山崎晃大朗が悟ったプロで生きる道 〜燕軍戦記2017〜

菊田康彦

腹をくくった2軍再降格

松元2軍コーチから「生き残る術」を伝授された山崎 【写真は共同】

 今年はファームでスタートしてから9試合連続安打をマークし、この間に二塁打1本、三塁打2本。3月30日の千葉ロッテ戦ではドラフト1位ルーキーの佐々木千隼から、先頭打者ホームランも打った。ボールを思い切り引っぱたいて長打も打ちたい──そんな欲をなかなか捨てきれなかった。腹をくくったのは、わずか5試合の出場で2軍に逆戻りとなってからのことだ。

「自分自身へのあきらめじゃないですけど、やっと『自分が長打を打っても……』ってなったんで。この先(プロとして)生きていくためには、どこかで折れないと」

 そんな山崎の変化に、自身も2015年の現役引退まで背番号31を着けていた松元コーチも目を細めた。

「1軍から落ちてきた時はまだ強い打球を打ちたいっていう気持ちがあったけど、それで結果が出なかったのが良かったと思います。やっと自分の生きる道を理解して、それで結果も出てるし、アイツの場合は足を生かさなかったら意味がないじゃないですか。ホームランはほかのバッターに任せておけばいいですから」

 ファームでも一時、2割3分台まで落ち込んだ打率は、7月に入って2割8分台まで上昇。この月は14試合の出場で長打は二塁打1本ながら、17本の単打で打率3割3分3厘と打ちまくり、7月25日に待望の1軍再昇格を告げられた。その日の中日戦に「2番・センター」でスタメン出場するといきなり2安打を放ち、翌日も内野安打を含む2本のヒット。ファームで徹底して取り組んだ逆方向への安打だけでなく、インコースに甘いボールが来れば痛烈に引っ張り、8月2日の巨人戦では三塁打を含む初の猛打賞を記録した。

心強い“師匠”の存在

 ところが、1軍はそんなに甘くはない。相手投手の左右にかかわらず連日スタメンで起用されながら、8月4日の阪神戦からの9試合で、ヒットは2本の内野安打のみ。遠征から戻った15日には、思いあまって“師匠”に救いを求めた。

「自分から松元コーチに連絡したんですけど、『また、ちょっと大きく振り始めてるぞ』って言われました。ファームの頃から悪い時も全部知ってくれているので、自分がどうなったら悪くなるとかもわかってくれてますから」

“師匠”からアドバイスを受けた翌日のゲームは雨天中止となったが、冒頭のとおりその次の日の巨人戦では、カウント0−2と追い込まれながらもそこから粘り、しぶとくショートの横をゴロで抜くタイムリーヒット。その後の打席でも2つの犠打を決めるなど、しっかりと役割を果たした。

 山崎は今シーズン、イースタンではリーグトップの打率2割9分0厘をマークしており、規定打席をクリアすれば首位打者になる可能性がある。24盗塁もリーグ1位で、2年連続の盗塁王もかかっているが、「それは気にしてないです」と意に介さない。

 今、その頭にあるのは「最後まで上(1軍)で試合に出続けて、結果を残すこと」だけ。チームは5位の中日にも大差をつけられて最下位に沈み、ここへ来て真中監督の去就に関する報道も出始めているが、「生き残り」をかけた山崎の戦いはまだまだ終わらない。

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著者プロフィール

静岡県出身。地方公務員、英会話講師などを経てライターに。メジャーリーグに精通し、2004〜08年はスカパー!MLB中継、16〜17年はスポナビライブMLBに出演。30年を超えるスワローズ・ウォッチャーでもある。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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