2000安打達成の鳥谷敬の価値とは!? 安打数だけではない重要な記録に注目

山田隆道

常に高いハードルを求められた14年間

2000本目はセカンドの頭上を越える二塁打。鳥谷らしい鮮やかなライナー性の打球だった 【写真は共同】

 思えば鳥谷は田淵や掛布のように傑出した打撃成績で一時代を築く、そういう派手なタイプの選手ではなかった。また、早稲田大から鳴り物入りで阪神に入団した当初は、当時の岡田彰布監督の将来的な方針によって正ショートの藤本敦士をセカンドにコンバートしてまでショートとしての英才教育を受けることになり、一部で賛否を呼んだ。

 そういう経緯もあってか、鳥谷は常に高いハードルを求められ、だからこそ厳しい意見がつきまとうことも多かった。2009年に20本塁打を放っても打率が2割8分8厘にとどまったため満足されず、翌年に打率3割1厘を残しても今度は本塁打が19本だったから満足されず、そのまた翌年に2年連続3割を打っても、14年には3割1分3厘という高打率を記録しても、その?ずっとずっとショートとして高い守備力を維持していても、なぜか「鳥谷はなんとなく物足りない」という印象を抱くファンも少なくなかった。

 しかし、その一方で10年に叩きだした年間104打点はショートとしての史上最高記録であり、11年に獲得したセ・リーグ最高出塁率のタイトルや11〜13年の3年連続セ・リーグ最多四球など、鳥谷がいかに優れた選手であったかを示す記録も多数ある。そして、なんと言っても鳥谷の代名詞である連続試合出場記録。彼は阪神の歴代のスター選手が持ち合わせていなかった長期間に及ぶ安定的な心身の強さと、どんな肉体状況でも最低限の仕事をきっちりこなすプロフェッショナルとしての地力があった。

 果たして、その結果が今回の見事な金字塔である。鳥谷はその通算安打の大半を内野の要であるショートを守りながら放ち、昨季の大不振や今季の顔面死球(鼻骨骨折)などの苦境を乗り越えて、プロ14年目という驚異的なスピードで大台に到達した。

 鳥谷の最大の売りである安定感と継続力、心身の強さ。それらひとつひとつは少し地味かもしれないが、その集大成が2000安打という田淵や掛布でもつかめなかった華やかな勲章なのだから、彼の偉業はつくづく味わい深い。

ぜひ達成してほしい1000四球

 さあ、こうなったら鳥谷にはもうひとつ達成してもらいたい大記録がある。それは残り10に迫った通算1000四球。プロ野球史上、これまでに1000四球を記録したのは2000安打よりも1000打点よりも300本塁打よりもはるかに少ない、わずか14人だけ(日米通算はのぞく)。その15人目に鳥谷の名前が晴れて刻まれた暁には、彼のセールスポイントである選球眼の良さ(出塁率の高さ)も、より華やかに評価されることだろう。

 現在、鳥谷は36歳。今季がサードとしては1年目。昨季の大不振により、長く守り通してきたショートからコンバートされた男は、持ち前の高い適応能力と不屈の精神力を武器に華麗な復活を遂げ、今季は3年ぶりの打率3割も射程圏内に入っている。

 そんな鳥谷の復活ストーリーにおいて、通算2000安打、1000四球、打率3割は極めて重要かつ華やかなアイコンだ。ここは貪欲に、すべてを達成してもらいたい。

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著者プロフィール

作家。1976年大阪生まれ。早稲田大学卒業。「虎がにじんだ夕暮れ」「神童チェリー」などの小説を発表するほか、大の野球ファン(特に阪神)が高じて「阪神タイガース暗黒のダメ虎史」「プロ野球むしかえしニュース」などの野球関連本も多数上梓。現在、文学金魚で長編小説「家を看取る日」、日刊ゲンダイで野球コラム「対岸のヤジ」、東京スポーツ新聞で「悪魔の添削」を連載中。京都造形芸術大学文芸表現学科、東京Kip学伸(現代文・小論文クラス)で教鞭も執っている。

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