4位も手応え、入江陵介はもう下を向かない 東京五輪へ「着実に1歩は踏み出せた」

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表彰台を逃すも「正直惜しくもない」

東京五輪へ再び歩み出した入江陵介。100メートル背泳ぎは4位に終わったが、再起への手応えを感じていた 【Getty Images】

 ハンガリー・ブダペストで行われている水泳世界選手権(以下、世界水泳)の競泳3日目(現地時間25日)、男子100メートル背泳ぎ決勝に臨んだ入江陵介(イトマン東進)は53秒03の4位でレースを終えた。表彰台まであと0秒44届かなかったが、「メダルは逃しましたが正直惜しくもない」ときっぱり。その引き締まった表情が、再起に懸ける強い覚悟を物語っていた。

「メダルを取れなくて悔しいですけれど、今の状態で(メダル獲得ラインである)52秒5を出せるかと言われたらまだそうではない。3カ月間休んだので世界はそんなに甘く表彰台は上らせてくれないと思う。しっかりとこの経験を踏まえて切り替えていきたいと思います」

 2012年のロンドン五輪で3つのメダル(100メートル背泳ぎ銅、200メートル背泳ぎ銀、400メートルメドレーリレー銀)を獲得するなど、日本の背泳ぎ勢をけん引してきた入江。近年の世界大会では周囲の大きな期待に応えることができず、表彰台に上がることなく終わった昨夏のリオデジャネイロ五輪直後には引退も考えた。

 しかし、3カ月の休養を経て「表彰台の景色が忘れられない」と現役続行を決意。環境をがらりと変えるべく拠点を米国に移した。目標に3年後の東京五輪を掲げ、今季はその土台作りに充てる考えを持っていた。4月の日本選手権直前までは「今年1年間は代表から離れるつもりだった」という。

 結果的には日本選手権で代表入りを決めたが、気持ちがぶれることはなく、「東京を見据えてやるという気持ちで来ている。1年1年結果を残すというよりは、着実にステップアップしていきたい」と狙いは明確だった。

復調の鍵は米国での武者修行

タイムには満足していないが、リオ五輪での決勝タイムを上回り手応えを感じている 【写真は共同】

 前日に行われた予選は全体5位、続く準決勝は全体4位で通過。2レースを終えて入江は「泳ぎの感覚がいい」と手応えを感じていた。準決勝の53秒02は今季自己ベスト。好調の要因を問われると「米国に行って自分の体をよく知るようになったからですかね」と語る。現地では、これまで行っていなかった自炊を行い、体調管理や体のケアなど、ほとんどすべてのことを自分でコントロールしているという。

「日本ではトレーナーさんにお願いしていましたが、今はほとんどのことを自分でやっていて、最後のチェックをしてもらっているぐらい。自分の体の動きは分かっている。(今大会はエネルギー)補給なども入念にやっていて、自分の中でのルーティンをつくってレースに臨むなど、細かく決め込んでやっているのがうまくハマっています」

 そんな中で臨んだ100メートル背泳ぎ決勝。メダルこそ逃したものの「正直ここまでいけるとは思っていなかったので、戻ってきて良かったなと素直に思います。まだ自分の実力も不足していますし、実力を受け止めて、世界を戦う経験値を積みたいなと思います」と決して下は向かない。タイムではリオ五輪決勝での同種目で出した53秒42を上回り、「自己ベストには遠いものの、着実に1歩は踏み出せていると思います」という実感もある。

 入江は今季、「勝負の世界に戻ってきたことに意味がある」とよく語る。東京五輪を見据える入江にとって、今大会での経験は大きな財産となる。続く200メートル背泳ぎ(現地時間28日決勝)でもメダルを期待されるだろうが、結果以上に今の入江のベストパフォーマンスを見せてほしい。

(取材・文:澤田和輝/スポーツナビ)
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