高、大、社会人ルーキーへの接し方 吉井コーチの指導スタイル(5)
1年間は各投手のスタイルでプレーさせる
2017年のルーキー選手。高卒の堀(前列左から2人目)、大卒の高良(前列左端)、社会人から入団した玉井(後列左端)ら異なる経歴の投手の育成方法の違いとは? 【写真は共同】
投手陣では昨年のドラフト1位指名の上原健太投手が先発に回りプロ初勝利を飾っているし、今年ドラフト1位指名された高卒ルーキーの堀瑞輝投手が1軍昇格しデビューした。
もちろん日本ハムに限らず、どのチームにとっても若手選手の育成と台頭が求められているが、吉井理人投手コーチは新人投手の扱い方についてどのように考えているのだろうか。
それはどのレベル(高卒、大卒、社会人すべて)の選手に対してもですけど、ただ明らかにこのクセを直しておかないと将来やばいことになるぞというのが分かった時は、球団の上層部と話し合った上で、(手を加えることを)実行しましょうかということになるとは思います。基本的にはコーチの現場判断だけでフォームに関しては手を出すことはないですね」
これまで吉井コーチは2015年の福岡ソフトバンク以外、ずっと日本ハムでコーチを務めてきた。なかなか比較対象は難しいところだが、新人選手の扱い方に関しては他チームも同じようなやり方ではないかということだ。その中でも吉井コーチなりに新人選手に対し気を遣っている部分はあるのだろうか。
「1軍にいると、なかなか(新人選手の育成に)出くわさないですし、1軍に来るルーキーは即戦力が多いので、他の投手とほとんど同じようにやらせています。配球の考え方などは指導することもありますが、フォームに関しては1軍にいると(指導することが)ないですよね。それに1軍は毎日勝負がかかっているので、(基本的な部分を)指導する時間もないです。
ただ10年に2軍のコーチをやっていた時は何人かルーキー投手がいて、その時は高卒、大卒、社会人で(指導法を)使い分けていました」
自分の投球を取り戻させることが第一
「具体的に言うと、大卒、社会人上がりはほとんど何も手をつけずに、練習方法やシーズンのスタイルが(これまでとは)違うので、そういうところを重点にして調整方法やコンディショニングを指導していました。
高卒ルーキーに関しても基本的にはフォームをいじらないようにしています。ただ最近もそうなのかは明確ではないですが、自分も経験したことですけれども、高校のシーズンが終わってプロに入ってくるまで、自分ではしているつもりでもしっかり練習ができてないんです。そういう中途半端な練習だと投げる感覚がちょっと悪くなってしまうんです。その感覚を取り戻すのに、遅い選手だと1年半くらいかかってしまって。その遅い選手って僕の話なんですけど(笑)……。
なので最低でも3カ月くらいかかるのかなと思っていて、それ(投げる感覚)を取り戻すための練習方法というか、とにかく質と量、頻度を調整しながら、たくさん投げさせるようにしていました。まずは高校時代の絶好調の感覚に戻してやることが、一番大事なことなのかなと思っています。
高卒ルーキーの場合はやはり体力がないので、体力面をアップさせながら投げさせていきます。試合に関しては見学ですよね。見て覚える感じで、実戦はそれ以降ですね。感覚を戻す、体力アップ、戦術・戦略──を同時進行で行いながら、まず(各投手の)優先順位がどこなのかですよね。
自分もプロに入ってすぐフォームを直されたりして、まだ自分の感覚が戻っていないのにフォームを変えてもうまく行かないし、何で変えるのかも理解できないのでグシャグシャになった覚えがあるんですよね」
自身も簑島高からプロ入りした経歴を持つことから、まだ野球選手として経験が浅い高卒選手に関しては、まず本当の意味でのスタート地点に立たせるため、プロから評価を受けていた自分の投球を取り戻させることを第一に考えているのだ。