ラマス「日本のスタイルを探し求める」 バスケ男子日本代表・新HC来日記者会見

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ラマスHC「最終目的は19年の世界大会と20年の五輪」

「最終目的は19年の世界大会と20年の五輪」とラマスHC 【(C)JBA】

――日本代表の国際試合などを見て、世界の強豪に勝つために足りないこと、強みをどう考えるか?

ラマスHC 少し前に言った通り、今プランを作って計画を進めているところです。プランは3つに分かれていて、練習を十分にやる、できるだけ合宿をやるということが1つ。日本のバスケのレベルをもっと上げるためです。米国の大学に在籍している選手も可能な限り練習に参加して、日本代表全体のレベルを上げるトレーニングをしたいと思っています。

 2つ目として、なるべく今の日本のFIBAランキングで上の強豪との親善試合をやって、経験を積んでいくことも必要です。今の課題になっている部分と、日本代表の成長につながる部分があると思います。それは17年、18年にやって、最終目的は19年の世界大会と20年の五輪です。その目標を達成するための勝負が17年と18年の2年間になります。

――29日、30日に青山学院記念館でウルグアイとの親善試合が組まれている。ウルグアイの印象と、どういう試合を見せたいかを教えてほしい。

ラマスHC ウルグアイはFIBAランキングで26位のチームです(日本は48位タイ)。南米でも競争力のあるチームです。アジアカップに挑戦するためにも、こういう試合を積んでいかないと、日本代表のレベルは上がりません。

――最終目標は東京五輪だと思うが、(8月8日から開催される)レバノンのアジアカップの位置づけ、具体的な目標は?

ラマスHC アジアカップに関しては、まず相手チームの観察も必要ですし、今の段階では日本代表のレベルをもっと上げることも必要です。できるだけレベルを上げてアジアカップに挑戦し、できるだけいい成績を残していきたいです。

 東京五輪が最終目標と言いましたが、それを1つのモチベーションとしてアジアカップに挑戦していこうと思っています。途中にさまざまな試練は残っていますが、それを乗り越えながら一丸となって、代表のレベルを上げていきたいです。私だけでなく、JBAと歩んでいく道のりだと思っています。

 今いる代表選手たちはもちろん、関わっているすべての人が、日本のために全力を出そうという(姿勢になるための)意識付けもやっていこうと思っています。みんなの思いが1つにならないと、この目標は達成できません。「日本のために俺は練習に集中する」「何があっても代表のために全てを出し尽くす」という思いを持たなければなりません。

 私はここで「優勝します」とか、そのような約束をするつもりはありません。ただこのプロジェクトへ真面目に取り組んで、正しい姿勢でやり続ければ、絶対に成果が生まれます。私の印象として日本人はものすごく頭がよくて、ディシプリン(規律)が身に付いている。私の思いとして、全員が同じ目的に向かって、同じ思いで、日本のバスケットをやっていきながら、誇りに思えるチームを作っていきたい。「これが日本代表だ」というチームを作り上げていきたいと思っています。

東野委員長 これまでの日本のバスケットを考えると、五輪のバスケットは次元が違うという話は何度もしていると思います。それに立ち向かい、前に進まなければいけません。階段を一段ずつ上らなければいけません。そういう中で、アジアカップはもちろん結果も欲しいですが、階段を上がるバスケットをしなければいけないと思っています。

 ルカコーチが「インテシティ」「アグレッシブネス」「ソリッドディフェンス」と言いましたけれど、7月3日から(ラマスコーチはサンロレンソ・デ・アルマグロの指揮が残っていたため)、ファクンド・ミュラーコーチを送ってもらって合宿がスタートしています。見ていると、そのスタンダードを作り上げるために何をしなければいけないかというレベルは、本当に高いものがあると思っています。

 ウルグアイは26位で、スペイン遠征の試合も、われわれが今まで戦ったことのないようなFIBAランクが高いチームと戦います。世界を思い知って、思い知らされてというところから戦いが始まると思っています。お金はかかりますが、会長からも全面サポートをいただいています。

ラマスHC「八村、渡邊が加わることで日本のレベルが上がる」

ラマスHCは八村塁、渡邊雄太ら海外組も積極的に招集していきたい意向を示した 【(C)JBA】

――日本のバスケットのスタイルとはどういうものか? スピードを生かすものなのか? 世界選手権に出るための予選がこの秋から始まるが、短い時間でどれだけのことをやるつもりなのか?

