バスケ女子代表、強さを支える3つの要因 アジア3連覇の先に見据える世界のメダル

小永吉陽子

成功した3番の大型化と若手の躍進

182センチの長岡はスモールフォワードとして躍進。大会平均13.7点と日本の得点リーダーとなった 【小永吉陽子】

 3番(スモールフォワード)の大型化は日本が抱える課題だった。さかのぼれば、萩原美樹子、一乗アキ、加藤貴子のアトランタ五輪世代、永田睦子と矢野良子のアテネ五輪世代以降、世界と張り合える180センチ前後の得点力ある選手は不在だった。11年のアジア選手権、当時高3で182センチの長岡萌映子を抜てきしたのも、将来3番になることを見据えてのことだった。しかしここ数年の長岡は、3番と4番(パワーフォワード)の兼任に迷い、持ち味を出せずにいた。

 その長岡が3番として躍動し、日本の得点リーダーとなった(13.7点、大会5位)。また、長岡と同学年で同じ身長の宮澤夕貴も3番をこなしながら、準決勝では2番をこなす幅広いプレーを見せた。長岡はフィジカルが強くインサイドに切れ込むのが得意。宮澤は昨シーズンに3ポイントシューターとして開眼。ともにスタイルは異なるが、リバウンドに絡む力がある。さらには、長岡と宮澤と同学年である藤岡も加えれば、今年24歳を迎える3選手の台頭により、日本の力は確実に底上げされたといえよう。

 長岡、宮澤、藤岡は昨年のリオ五輪で悔しい思いをした選手たちだ。長岡と宮澤は重要な場面でコートに立てず、藤岡は最終選考でリオ行きから落選している。「この大会で認められたい」と長岡が発した言葉は3人共通の思いで、今大会にかける意気込みは人一倍だった。もっとも、彼女たちはアンダーカテゴリーでの経験が豊富。いずれ日本を背負うべき人材が、そろいもそろって台頭したのだから、大会終盤の勢いはすさまじかった。ポイントガード吉田の後継者と180センチを超える3番の成長は日本の明るい未来だ。

東京五輪へ向けしつこさを追求

 選手の成長でいえば、決勝で7本の3ポイントを決めたヒロイン、水島沙紀がシューターとして台頭したことも見逃せない。キャリア組に目を移せば、重要な場面で体を張った大崎と高田の粘り強さは日本にとって欠かせないものだが、彼女たちに続くインサイド陣の育成は急務となろう。それは今夏に世界でベスト4入りを果たしたU−19世代を含めた強化になる。

 戦術面の課題としては、分析も兼ねているアシスタントコーチの恩塚亨がこのように話す。「ポイントガードだけでなく、2、3番の選手もオンボールスクリーンをうまく使えるように鍛えたい。そうすればシュート率はもっとアップする。日本はその点がまだ甘い」と言うのだから、生命線である3ポイントの確率アップにはさらなる緻密さが求められる。これらをホーバスHCが追求する「速さの中でしつこく」行うのだ。日本はまだまだやらなければならない課題がたくさんある。それでも、アジア3連覇を果たした今回で進むべき方向性は示せたのだから行く道は明るい。さらに突き進んでいくだけだ。

 次なる目標はアジア女王として臨む来年のワールドカップ(W杯)だ。ホーバスHCは言う。

「メダルを狙いたいね。五輪だけでなく、常にメダルを目指したチーム作りをしないとメダルは手に入らないから、僕はいつでも狙うよ」

 来年のW杯は9月。かつてない選手層の中で、ユニホーム争奪戦はもう始まっている。

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著者プロフィール

スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者となる。日本代表・トップリーグ・高校生・中学生などオールジャンルにわたってバスケットボールの現場を駆け回り、取材、執筆、本作りまでを手掛ける。

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