プロ注や元プロ、甲子園のヒーローが躍動 白熱の都市対抗は2回戦へ

楊順行

涌井からサイクル安打の林も活躍

健大高崎高では2年夏から3季連続甲子園出場、2年夏と3年春は8強に進出したしたHonda鈴鹿・柘植。高卒2年目ながら同チームの正捕手として活躍している 【写真は共同】

 プロ注目に話を戻すと、田嶋と同じ高卒3年目なら、昨年の都市対抗で最速154キロを披露したヤマハの鈴木博志が新日鐵住金東海REX(愛知県東海市)に補強されている。JR北海道硬式野球クラブ(北海道札幌市)を初戦で破ったREXの、次の対戦はHonda(埼玉県狭山市)。09年に優勝している強豪だが、本人は「行く気満々です」と調子は上々のようで、登板が見られるかもしれない。

 この鈴木は、磐田東高(静岡)時代は中央では無名だったが、柘植世那(Honda鈴鹿・三重県鈴鹿市)の名前は高校野球ファンなら記憶に新しいだろう。健大高崎高(群馬)時代の14年夏、15年春の甲子園ベスト8入りに貢献した捕手。社会人2年目にしてマスクをかぶり、きらやか銀行(山形県山形市)との初戦では、決勝打を放つ活躍を見せている。

 また、東芝(神奈川県川崎市)は、実力派・日本新薬(京都府京都市)との初戦を制したが、貴重な追加点の口火を切ったのが主将・林裕也だ。3対2の8回、先頭打者の代打としてヒットで出塁し、後続で生還。実はこの林、駒大苫小牧が04〜05年の夏を連覇したときのメンバーだ。05年には主将として横浜戦で涌井秀章(千葉ロッテ)からサイクル安打も記録しているから、高校野球好きのお笑い芸人じゃなくても記憶にあるだろう。

ルーキーながらエース格の吉川

関西大からパナソニックに入社して1年目の吉川。初戦で先発マウンドに上がると、14三振を奪って2失点完投勝利を収めた 【写真は共同】

 さらには、ルーキーにも注目。パナソニック(大阪府門真市)で初戦、三菱自動車岡崎(愛知県岡崎市)に先発して9回14奪三振で2失点完投した吉川峻平は、関西大から入社1年目だ。本格的に投手になったのは関大北陽高(大阪)時代だが、シンカーが冴えていまやチームの柱になっている。

 東京ガス(東京都)の臼井浩は、168キロと小柄ながら、昨年の大学選手権で中央学院大の準優勝に貢献した。147キロの速球とフォークのキレで、東京2次予選では2試合に救援し、とくに明治安田生命戦では、7回から延長18回までの12回で17三振を奪うドクターKぶり。西部ガス(福岡県福岡市)との初戦では2失点と、社会人の洗礼を浴びたが、チームが4強だった昨年以上を目ざすには欠かせない存在だ。

 もう1人面白いのが、西濃運輸(岐阜県大垣市)の初戦突破に見事なクローザー役を務めた嶽野雄貴。新日鐵住金鹿島(茨城県鹿嶋市)に1点リードの8回1死一、二塁のピンチに登板し、得意のシンカーで併殺に打ち取ると、9回もピシャリ。日進高(愛知)時代は夏の大会未勝利で、名古屋学院大でも愛知の下部リーグという雑草育ちが、社会人2年目で球速152キロに達し、東海2次予選では救援で9回3分の1を無失点と、14年の都市対抗覇者・西濃の切り札になっている。

大の大人が凡打にも全力疾走

 かつて甲子園や神宮を沸かせたあの選手がここにいるかと思えば、あそこのルーキーも元プロも輝くのが都市対抗。大の大人が凡打にも全力疾走し、一球一打に抱き合い、涙する姿がそこにはある。だからこそ春夏の甲子園や、プロ野球ならクライマックス・シリーズ並みの面白さなのだが、一般の観客にはいまひとつなじみがないのが寂しいところだ。

 デパートや喫茶店にしかクーラーがなかった古い昭和の時代、球場でプロ野球のナイトゲームを見るのは、庶民のささやかなパスタイムだった。蒸し暑い高校野球の地方大会を見た帰りにでも、涼しい東京ドームにぜひとも足を運んでもらいたいもの。その白熱、野球好きならきっと魅了されるはずです。

SNS企画「#プロ注はここがすごい」

スポーツナビ野球編集編集部twitterでは、これから高校、大学、社会人とアマチュア球界で活躍するプロ注目選手の動画を「#プロ注はここがすごい」で随時掲載。でその選手のすごさはどこにあるのか、野球ライターの西尾典文氏が解説します。

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著者プロフィール

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。高校野球の春夏の甲子園取材は、2019年夏で57回を数える。

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