高、大、社会人ルーキーへの接し方 吉井コーチの指導スタイル(5)

菊地慶剛

シーズンを通したコンディショニングを重視

ドラフト1位ルーキー堀は8月9日の楽天戦でプロ初登板。1回を3者凡退に抑えて上々のデビュー戦を果たした 【写真は共同】

 また高卒選手に限らず、すべての新人選手に対し吉井コーチが意識しているのがシーズンを通した選手のコンディショニングだ。どのレベルの選手にとっても約6カ月のシーズンを過ごすのは初めての経験。どんな即戦力選手でも体調を含め状態を維持するのは簡単なことではない。

「そこはしっかり見ていますね。(コンディショニングの)アドバイスもしますし、起用法も気をつけてやっています。6カ月しっかりコンディションを整えて、好不調の波を小さくするというのは、社会人、大学も大会があるので、どうしてもピーキングのやり方が違うと思うんですよね。プロ野球はずっとなので、それが一番難しいんですよね」

 今シーズンのように新人選手が入れ替わりで1軍に昇格する中、彼らの起用法についてどのように留意しているのだろうか。

「まずは故障させないことが一番優先するところですね。あとは人によって考え方が違ってくると思うんですけど、僕は1軍ならどんな場面で投げても経験になるとは思わないんです。やっぱりある程度プレッシャーのかかった場面ではないと、成長しないと思ってます。

 なので起用する場面ですよね。そういった意味では今回の堀なんかは初登板が2点ビハインドだったかな。しかも6番から当たる打順(聖澤諒 、阿部俊人、嶋基宏)で監督は使ってくれたので、彼にとってすごい経験になってくれたと思うし、良かったと思います」
 また吉井コーチは堀の先発起用についても説明してくれた。

「それは選手の可能性の部分です。社会人、大学のようにある程度出来上がった投手ならどんなタイプかは大体把握できますが、高卒選手はやってみないと(先発、中継ぎの)どっちが合っているか分からないので……。見た感じは真っ直ぐに特徴があって三振が取れるのでリリーフで活躍しそうに見えますが、長いイニングを投げさせたら分からないので、1回やらせてみようということになりました。それにゲームの流れを感じながら長いイニングを投げることも、すごく勉強になるので(先発を)やった方がいいと思います」

 これまで紹介してきたように、吉井コーチの指導法は選手自らが課題を掲げ、その解決方法を探し出しながら克服していく自主性、積極性を重要視している。その根底にあるのは少しでも長くプロで活躍できるように投手として独り立ちさせることだ。だからこそ新人選手に対する指導法も同じアプローチを貫いている。

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著者プロフィール

栃木県出身。某業界紙記者を経て1993年に米国へ移りフリーライター活動を開始。95年に野茂英雄氏がドジャース入りをしたことを契機に本格的にスポーツライターの道を歩む。これまでスポーツ紙や通信社の通信員を務め、MLBをはじめNFL、NBA、NHL、MLS、PGA、ウィンタースポーツ等様々な競技を取材する。フルマラソン完走3回の経験を持ち、時折アスリートの自主トレに参加しトレーニングに励む。モットーは「歌って走れるスポーツライター」。Twitter(http://twitter.com/joshkikuchi)も随時更新中。

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