里崎氏が見る“捕手”中村奨成の将来性 「肩の強さは目を見張る」

週刊ベースボールONLINE

肩の強さをはじめとする身体能力の高さには光るものがあると里崎氏は評価する 【写真:BBM】

 この夏の甲子園を沸かせた広陵高の中村奨成。打っては大会新記録の6本塁打、守っては捕手として強肩ぶりを披露した。ここでは中村のプロでの可能性について、第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でベストナインに輝いた元千葉ロッテの捕手・里崎智也氏に主に捕手目線からチェックしてもらった。

「基本はしっかりしている」

 中村奨成選手は、捕手としても高校生の中でトップクラスの存在だと思います。「捕って、止めて、投げる」という捕手として普通にやるべきことがしっかりとできています。夏の甲子園でも、守備面で何かびっくりするようなことをしたわけではありませんが、基本はしっかりしていると感じました。特に捕手として将来への大きな期待感を抱かせるのは、身体能力の部分です。体のサイズもありますし(181センチ78キロ)、何より肩の強さには目を見張るものがあります。

 同時に“運”も持っていました。広陵高という強いチームに所属し、甲子園で勝ち上がっていき、その中で持てる力を発揮して活躍することができた。それをスター性と言っていいのかは分かりませんが、注目を集めたことでドラフトの順位も上がることになるでしょう。

 そうした意味ではプロ入りするにあたって、どのチームに行くことになるのか、というのも重要な要素になります。強いチームなのか、弱いチームなのか、チャンスは多いのか少ないのか、我慢して起用してくれるのか。言うまでもなく高卒の捕手はどれだけ素材がいいといっても、プロに入ってからいかに磨かれていくかが重要になります。

 2000年以降にプロで活躍した捕手の中で、本当の意味で強肩強打の高卒捕手と言えるのは谷繁元信さんと城島健司くらいですが、当時の大洋やダイエーは決して常勝チームというわけではなく、多くのチャンスが与えられる環境がありました。

高卒捕手が直面するカベとは?

 中村選手に限りませんが、1年目の高卒捕手には多くのクリアすべき課題が生じます。それまでは1〜3人くらいのチームの主戦投手とやり取りをすれば良かったのが、一気に数十人の投手とコミュニケーションを取りながら、特徴を把握していかなければなりません。その中には一回りも二回りも年齢が上の投手も含まれますし、覚えなければならないサインの量も膨大になります。精神的な疲労も高校時代とは比べものにならないはずです。

 体力面は言うまでもありません。半年にわたって毎日のように試合がある中で、日々の練習もしっかりこなしていかなければ成長は見込めません。中村選手に関して言えば、素晴らしい肩を持っていますが、1シーズンにわたって最後まで全力で投げ切ることができるか、という点にも注目したいと思います。

 また、これは捕手に限ったことではありませんが、高校生の“強打”というのは金属バットでのものです。現在のレギュラークラスでは炭谷銀仁?(埼玉西武)や田村龍弘(ロッテ)は高卒捕手ですが、強打で鳴らしていた高校時代とは打撃スタイルが変化しています。木製バットでどんな打撃ができるのか、ということがスタートラインであり、クリアすべき最初の課題になります。

 中村選手には、そうした山を一つひとつ乗り越えていくことが求められていきます。ただ、その先に真の強肩強打の捕手になり得る素材であることは間違いありません。繰り返しになりますが、そうした期待感を抱かせる選手です。
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