ロッテ・大谷は思いを秘めて黙々と 役割に徹する男の底力
指揮官への恩返しを胸に
伊東監督の助言で結果を残すことができた大谷。監督の退任については「いろいろな思いがあります」と胸中を明かす 【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】
転機となったのが、13年の秋季キャンプだ。伊東勤監督が自らミットを手にして、ブルペンで投球を受けてくれた。その数は150球を越えた。
始めは球が上ずったが、アドバイスをもらいながら投げているうちに、だんだん球が低めに集まるようになった。
「アピールしたいという気持ちを感じて、監督が受けてくれた。そのなかで『こういう感じで投げれば低めに球がいくんだ』という感覚を思い出させてもらいました」
14年の春季キャンプでは、その感覚を体に染みこませた。
伊東監督からは「マウンドで弱々しく見える」という指摘もあった。結果を気にしすぎて、腕が縮こまっている。そこを直せば変われる。そう考えた大谷はマウンドで自信を持って振る舞うようになり、しっかりと腕が振れるようになった。
14年のシーズンは49試合に登板(うち48試合がリリーフ)。2勝2敗、防御率1.94の好成績を残し、中継ぎとしての信頼を勝ち取った。
「伊東監督に使ってもらって、結果を残すことができた。再生させてもらったという気持ちは強いですね。感謝しています」
8月13日、伊東監督が今季限りで退任することを表明した。
大谷は「もちろん、いろいろな思いがあります」と胸中を明かす。今季の残り30試合は、その思いを内に秘めて投げる。
「心のなかにある気持ちを、表に出さないようにしています。表に出すと、自分が崩れてしまいそうで、怖いので。これまでと変わらずに、あまり欲を出さず、毎日自分の役割をまっとうして、結果を残して、チームを勝利に導くことが一つでも多くあればいいですね」
今日も登板に向け、地道に準備する。そして、チームのために黙々と投げる。大谷は主役ではない。しかし、ロッテに必要不可欠な名脇役である。