バンニーキルクら輩出で飛躍の時代 南アフリカ陸連が行う選手強化とは?

K Ken 中村

限られた資金内で目標に合わせた支援を行う

7月の世界ユースでは男子100m、200mで南アフリカ勢が1位、2位を取るなど、若い世代も伸びてきている 【Getty Images】

 陸連に登録した段階で、若い選手はその成長を陸連が見守り、そして導く対象となる。バンニーキルクも例外ではなかった。

「選手にとって五輪が究極の目標となります。すべてのユース、ジュニアの選手も五輪を目標として、その成長を支援していくことになります。目標はメダル獲得。すべての年代別選手権でのメダルです。そのためには、選手だけでなく、コーチへの支援も重要です。そしてエージェントにもその究極の目標が一番大事だということに理解を求めることが重要になってきます」とセレ氏は言う。 

 南アフリカ陸連は、例えばトップ10の選手に必要な支援と、トップ50の選手に必要な支援は異なることを理解し、それぞれの選手に必要な支援を、きめ細やかに行っているようだ。「ほかの国の陸連に比べ、わが国の陸連はそんなに資金が豊富な訳ではありません」と話すとおり、南アフリカ陸連では現実を踏まえ、その資金に対し賢明な使い方を心がけている。

ハイパフォーマンスセンターが強化の拠点に

ロンドン世界選手権では、男子走り幅跳びでは金メダル、銅メダルを獲得。2020年東京五輪でも南アフリカ選手のメダル獲得がさらに増えるか 【Getty Images】

 強化のなかには、中・長距離の選手をケニアなどに派遣し、世界のトップ選手と練習させることも行っている。また外国からトップクラスのコーチを招待し、教えを請うことも始めている。

 そのため、重要なのがハイパフォーマンスセンターの存在である。

「私の記憶が正しければ、南アフリカには3カ所のハイパフォーマンスセンターがあります。センターにはケニア、ルーマニアをはじめとする諸外国からの選手が練習のために長期間訪れます。世界レベルの施設があり、トップレベルのクラスで指導するコーチもいます」

 このセンターが南アフリカの選手とコーチに与える影響は計り知れず、諸外国との交流が強化に貢献しているのだ。

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著者プロフィール

三重県生まれ。カリフォルニア大学大学院物理学部博士課程修了。ATFS(世界陸上競技統計者協会)会員。IAAF(国際陸上競技連盟)出版物、Osaka2007、「陸上競技マガジン」「月刊陸上競技」などの媒体において日英両語で精力的な執筆活動の傍ら「Track and Field News」「Athletics International」「Running Stats」など欧米雑誌の通信員も務める。06年世界クロカン福岡大会報道部を経て、07年大阪世界陸上プレス・チーフ代理を務める。15回の世界陸上、8回の欧州選手権などメジャー大会に神出鬼没。

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