で自分たちのプレーをできたことがうれしい」と言葉に実感を込めた。