ラマスHC FIBAの国際試合で他国が実践しているバスケットを参考に取り組んでいきますが、日本人独特のスキルや「らしさ」も出しながら、日本のスタイルを出していきたいと思っています。

 私の知る限り、五輪や世界選手権で優勝したチームをコピーして、自分たちのチームに入れていく――。それを代表やクラブレベルでも見てきましたが、私の経験上、それが成功する可能性はかなり低く、独自のスタイルを持ったチームは成功する確率が高い。

 先ほど(記者が)日本のスタイルはスピードを生かすイメージとおっしゃっていましたが、もちろんそれも含めて日本のスタイルです。今練習しているトランジションプレーなど、ディフェンスをして速攻でオフェンスに入るスタイルは、日本人のスピードを生かしながらできますし、(実際に)それを練習でやっています。

 もちろん技術レベルもあって、ターンオーバーを少なくする必要があります。(速く攻めても)ターンオーバーが増えたら意味はありません。スピードは生かすけれど、ミスは少なくするというところも、練習に取り組んでいます。スピードは日本人のスタイルのすべてでなく一部です。

 ディフェンス面もまだ改善の余地があります。世界レベルの代表、クラブチームになれば、NBAレベルや、世界レベルのスター選手がいっぱいいます。その「個」をどうやって(複数で)止めるか。そういうディフェンスのスタイルも考えなければいけないところです。もちろんそれも含めて練習に取り組んでいます。日本のベストのチームを作れるように全力を出しています。そういう目標を持って(今後の戦いに)臨みます。

――東アジア選手権を見ても、リバウンドやスクリーンといったインサイドのフィジカルな部分が日本の弱点だったように思うが、それを改善するアプローチは?

ラマスHC チーム力でカバーしようと思っていますし、今それに取り組んでいるところです。日本代表に今1人でそういう弱点を全てカバーできる選手はいません。チーム力でカバーして、ディフェンスの練習が一番重要だと思っていますので、いい成果を出せるように今頑張っています。

――日本の課題を克服するために、米国の大学でプレーしている八村塁、渡邊雄太にどういう期待をしているか?

ラマスHC 今の段階で日本代表の弱点に関して話はしたくありません。そういうことはいろいろな練習、アプローチで克服しようと思っています。今は何も言えないです。今、日本が持っているもので、それを成長させて強みにしてやっていきたいと思っています。

 米国の大学にいる選手に関しては、今回の合宿には合流できていませんが、先を考えたら、その選手も含めたプロジェクトがあります。彼らが加わることで日本のレベルが上がることは間違いありません。アジアカップに参加できるかは分かりませんが、プロジェクトには彼らも含まれています。

 アジアカップでいい成績が残せたら、チームの自信につながります。それを考えて練習に取り組んでいます。最終目的は東京五輪ですので、そこに出場できるように頑張っていきたいと思っています。20年を目標にして選手はモチベーションを上げて練習に取り組んでいます。母国で開催できる五輪をうれしいと思わない選手はいません。その思いで練習に取り組んでくれれば、絶対に良い成果が残せるはずです。

ラマスHC「U−19日本代表は非常にいい試合をやっていた」

――短期間で結果を出すにはコミュニケーションが重要だが、コート内では森コーチが英語で通訳をするのか?

東野委員長 アルゼンチン生まれで、20年間アルゼンチンに滞在した石橋潤くんという通訳と契約しています。スカイプなどでミーティングはしていたんですけれど、きのう来日したばかりです。オン・ザ・コート、オフ・ザ・コートも含めて、今から練習を積む中で、(役割を)整理しながらやらなければいけないと思っています。

 今ここで私が決めることではないので、徐々にいい形を作ります。もちろんラマスコーチに(スペイン語の優秀な通訳が)必要だと思いますけれど。英語でトレーニングをやる分には、選手たちがすんなり聞いて、質問していたということも含めると、英語もうまく使って、コミュニケーションをしなければいけないと思っています。

ラマスHC 通訳は重要になります。選手、スタッフとコミュニケーションを取るためには、言葉の壁をどうにか乗り越えないといけません。今使えるものはすべて使いたいと思っています。森コーチが通訳できるのであれば、それを使うという形でやっていきます。練習の中でスタイルをつかんでいこうと思っています。

 スタッフの中にも、選手の中にも英語が話せる人はたくさんいます。コート内と試合中のコーチングはおそらく英語、日本語を通じての指導になります。記者会見に関しては、またそのときに「現時点はこういう状況」という説明があると思います。

――U−19日本代表が世界選手権で10位に入ったが、試合は見ているか? チームの印象は?

ラマスHC U−19の試合は全部見て、非常にいい試合をやっていると思いました。イタリア戦(ラウンド16で55−57で敗戦)は運が悪かったとしか言いようがないですね。もし日本が勝っていれば、すごい成果になりましたし、バスケットボール界の歴代の最高位だったはずです。勝てれば素晴らしかったですが、引き続きU−19の選手たちも日本代表の未来を担っていくと思います。できるだけ早く成長してもらいたいと思います。すごくいいプレ−をしていたと思いますし、(U−19の活躍が)うれしかったです。

(取材協力:大島和人)

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